戦国時代で可能なチート覚書:銃火器編その2
チートと言う割にはコピーされやすいものが多いなあ……
続き。小火器以外に火砲も増やしてみる。
以下テンプレ。
A:知識さえあればできるもの
B:知識さえあればできるが、法制度、慣習などを解決する問題があるもの
C:知識さえあればできるが、地理的制限があるもの
D:ある程度加工技術があれば当時の技術で実行可能なもの
E:転生、転移者の寿命内の技術開発で可能なもの
・フリントロック式 B+C
火打石で発火金を叩いて火花で撃発する方式。
史実では火打石の強力な打撃による命中率低下が嫌われたのと、太平の世になって兵器開発が停滞したため顧みられなかった。
江戸初期の頃に幕府がオランダから輸入したり、試作品を作った形跡がある。
技術が広まることで諸大名の戦力が向上するのを抑えるために、幕府が意図的に普及を抑えたとも言われてる。
バネの作成技術など火縄銃の撃発機構より作成難度が高いが、江戸時代に民間の発明家が開発していたりするので作成難度自体は高くないかと思われる。
日本で導入する際の問題は日本の火打石は質が悪い=強度が低いとされてる点。
西洋と日本では火打石の材質が異なり、西洋はチャートで日本は石英や瑪瑙。
強度が低い=火付きが悪い=強く打つ必要がある=石がすぐ磨耗すると言う悪循環になるためと思われる。
チャートは日本でも産出するが、西洋のように海岸でホイホイ拾えないため資源供給の点で問題がある。
ただし、火縄の維持が不要、密集隊形による一斉射撃と言うメリットはこれらのデメリットに目を瞑れるほど大きい。
火縄はあっという間に燃えてくため、長さや先端の灰の付きには気を使わなくてはいけなかったし、かと言って消すと再点火に手間取る。
行軍中も火縄を振り回して維持しながら移動したり、合戦時には銃兵の後ろで火種を維持してる要員がいたとか。
採用には戦列歩兵の戦術を導入し軍制を大きく変更する必要があるが、これは当時の武士階級を根底から覆すことになる。
割と勝手に動く武士階級を仕官、下士官に教育し直すか完全に切り捨てて、鉄の規律を維持した近世軍隊に仕立て上げなくてはいけない。
足軽層も同様に一定の歩幅で行軍や一斉射撃の方法やマウリッツ式、グスタフ・アドルフ式の統制された軍制を仕込む必要も生まれる。
また、取った首の数で武功を評価すると言う当時の世相は、集団戦で誰が撃ったか、命中させたかが分からない戦列歩兵と相性が悪く、戦功評価のシステムを大きく変える必要もある。
社会制度の変更にも関わりかねない点からB判定に加えて、火打石の調達性の問題からC判定も加わる。
戦力的には火縄ミニエーライフルを採用するならば不要の技術であるが、物語の構成上、戦力差が大きく開いてしまうライフル・マスケットを出さないと言うならば採用の価値はある。
・コングリーヴ・ロケット DもしくはE
戦史的に見て運用された時期が江戸自体の泰平の時期だったため、日本ではマイナー。
大鉄砲を使って発射する棒火矢と言う同様の兵器があったが、開発が慶長年間であったため実戦で使われることなく終わってる。
見た目は誇張抜きで物凄くでかいロケット花火で推進薬も弾頭も黒色火薬。
安定翼も回転による安定機構も無いため、長い竿を括り付けて安定させている。
ロケットで言う所の燃焼室が鉄製か否かで性能が変わり、鉄製でないと性能が低下する。
当時の技術でも数キロの射程距離を誇り、ガイドレールを用い行われる何百発ものの一斉発射は敵の戦列を壊乱させるのには充分な威力があった。
しかし、派手な見た目の割りに実際の被害はあまり大きくなかった。
これは飛翔時の安定方法が稚拙であり、長距離を飛ばすため命中率が非常悪かったことによる。
これを改良させたのがヘイルロケット(Hale rocket)と言われる方式で、竿を廃止し噴射孔にスピンさせるための偏流翼が追加された旋動式と呼ばれるもので、1200m先にあるアメリカンフットボールのゴールポストに入る程度の命中率がある。
史実では発明が旋条を施した火砲が一般化した時期と重なったためあまり活躍できなかったが、最初からこれを目指して技術開発していけば活躍の場はあるかもしれない。
構造は単純であるため生産は容易であり、投入する数を増やしてカバーするしかない。
ただし、構造が単純と言うことは不発弾を鹵獲されれば容易にコピーされると言うことに注意が必要。
そのため、ロケットの技術難度自体はD判定。改良されたヘイル式ならばE判定。
また、煙硝を凄まじく浪費するため、硝石の生産方法か輸入ルートを確立しない限り、ロケット砲兵を編成するのは困難と思われる。
史実でも実戦で多用した国が硝石の産地であるインドや、そこを支配したイギリスくらいと言う辺りで、煙硝の消費量はお察し。
運用のために硝石生産技術も必要と言う観点で考えるとE判定になる。
・臼砲 D
短砲身大口径の攻城用の曲射砲。
初期のものは角度は45°で固定で火薬量を変えて射程を調整する。
18~19世紀頃のものになるとある程度の角度調整が可能になっている。
極端な放物線弾道のため城壁などの遮蔽物を越えて砲撃を加えることができる。
18世紀中盤に一回点火方式が発明される数少ない榴弾を撃てる大砲だった。
日本の城塞は上部構造物は再建が容易な木製で実体弾では突き抜けしまい損害が小さく、基礎部分は土盛りや石垣で効果が薄い。
そのため構造的に実体弾のカノン砲に滅法強く、榴弾が使える臼砲の方が有効。
日本の城郭の縄張りや構造を見る限り臼砲に対してはほとんど無防備と言って差し支えない。
ただし、天井を設けて補強するなど篭城側に対策方法はあるため、こちらが臼砲を持ち出してからしばらくすると対策されるのは間違いないと思われる。
射程は口径によるが幕末に運用された12ドイム臼砲が最大射程700m。
敵が火縄銃か弓しかないのなら射程距離的に一方的に砲撃を加えることができるが、敵がライフル銃や大砲を持っていると壕を掘ったり土嚢を積んで射線から身を隠さないと射点に付くことすら覚束ない。
また野戦で使ってる作品を見たことがあるが、これは本当に当たらない。
実際に江戸時代に幕府がドイツの鋳物師に依頼して作った臼砲は11発試射したが固定目標の家屋に当たらなかった。
野戦で使うなら、現代の迫撃砲みたいに小型の臼砲を多数作って数でカバーするしかない。
江戸初期に生産できたと言う点で技術難度自体はD判定。
長砲身のカノン砲のように円柱状の青銅塊をドリルで切削すると言う高度な技術は必要なく、砲身の一体鋳造で作成できる。
前述のロケット同様、コピーされやすいので運用を始めたら自軍の城郭強化も必須。
ただし、臼砲の登場で城塞の防御力がインフレを始めると大型の臼砲が必要になる。
こうなると製造のために反射炉が必要になり技術難度がE判定まで上昇する。
また砲を運搬するための馬の生産、維持能力も向上させる必要に迫られる。
なお必要技術は鋳造技術であって鉄砲の鍛造技術とは別系統なのには注意。
雇うのは鉄砲鍛冶ではなく鋳物師。
・グリボーバル・システム E
水平式のドリルで砲腔を切削加工する砲身の作成方法。
当時の大砲は砲腔ごと鋳造で作成していたため、砲腔が円形ではなかったため砲弾との隙間が大きかく、発射ガスのロスが大きかった。
ジャン・マリッツの開発したこの製造方法で真円に近い砲腔が得られ、射程や重量面で砲の劇的な性能向上が図れる。
一例を挙げると大坂の役で使用された艦砲のカルバリン砲が重量2tで有効射程が1800mなのに対して、グリボーバル・システムで作成された12ポンド野砲は半分以下の重量の880kgで有効射程1000m。
旋盤の一種で加工対象の砲身が水力動力で回転しつつ前進し、ドリルは固定式。
トルクの大きい大型の水車や装置のトルクを上げるための減速機、硬質のドリルや歯車を製造する製鉄技術など、技術判定はE判定でかつ難易度も高め。
日本は馬匹の能力と数が欧州より劣るため、数百キロ単位の野砲、攻城砲を運用しようとするならば必須の技術。
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