15話 ミーハー
短いです。
ああ、これは夢だ。これはきっと……初めて見る夢だとことりは理解する。
大好きなお爺ちゃんよりも強い魔法使いになるね。
その誓いを胸に、小さな女の子はたった一人で歩み続ける。
けれど彼女に与えられるものは、いつも嘲笑と侮蔑、そして拒絶。
いつからか、彼女は――その孤独に耐え切れず、一筋の涙を流した。
いつからか、彼女は――心の底から共に夢を目指せる仲間が欲しいと願った。
唯一、気の許せた男の子も、彼女の願いには未だ応えることが叶わない。
だから少女は一人で歩む。
涙を流し、傷だらけになってもただひたすら前へと進む。
後悔はない。これが自分の目指した夢なのだ。
ただ少し――寂しいだけなのだから。
すすり泣く少女の背中が、見るに耐えなくて……ことりは必死に手を伸ばす。
その指先がそっと背に触れると、女の子は戸惑いながら振り向いた。
女の子の綺麗な銀髪が、ふわっと揺れた瞬間――ことりの意識は途絶えた。
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風呂はテンの娯楽の一つであり、おかげで屋敷の浴室はとても広い。
おまけにボタンひとつで浴室の環境を変更できるという魔科学技術の最新設備を投入し、ヒノキ風呂や、岩風呂、ジャグシーや五右衛門風呂などを気分によって選べる。
『とりあえずボロボロだから先に風呂でも入ってこい』とクウに促され、お気に入りの大理石の浴槽で身体を癒していたことりは、いつの間にか湯船で居眠りをしていた。
危ない危ない……と、ことりはバシャバシャと顔に気付けの湯をかける。
「なんだか色々なことが一気に起こりましたね……」
契約、合体、魔法。それにマナホルダーというクウの秘密。
今まで自分だけ蚊帳の外だったのは、ちょっとだけ不満に思う。
そしてキス――これはめちゃめちゃ不満に思う。あの男、許すまじ。
クウへの制裁方法を検討した後、ことりは思考を切り替えた。
それは――突然現れた銀髪の少女のこと。
彼女の名はルイ・リンバース。
つい先日もテレビで観ていたマジティアの人気選手だ。
クウと同じ十六歳という若さにも関わらずマジティア選手名鑑の上位陣に名を連ねる実力者であり、石のゴーレムを操るパワフルな戦闘スタイルにファンも多い。
身長もクウと同じくらいあるので女の子としては高い方だろう。
おまけに胸も大きく、腰のあたりもキュッとくびれていて、手足はすらりと長い。
その魅惑的なスタイルは何度も雑誌の表紙を飾っている。
若さ、美貌、実力。全てを持っていて、ぶっちゃけことりも大ファンである。
そんな有名人とクウは昔からの知り合いであるらしい。
「いろいろ教えて貰わないといけないことがたくさんありますね……」
ことりは覚悟を決めて立ち上がり、ぐっと拳を握り締めると――
「でも、まずはサインを貰わなければ!」
色紙とペンの場所を思い出しながら、少女はミーハー根性丸出しで鼻息を荒くした。
キリが悪いので今回は短くなってしまいました。
かわりに次がちょっと長めです




