第1話 魔法少女襲来?!
プロローグが終わって第1話です。
11月某日。僕、瀬乃橋 希は自業自得であるとわかっていながら今の生活に啖呵をきらしていた。まだ解けたと思っていた古典への期待も点数を目にすると同時に木端微塵に打ち砕かれた。幸い世界史は平均点を超えていたので良しとしよう。
次こそは「次から本気出す」の人を卒業しよう。そう思った僕は部屋に向かった。
勉強をやる気満々に自室の扉を開けた僕は我の目を疑った。これは今まで努力しなかった僕への罰だろうか。そうだとしてもこんな非科学的なことがありえるだろうか。僕の目に映ったのはまるで漫画に出てくる「異次元空間」のようなものだった。元あった僕の部屋は跡形も無く消え去り、扉から先は床も天井も壁もない無限に続く一つの空間になっていたのだ。だが、こんなことがこの世に起こっていて誰が信じるだろうか。もちろん、僕も信じていない。
「なぁに、きっと古典の結果に動揺して幻覚でも見ているんだろ。まったく僕はここまで馬鹿じゃないぞ。」
なんて誰宛てなのかもわからない独り言をつぶやき扉を閉めた。そうだ、落ち着こう、深呼吸をして再度扉の取手に手をかけ勢いよく開いた。
僕の部屋は元に戻り、机も椅子もテレビもゲームもベッドもあった。あぁ、そうだろうとも、この世の何処の誰が期待していた古典の結果に動揺して幻覚を見たりするものか。
異次元なんかあるわけがない。今僕の目の前にあるのは僕の部屋と僕の机と僕の椅子と僕のテレビと僕のゲームと僕のベッドと、
僕の…魔女コスプレ少女?
「邪魔しているぞ、今日から其方の快適化プロジェクトの担当になったものだ。」
誰だお前は。服装、口調、入室方法…どこから突っ込んだらいいのかわからない。
僕の目の前にいたのは濃い紫のマントととんがり帽子を被った少し小柄の女の子だった。服装の感じで言うとハロウィンの魔女衣装に似ている。
「おい!返事をしろ!せっかく我が来てやったのだ、自己紹介の一つや二つしてみよ。」
何様だこのお嬢ちゃん、それに自己紹介に個数なんて…そんなことはどうでもいい。
「あの、どこから来たのかな?お家は?お母さんとお父さんは?」
まぁ少しウケを狙ったが見知らぬ年下の女の子に話しかけるとしたらこれくらいしか思いつかなかった。
「なっ、貴様!我を馬鹿にしているのか!我が名はステファン=ライル。天界ユグドラシルから派遣された魔法使いだ。ステフと呼ぶがいい」
あ、自分から自己紹介してくれた。
これもこれでどこから突っ込んだらいいのかわからない。が、だんだん慣れてきた。
「じゃあ、ステフちゃんはそのユグ…ゆで卵?ユーラシア大陸から来たのかな?」
僕はなにを言っているのだろうか。魔法使いとか言うかなり痛い設定をもっている人がユーラシア大陸なんていう常識単語を使うわけがない。
「ユーラシア大陸はここからずっと西にある大陸のことだ!我はユグドラシルから来たのだ!」
簡単ながらもわかりやすい大陸情報をありがとう。
「ユグドラシルって蛇とか大木で描かれてる神話の?」
過去に本で読んだことがあった死の国として扱われることもあるそうだ。
「ユグドラシルはこちらの世界とは全く違って神話や伝説が現実のものとなっている。」
「この世界ってことはそのユグドラシルってのは一つの世界として成り立ってるってことか。」
「まあそんなところだな。」
それに見た目は小さな女の子だけど、話してると子供の作り話にしては設定が細いし本人も案外しっかりしている。
てことはこのステフって女の子って、魔法使いかはわからないけど、正真正銘の異世界人ってことか?
「やった!やったよママ!僕は退屈な日常の中にこんなにすごくて楽しいことを見つけたよ!」
本当はママなんて呼ばない。そもそも僕は養子なので両親なんて関係ないわけだが、異世界人という非現実的な生命体がやってきたことは今までなにもなかった僕の生活の中ではとても大きい出来事だ。
「其方、もしかしてマザコンか?」
どうやら常識は通じても冗談は通じないらしい。
なんにせよ不気味ではあるが、これからが少し楽しみだ。退屈な日常とおさらばできるこの喜びは高校に入学した時よりも比べ物にならないくらい嬉しい。
またプロローグみたいになってしまったが、僕、瀬乃橋 希の日常はこれから大きな変化を成すのであった。
第1話いかがだったでしょうか。かなりプロローグ寄りな感じに仕上がってしまいましたがステフが登場してやっと物語が動き出していきます。次回はいよいよステフの魔法が発動?!楽しみにいていらっしゃるかは分かりませんが次回をお楽しみに(* ̄▽ ̄)ノ~~