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19話 ウィクターとミニオン

ちょいと短めです

 魔法演舞マジティアは特殊な技術で作られた仮想空間で行われる競技である。

 一年を通して行われるのは予選だ。

 戦いに勝利すれば選手にはポイントが貯まり、その累計ポイントの高い者が、年度最後に行われる本戦へと進むことができる。


 選手の資格があるのは十三歳を超えている者。勝者の資格があるのは魔法の実力。

 厳正なる試験をパスして出場権を獲得した者は『ウィクター』と呼ばれマジティアへの出場資格と同時に、もう一つの特権を与えられる。


 それは従者『ミニオン』を自由に一人選び、試合への参加権を与えることだ。


 二人の魔法使い、ウィクターとミニオン。

 それがマジティアを共に闘うパートナー制度である。


「ソロのウィクターも多いわよ。本人の拘りや、特に必要ないって考えの人がいるの」


「お前は誘う友達いないからソロだっただけだろ」


「その通りよ。ほっといてちょうだい!」 


 ミスリルの選手控え室で、ルイは試合用の白いドレスに着替えていた。

 ドレスの上半身は肌に密着し、メリハリのある身体をくっきりと写している。

 ウエスト部分から裾へ伸びる直線的なスカートの広がりは縦の線を強調し、刺繍を施した純白の衣装は、ルイの内に秘めた力強さを観る者へ伝えていた。


 それはいつもマジティアで見ているルイの姿だ。

 そしてこれから自分もルイのミニオンとして一緒に参加する。


 夢の舞台に立てるのだ。もちろん嬉しい。

 嬉しすぎて叫びたいぐらいに――


 そして緊張もしている。

 心臓がいつ飛び出てもおかしくないぐらいに――


 しかしそれ以上に、ことりはルイの申し出を受けていいのか迷っていた。


「もちろんよ。だって私はもうそうしたいって思ってしまったもの」


 ルイには清々しいほど何の迷いもみられない。


「クウの力や共鳴りの力は関係ない――私はあなただから共に戦いたいの」


 なぜならば彼女の夢をきっとなれると本気で信じてくれたのはたった二人だけなのだ。

 一人はヒキコモリのダメ人間で、そして一人は――


「私がなりたいものになれると信じてくれるあなたと一緒に、このマジティアを!」


 まるで夢の舞台へ誘うように、ルイは優しくことりの手を握った。

 紡がれた手が熱を帯び、二人のまゆたまは巣立ちの羽ばたきように鼓動を刻んだ。

 胸に生まれたときめきが、この出会いが運命であると告げている気がした。


「ルイさん。私は……皆を笑顔に出来る最高の魔法使いになりたいです」


 共に未来を目指す為に、ことりは自分の夢を捧げ――


「ええ、あなたなら絶対になれるわよ」


 かつての母のように――ルイは晴れやかな笑みで少女に応えた。


 その答えへ至る理由も積み重ねるべき時間も、空理空論。

 ただ互いが互いの夢を信じている。

 それだけが二人にとって大切な真実なのだ。


「私は最強を、あなたは最高を。二人で目指しましょう!


 最高にして最強、最良にして最上、この世で最も偉大な魔法使い、マジティアージュを」


 もうことりに迷いはない。選ばれたからではなく、ことり自身が選んだのだ――


「術は大地。言霊はプライド。導師名はオリハルコンイーター。私の名前はルイ・リンバース。お願い、私のパートナーに――ミニオンになって!!」  


「はい。二人で一緒に……マジティアージュになりましょう!」


 ルイと共に夢へ歩むことを、自分の意志で――

 ルイが目指すは最強のウィクター、ことりが目指すのは最高のミニオン。

 マジティアージュを目指す二人の夢は、何の変哲もない選手控え室で始まった。


 見つめ合うブルーの瞳の奥で、ことりは夢で見た少女が微笑んでいるのを見た気がした。




次話『セカンドキスは渡しません!』

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