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青葉のレター  作者: ほし
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第7話「最初の手紙」

「青葉様、私が日傘をおさししますわ」


「じゃあ、私が青葉様の安全をお守りして」


「青葉様、これからどこに行かれるんですの」


聞いたことがある名前。

その名前にクレアはピンときて、うつむいてた顔を見上げた。

すると、そこには、青葉さんがいた。

しかも、生徒たちに囲まれて。

春日さんが言ったとおり、あの噂は本当だったんだ。

青葉さんはすごい人気もので、生徒たちから取り囲まれていることを。


「みんな、気持ちは嬉しいけど、私そこまでされるほどの人間じゃ」


「何言ってますの、青葉様は南小路家の娘さん。あの南小路ですよ、すごいお金持ちじゃないですか。私たちなんてまだまだ」


「う~ん」


青葉さんは困っている様子だ。

無理もない、生徒たちに囲まれているのだから。


「青葉さん本当に人気者なんですね。それに比べて私ときたら…」


クレアはまた落ち込んだ。

青葉さんのように友達がたくさんできるようになりたい。


「こんにちは! 南小路青葉さん」


「あら、貴女は」


また一人青葉さんに話かけてる人がいる。

誰だろうと思いまたクレアは顔をあげる。

そこには黒髪ロングの綺麗な女の子がいた。


「青葉さん、この前のパーティーの参加ありがとうございました」


「いえ、あまり長居することできなかったけど、楽しかったわ」


「少しの時間だけでもいてくれただけで嬉しかったです。今度、また遊びにきてくださいね」


「ええ、是非」


誰だろうと思い、クレアは青葉さんと話している彼女に視線を集中させる。

黒髪ロングの綺麗な女の子。

背もすらっとしていて、まるでお嬢様だ。

でも、制服を見ると、どうやら彼女はクレアと同じ同学年の子らしい。

青葉さんと色が違うし、クレアの学年色と同じだ。

ということは、同級生。

クレアはまじまじと二人の会話を見ていると、ふと、目が合った。


「あ、クレアちゃん」


「あ、青葉さん…」


やばい、青葉さんと目が合ってしまった。

どうしよう。

いや、別に悪いことしてないんだから、気付かれてもいいのだが、今の状況クレアはあまり会話したくなかった。

まださっきのことで落ち込んでいたから。

タッタッタッと青葉さんが近づいてきた。


「クレアちゃん、ここでお昼?」


「あ、はい、たまには外の空気でも吸いながら食べようかなと」


「じゃあ、一緒に食べてもいいかな? 私、まだお昼食べてなくて」


「いい、ですよ。あはは」


やばいとクレアは思った。

今の自分の雰囲気だ、絶対青葉さんに悩んでることを知らされる。

そう思った。

作り笑いも苦手だ、とりあえずできることをしてみる。


「今日は私が作ったお弁当、は、じゃなくて、も、か。クレアちゃんの分も私と同じようにできてるから」


「ありがとうございます。その、いただきます」


「いただきます」


青葉さんとクレアは一緒にお昼を食べた。

もぐもぐ、青葉さんはどんどん食べていく。

その代わり、クレアは少し間を開けながら食べていた。

考えながら食べる、クレアにとって難しいことだった。


「あの子は…」


遠くのほうで私たちを見つめる人がいた。

それはさっきの彼女であった。


「あの、青葉さん」


「何?」


「その、あのお方はどちら様なのでしょうか?」


青葉さんは進めていた箸を止め、彼女に視線をあげた。


「ふふ、あの子は、北条美鈴さんっていうの。おじ様と美鈴さんのおじ様が友達で知り合ったのよ。確か学年は…」


青葉さんが考えていると、スタスタと美鈴さんが近づいてきた。


「初めまして、クレアさん。私、貴女と同じクラスの北条美鈴よ。よろしくね」


「あ、よ、よろしくお願いします」


嬉しい、と、クレアは思った。

自分の名前を覚えててくれていたなんて。

しかも、同じクラスということで驚きだ。

クレアは美鈴が同じクラスなのに、彼女のことを知らないでいた。

まあ、無理もないだろう。

まだ転入してきたばかりなのだから。


「それにしても、青葉さんとクレアさんって仲がいいんですね」


「ええ、実は…」


と、青葉さんが言おうとした時、クレアは青葉さんの口を手でおおった。


「ん」


「ごめんなさい、美鈴さん。もう昼休みの時間終わっちゃいますから」


そういい残して、クレアと青葉さんは二人でその場を離れた。

一人残された美鈴さんは不思議そうに思ってる。

青葉さんとクレアは二人で歩いてると、青葉さんが話かけてきた。


「どうしたの、クレアちゃん。何かあったの?」


「…ちょっと色々ありまして。あの、こんなこと言ったら迷惑かもしれないですけど、私たちが同じ家で暮らしてることは内緒にしてほしいんです。すみません、ワガママ言って」


青葉さんはきょとんとした顔をしている。

でも、クレアの答えを聞くと、青葉さんは済ました顔でこう言った。


「分かったわ、でも、後でちゃんと詳しく話聞かせてね」


「…はい」


ポツン、残されたクレアは青葉さんの後ろ姿を見送った。

どうして青葉さんはあんなにもみんなから惹かれんだろう。

自分なんか友達もできない、雰囲気の悪い教室でただ一人。

クレアは孤独を感じていた。

教室に戻ると、入りづらい雰囲気が漂っていた。

いや、そう感じるのもクレアだけかもしれない。

何とかしてクレアは教室に入る。

勇気を振り絞るんだ。


「あ、あの、春日さん。さっきのことなんだけど」


「あ? さっきって」


「いや、その…」


何て答えればいいんだろう。

分からない。

謝ればいいのか?

でも、あれは春日さんが一方的に言ってきたことだし。

どうしたらいいか悩んでると、春日さんは言った。


「はぁ…あのさ人に迷惑かけるのやめてくれないかな。言いたいことがあったらはっきり言えばいいじゃん」


「う…そうなんですけど」


「じゃあ何? そんなに言いづらいわけなの?」


「そうでも、ないんですけど」


「だったら早く言えばいいじゃん」


「………っ」


クレアはすぐに反論できない。

言いたいことは分かってるのに、何だろう、春日さんが怖い。

どうしようか戸惑っていると、授業が始まるチャイムが鳴った。

その音を聞くと、春日さんはクレアのことを無視して、次の授業の準備に入った。

残されたクレアはそのまま立った。

でも、このまま立っていても、仕方ない。

クレアも大人しく次の授業の準備に入った。

その光景をある者が見ていた。

それが誰だったのかクレアは知らないでいた。

夕方、クレアは一人歩いていた。

学校の帰り道。

まだ慣れていないせいか、たまに道が分からなくなる時がある。

でも、大体の勘でクレアは帰っていた。


「はぁ…今日は酷い目にあったな。結局春日さんと仲良くできてないし」


「これからどうしたらいいんだろ。あと、青葉さんに何て話そう。詳しく話を聞かせてと言われても」


軽くため息をつきながらクレアは家へと向かった。

その後ろを一人の少女が後をついてきていた。


「ただいま」


「おかえりなさい、クレアちゃん」


いつも通り接してくれる青葉さん。

その優しさに涙が出そうになる。


「今日はタルトを作ってみたの。もしよかったらクレアちゃんも」


「ごめんなさい、青葉さん。今日はお腹すいてなくて。後で食べますね」


このまま青葉さんの優しさに触れていってると、涙が我慢できなくなり頬からこぼれそうになる。

そうならないようにするため、クレアは逃げた。

急いで階段を上り、自分の部屋へと入る。


「クレアちゃん…」


玄関に残された青葉さんはとても心配そうな顔をしていた。

でも、あのままあそこにいたら、恐らくクレアはダメになる。

迷惑をかけてしまう。

もう青葉さんと会った頃から迷惑かけてきたのに、また迷惑かけてしまう。

だから、その優しさに触れないようにした。


「あー、何やってるんだろ私。これじゃまた青葉さん私のこと気になっちゃうよ。私ってほんとバカだな、何も分かってない」


もうこのままベッドの中に潜ろう。

そして、自分を責めよう。

全てクレアが悪いんだと。

春日さんに対しても、クラスのみんなに対しても、青葉さんに対しても迷惑をかけている。

そして何より春日さんに酷いことをしたようだ。

あのまま、孤児院にいたほうが何も考えずに気楽だったなとクレアは感じていた。

もう涙が止まらない。

頬に伝わる涙が、ベッドのシーツを濡らしていく。

孤児院のシスターに会いたい。

会って話がしたい。

ありのままの全てを話して楽になりたい。

そうクレアは思っていた。

泣いてると時間はあっという間に過ぎていく。

今何時なのかも分からない。

明日学校に行くのが嫌であった。

だから、このまま時間が止まって明日にならないように願った。

でも、その願いは叶わないまま、時間は過ぎていった。

カチコチ、時計の音が聞こえる。

ふと、気が付くと、そのまま泣き疲れて眠ってしまったのだろうか。

ベッドの上半身を起こし、時計を見る。

すると時刻は二時半であった。

まだ夜中だ。

何だかクレアはほっとしていた。

だって、まだ学校に登校する時間じゃないのだから。

このまま眠ってもいいが、何だか時間がもったいない気がする。

クレアはベッドから離れドアの前に足を運ぶ。

するとそこには何かが挟んであった。

それはドアの下の隙間から挟んであって、クレアはそれを取った。

暗くて見えない。

明かりをつけようと、自分の机に向かい小さいライトを付けた。

部屋全体は明るくないが、机の上だけ明るい。

どうやらドアの下に挟んであったのは手紙のようだ。

部外者のものではないだろう。

恐らく青葉さんだ。

そうクレアは思った。

気になるので、手紙を開けてみる。


「可愛い」


そう、その手紙は女の子が使う封筒や便箋であった。

ピンク色をしていて、ウサギの絵が描かれてある。

クレアは読んでみることにした。


『クレアちゃんへ 今日は色々とお疲れさま。何か学校であったんだと思う、クレアちゃんすごく悲しい顔をしていたから。だから、直接では何も聞きません。でも、こうして手紙なら話してくれるかな。私、クレアちゃんの味方だから、この前も言ったよね。私たち家族なんだから、クレアちゃんの傍にいる。家族はね、悩みがあったら相談してもいい人なんだよ。辛いことも楽しいことも全部! もちろん隠し事をする人もいる、でも、私はクレアちゃん隠し事は似合わないような気がするな。だって、クレアちゃん見てるとすぐに分かるから。辛い時は悲しい顔をしている楽しい時は微笑んでる顔をしている。そういえば私、あまりクレアちゃんの笑顔見たことないな。少しだけでもいいクレアちゃんの笑顔が見たい。笑って楽しいこといっぱい話したい。もちろん辛い時は泣いていいんだよ。我慢することはない。辛い時、相談し合って人は成長するからね。私はクレアちゃんの力になりたい。支えになりたい。だから、いつでもいいから私を頼って。もし、クレアちゃんが私を頼ってくれたら、私もクレアちゃんを頼るから。その時は力になってね。言いたいことはこれくらいかな。ごめんね、長くなっちゃった。無理しないでね。クレアちゃんが毎日笑顔でいられるように毎晩手紙を送るよ。それじゃおやすみなさい』


「…青葉さん…」


クレアの目から大粒の涙がこぼれ落ちてきた。

また泣いてる。

クレアは自分のことすごく弱くて泣き虫だな、そう思った。

こんなにも青葉さん自分のこと思って気にしてくれていたなんて知らなかった。

クレアはこの壁を乗り越えなければならない。

乗り越えて楽しい生活を送らねばならない。

そう強く感じた。

そして、クレアもまた、青葉さんのことを知りたいと思った。

まだ、青葉さんの家に来て数日しか経っていない。

青葉さんのこと何も知らないのは当然のことだが、何か一つでもいい。

情報が知りたい。

クレアは青葉さんからの最初の手紙を大切にし、机の引き出しの中にしまった。




今回は新キャラ、美鈴が出てきましたね。美鈴のキャラは文系のお嬢様みたいな感じの綺麗な子です。

そして、春日とのやり取りは相変わらずツンツンしてますねwデレるシーンも書かねばw

青葉のレターで登場するキャラはこれで全てだと思います、たぶんw

あまり増えると難しいですからね。

これから青葉はクレアに毎日手紙を送ると思います。

手紙って書くの難しいですね、内容がw

まあ、青葉はクレアのことを大切に思ってくれている、そう皆さんに知っていただければ幸いです。

それでは。

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