第2話「新しい家」
お嬢様が住むような大きい屋敷といってもいいが、そこまでもない。
でも、隣に建ってある一般家より大きいのは確かだ。
「ようこそ、南小路家へ」
さっきまでクレアの手を握っていた彼女の手は、差し伸べられた。
手を取ってあげたい。
でも、知らない車に乗って知らない家の前にたどり着いて、その手を握るというのはとても不安であった。怖かった。
クレアは手を握ることすらできない。
でも、このままだと彼女さんを傷つけてしまうかもしれない。
どうすればいいのか。受け入れることができない。
もやもやと考えていると、彼女さんは気にかけてくれた。
「クレアちゃん、何かごめんね。急に連れてこられて知らない家の中に入るっていうのも怖いよね。でも、大丈夫。私はクレアちゃんの味方だよ」
「…味方?」
「うん。これからずっとここで一緒に生活していくの。不便なところもあるかもしれないけど、それなりに物とか交通手段は揃ってるから、安心して」
大丈夫なのであろうか。
不安だ。
でも、さっきの空港での男性よりかは信頼できるかも。
クレアは勇気を振り絞って、彼女の手を握り返した。
「…よ、よろしくお願いします」
「ふふ。さぁ、中に入って」
そう言われ、クレアは恐る恐る、家の中に入っていった。
玄関はとても綺麗にされていて、修道院よりも倍の広さであった。
何百人のお客さんがここに入れそうだ。
下駄箱の上には可愛らしい花が飾ってあり、その上には絵画が飾ってある。
「お邪魔します」
少し汚れ気味の靴を脱ぐ。
その脇には彼女の靴が置いてあり、その横には大きい男性らしい靴も置いてある。
「ここがリビングよ」
彼女に案内され、玄関からリビングへと移動する。
「うわー」
そこには玄関よりも大きい広さのリビングがあった。
テレビも大きい、エアコンも大きい、何もかもがクレアにとって大きく見えた。
とても綺麗にされていて輝いている。
「クレアちゃん、ここで、毎日私とお父様とクレアちゃんで食事をするの」
「…は、はい」
「緊張しなくてもいいんだよ。もうクレアちゃんは家族なんだから。ね、リラックスして」
「…りらっくす」
この先どうなるか分からないが、クレアは深呼吸をする。
落ち着け、落ち着くんだ。
ふぅーと息を吐く。
「よし、じゃあ、お父様に挨拶しに行こうか」
クレアはきょとんとした顔のまま彼女にまた手を握られる。
とても温かい、優しい手だ。
リビングから出て、彼女たちは廊下の奥に進む。
突き当りを曲がると、そこには大きい扉があった。
コンコン。
彼女は扉をノックする。
「お父様、クレアちゃんがいらっしゃいました。挨拶だけでも済ましてください」
ギィッ。
大きい扉が半分開いた。
そこからはうっすらと男性の横顔が見えた。
「おおう、すまんすまん。今、仕事の最中だった。クレアが来てくれたのか」
そう言うと、横顔をした男性は扉を大きく開いて、真の姿を現した。
彼女より背が大きく、肩幅も広い。
まさしく大人の男性って感じだ。
少し老け気味だが、でも、若気に見える。
「いらっしゃい、クレア。南小路家へようこそ。青葉は何でも知ってるから彼女に聞くといい。私のことはおじ様と呼んでも構わない」
「…おじ…さま」
「そうだ。君もいい娘になるよう私は見守っているよ。さあ、青葉、部屋に案内しなさい」
「はい。行こうか、クレアちゃん」
ギィッと扉は閉められた。
サッサッサ部屋の足音は扉から去っていった。
また手を握られ、今度は、階段を上がる。
手すりもついてあって、安全ばっちりだ。
階段を上ると、そこには、四つ部屋があった。
彼女はその中の一つを選び、そこに入る。
「ここがクレアちゃんの部屋。私の部屋は隣なんだ」
「そうなんですか。あ、あの」
「ん?」
「あの、貴女の名前は何ていうんですか?」
「あ、そうだった。ごめんね、今まで自己紹介してなくて。私の名前は南小路青葉。名前は好きなように呼んでもらっていいよ」
「…ぁ…ぉ…ば…さん」
「ん」
「あの、青葉さんでもいいですか?」
「うん、これからよろしくね、クレアちゃん」
「はい!」
今までミルクプリンという作者名だったのですが、Twitterと同じ名前がいいんじゃないかと思いTwitterと同じ名前にしてみました。
ということで、今回はクレアが新しい家に迎えられるお話でしたね。
最初は不安があったのですが、少しずつクレアが前向きになってくれたらいいなと思ってます。
でも、まだ不安あるのは確実ですね。とりあえず最初は名前の呼び合いからですね。
そこからどうなるのか、クレアと青葉次第。頑張ります!
それでは。