ずる休み
キス。
しちゃった。
目を見開いて動けない私をよそに、先生からは全く動揺が感じられない。
むくっと起き上がり何事もなかったかのように眼鏡をかける。
「帰りますか」
暗くなる前に。
そう言って微笑む佐々木は、鍵を閉めるからと晴夏を廊下へと誘導した。
聞きたかった。
あれはどういう意味?
スタスタと振り返らずに歩いていく
先生の背中が、さっきのキスには触れるな、といっているような気がしてなにも言えず、その背中が見えなくなるまで私はその場から動くことが出来なかった。
でも聞かなくても分かった。
それが答えだ。
先生にとってはなんの意味もないこと。
ただの悪ふざけ。
そうに違いない。
「あんまり酷かったら病院いきなさいよ?」
「うん、わかってるー」
「お母さん、仕事行くけどおかゆ作ってあるから」
そう言って母は出ていった。
ごめん、お母さん。
仮病です。
ずる休み。
でも、誰もずるだとは思わない。
こんな時、私についた優等生の看板はありがたい、と思う。
でも何をしよう。
味気ないおかゆにふりかけをかけ、食べながら考えるも、なにも浮かんでこない。
・・・そうだ、録り溜めてたドラマ見よう。
1話から11話。
見てから気づいた。
恋愛物だったということを。
それもキスシーン満載の。
昨日の事が頭の中をぐるぐると駆け巡って、脳内会議が始まる。
ドラマの内容なんて、あまり入ってこなかった。
そればかりか、気づかないうちにポテチ1袋、しかも大袋を平らげていて
、外からは鐘の音が聞こえ、学校から子供達が続々と帰宅していく。
遮光カーテンの隙間から空を見上げると、もう日が落ちはじめていた。
どうやら結局なにもしないで1日終わってしまったようだ。
1日休んでもまた明日がやってくるというのに・・ほんと・・・なにやってんだか私は。
「・・・学校行こう・・」