雨
「最悪」
晴れるって言ってたじゃん。
窓から降る雨を見つめて憂鬱さが増す。
帰りまでにやまないかな。
傘を忘れたら帰れないほどの雨。
傘立てにはいつからおいてあるのか分からない傘もあるのだから、こういう時は拝借していけばと思うのだけれど、変な所真面目なのだ。
きっと私はずぶ濡れで帰る方を選ぶだろう。
「傘忘れた」
「じゃぁ一緒に帰ろう、持ってきたから」
そんな会話があちこちで聞こえるけど、私にそれを言う人はいない。
特別な親友がいない、というのもあるけれど、なにより私の家は遠いから。
自転車の申請がギリギリ通らない、そんな中途半端な距離。
「小田さん、また明日」
「はるちゃん、バイバイ」
なんて何気ない挨拶が今は恨めしく思う。
「うん、また明日」
晴夏はそんな気持ちを悟られないように、無理に笑顔を作る。
どれくらいそうしていただろうか。
気づけば恨めしく思ったクラスメイトもいなくなり、入り口にたっているのは私だけだ。
待ってれば少しはこぶりに、なんて思っていたけれど気のせいなのか、どんどん強さは増していく。
これはもう濡れて帰るしかない、明日こそ仮病じゃない風邪覚悟で。
そう思って踏み出そうとした時「小田?」と聞き覚えのある声に晴夏は振り向いた。