香水の匂い
放課後、重い足取りで指定された教室へ向かう。
準備室。
各教科1室ずつこの学校にはあって、資料や、実験道具、今日みたいに勉強できるようになのか、ちゃっかり机と椅子があったりもする。
広さは教室の半分くらいだけれど、2人なら充分な広さだと思った。
引き戸を空け「先生」と中にいた佐々木を呼ぼうとして晴夏はやめた。
机に突っ伏しておやすみ中のようだから。
そっと扉をしめ向かいの椅子に座る。
人を呼びつけておいて寝てるってあり?
と、起こさないようにそっと顔を覗き混んだ。
へぇ、先生の眼鏡外してんの初めてみた。
睫毛、長いんだ。
眼鏡ないほうがいいのに。
そんな眼悪いのかな?
なんて思いながら、晴夏は佐々木の眼鏡を持ち、鏡のあるばしょへ移動してから眼鏡をふざけてかけてみた。
生まれてこの方、1.0以上キープしている私にとっては憧れの存在だ。
・・ん?
これ、度はいってなくない?
気のせい?
じゃないよね。
着け外しをして遠くを見つめても景色は全く変わらない。
伊達・・・だよね?
「あー無いと思ったら」
そう声が聞こえると佐々木は後ろから晴夏を抱き締めた。
・・いや、違う。
抱き締められたように私が勝手に感じただけ。
先生は、ただ私の手から眼鏡を取り返そうと思って後ろから手を伸ばしただけなんだと思う。
けど、微かな香水の匂いが私の洋服に移ったようで何故か分からないけれど心臓がドキドキとした。
「じゃぁ、勉強すっか」と眼鏡を装着して教科書を開く佐々木に、晴夏は「いや、実は・・断ろうと思って今日来たんです」と申し訳なさそうに顔を作り言った。