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我楽多日記  作者: みやき
1/1

初めての隣人

6月1日


私の住んでいる所は、住宅地とは言えないが

まあ一般的な街中の居住用マンション、

テナントも入っていない。


小学生のいる家族や新婚さんが多く、

一人暮らしは私くらい。


ワンフロアーに2戸、総数16戸、

空き部屋が3戸ぐらいある。

最上階には大家さんも住んでいる。


別に私の住まいをご紹介したい訳ではありません。

空き家の1戸に引っ越してきた住人について

不思議な事が???

それも私の家の真横に住まいとしてでは無く、

建設業の事務所が入ってきたのですが・・・・・

まったく似つかわしくない人々が

日々出入りしている???



6月8日


お隣さんが越してきてから・・・

マンション前に異様な車が止まる様になった。

大型の外車から、国産の高級車、

軽のワゴン車まで、色んな種類の車が

道路のアチコチに違法駐車されている。


それも何故か?ナゼか?なぜか!

窓には真っ黒のフィルムが張ってある。

建築関係のはずなのに、

トラックとかは見たことが無い・・・


男性社員らしき人が出入りしているが、

皆な黒っぽいスーツ姿で

作業着を着ている人は一人も居ない・・・

摩訶不思議である。


時間的にも少し変?

普通、会社というのは8時とか9時に始まり

6時とか7時に帰れると思っていたが・・・

お昼過ぎ、それも2時を回った位から出勤して来るようだ。


私はお勤めに出たことは無いが、そんな会社ってあるのかな?



6月15日


お隣の皆さんは、ほんとに良く働いているようだ、

夜中の2時から朝方の5時前まで

『お疲れ様』の声が聞こえる。

まるで新聞屋さんのよう・・・


夕方からは男性社員の方が慌ただしく出掛け出す。

出掛けたかと思うとすぐに帰ってきて、また出掛ける。

それが夜中まで続く、

まるで何かを配達するのが仕事のように、

真っ黒のフィルムを張った車で・・・


時々、女子社員の方にも遭遇する。

会社の規則が厳しいのか、エレベーターを待っていても

隣人の私に会うと、エレベーターごと譲ってくれて、

乗らずに階段を降りて行く。

男性社員の方と一緒の時も私が見る限り階段を使う、

かなり健康に気を使う会社なのだろうか?



6月22日


梅雨なのに雨の降らない日が続いたかと思うと

バケツをひっくり返したような雨!


なにげに、お隣の玄関前を見ると・・・

色とりどり、十何本の女性物の傘が・・・

えっ?事務員さんがこんなに多勢居た?


今日は会議?面接?リクリエーション?茶話会?何々?


私の経験では女子が10人以上集まると、かなり騒がしい。

でも、お隣は静か・・・

このマンションは、かなり防音効果が高いのか?


と、思っていると・・・男性の話し声が・・・うん?

それもかなり大きなボリューム・・・

『はい、はい、ありがとうございます。はい大丈夫です!』

あっそうか、携帯入りにくいから玄関前で電話してるのか。

エレベーター前は、声が筒抜けになる事を初めて知った!


そして真夜中、またまた話し声が・・・

聞くとは無しに聞こえてくる男女の会話、

女性のほうがキイが高く、男性の声はあまり聞き取れなっかた

約束が違う!とか、ちゃんとして欲しい!とか

女性が一方的に怒っているようだ・・・


仕事上のトラブルかもしれませんが、こんな時間に近所迷惑ですよ。



6月29日


今日も1日中雨・・・

乾かない洗濯物がそこここに吊ってある・・・


明日晴れるといいな〜なんてぼんやりしていると

「ピンポーン・ピンポーン」とチャイムの音


こんな夜中それも雨の中誰が来る・・・

出前・・・頼んでない、

宅配・・・覚えがない、

集金・・・お金がない


とりあえずインターホンに出る、

「はい」・・・返事がない・・・間違いかな・・・


しばらくすると「ピンポーン・ピンポーン」

とまたチャイムの音

「はい」・・・また返事がない・・・


ストーカー?いたずら?

あっつ!!ピンポンダッシュ!!!

でも、ここはオートロック、マンションの玄関前では

ピンポンダッシュの意味ない・・・不思議・・・


でも気持ち悪いから、もう寝てしまおうっと。



7月6日


久しぶりに、ゆっくりと時間が取れた。

タイミング良く、夕方友達のヒロが遊びに来た。


部屋に入るなり「お隣さんデリバリー?」

デリバリー・・・ピザ?寿司?・・・とにかく出前


「うちも何か取る?」

「じゃ無くてお隣さんの仕事がデリバリー?」

「お隣さん???建築関係みたいだけど?」

「・・・建築・・・関係?!」


ヒロはお隣さんに興味があるみたいで、色々聞き始めた

私は、お隣さんが引っ越して来てから今日までの様子を話した。


「もう3ヶ月近くになるのに、毎日家に居て気が付いてないの?」

気が付く・・・何に・・・?不思議がる私に

「この前来た時もそうだったけど、お隣さんイケメン揃ってるし」

・・・そういえば、うちのスタッフも・・・

「お隣さんメチャカッコ良い人多いですよ!」

とか喜んでた記憶が・・・

イケメンとデリバリーが、どう繋がる???


ヒロと話し込んでいると「ピンポーン・ピンポーン」チャイムの音


「はい」・・・

「すみません、ユリカです。」

インターホン越しに女性の声


ユリカ?・・・「ヒロ、ユリカさんて知り合い?」

「知らない、間違いじゃない、」

どちらのユリカさんですか?

と聞こうとすると、もうインターホンが切れている。

「やっぱり間違いみたい。」


私は夜中のピンポンダッシュを思い出した。

「ヘェ、じゃ今度鳴ったら私が出る!」

何が楽しいのか、いたずら坊主のように笑っている。


二人は、最近観た映画、高校野球、

ネイルアートの話なんかしながら

デリバリーの点心をパクついていた。

「ここ結構美味しい!」

新装開店のはじめてのお店、胡麻団子が甘過ぎず、おいしぃ!


「ピンポーン・ピンポーン」ヒロがインターホンに飛び付いた。

「はい」・・・「アキナです。」

「お疲れ様」ヒロはエントランスのロックを外し

玄関のドアスコープに張り付いてしまった。

・・・何が始まるんだ・・・?


「しっ!」犬でも追っ払うように、左手を振る。

何なんだこいつ・・・ここは私の部屋なのに・・・


「見てごらん」小声で言って私にスコープを覗かせた。

ちょうど女の子が隣の部屋に入って行くところで

今風のイケメンが後ろに続き、二人が中に消えた。


「やっぱりね!どう、わかった?」「何が?」

「だから、お隣さんのショウタイ!」

「ショウタイ?招待?小隊?SHOW TIME?」

「本性、ほんとの姿、化けの皮が剥がれたの。」

・・・・・

「さっきのが、アキナさん。」

・・・・・

化けの皮・・・隣は、妖怪屋敷?アキナさんはネコ娘???

・・・・・

「要するに、デリヘル嬢って事かな。」

・・・・・日本語が理解できない・・・・・


私の頭は急回転で動き始めた!


そうか!それで!そうだった!

でも何で?このマンションに妖怪屋敷・・

じゃない・・ヘルスクラブがあるんだ?それも隣に?

ここは歓楽街からは程遠いはず・・・


感情が???を通り越して!!!になって来た。

大家さんに抗議してやる!

風俗の隠れ家がお隣さんなんて!絶対嫌だ!


「今日、泊って行く?」

「帰ろうかと思ってたけど、面白そうだから泊る♪」

何てやつだ、人の不幸を喜ぶなんて!

でも居てくれたほうが心強いから言わない。


「珍しいよ、こんな体験できるなんて。他に何か無かった?」

他にと聞かれても・・・思い出せる限り考えてみた。


その間に何度もYは嬉しそうにドアスコープを覗きに行った。


「先にお風呂入る?」

「私のほうが早いもんね、タオル勝手に出すよ。」

タオルどころか、私のお気に入りのTシャツに短パン

おニューの下着まで抱えてバスルームに入っていった。

・・・まあ・・いつもの事だけど・・・


ヒロがバスタオル姿で戻って来た

「忘れ物?」

聞いてる私の手をつかみ、何も言わずにバスルームへ引っ張って行く

えっえっ??私そんな趣味ないし・・・言おうとする私に

「しっ!」怖い顔で睨む。


「いつもありがとうございます。丁度良いところにお電話頂きました。」

・・・

「はい、新しい子が今日入りまして。」

・・・

「可愛いですよ、身長168センチで48キロ」

・・・細い・・・


「上から90、56、88、歳は23です。」

・・・モデルか?・・・

「はい、もうすぐ来ますので何処にも出しません。」

・・・監禁?・・・


「もちろんです!少しお待ち頂ければ、必ず!」

・・・・・・


「ありがとうございます。いつもの所へ、はい、ありがとうございます。」

・・・丁寧な営業・・・


「面白い!」

ヒロはサッサと服を脱いで、お風呂に入っていった。


法治国家である現在の日本、

歓楽街にソープランドも多く、遊郭もある。

売春、買春の摘発されているニュースもよくみかける。


風俗店らしき入り口の前には肌を露出して

ほとんどラムちゃん状態の女の子が立っている。


そういえばつい最近、そのラムちゃんがおまわりさんに

追いかけられているのを見たな、何をしたんだろう?


繁華街には、ショッピングを楽しむ人たちに紛れ、

それらしい女性が、それらしいファッションで

それらしい姿で、それらしく昼間から立っている。


深夜には、13,4歳にしか見えない外国の女の子が

地下鉄の駅近くで、前を通っていく男性に

「マッサージ、ドウデスカ?」「ヤスイヨ〜」

と声を掛けている・・・


そして・・・うちのお隣さんは・・・デリヘルハウス


入れ替わりにお風呂に入っていると女性の話し声が聞こえてきた。


「今日・・・どうだった?」

「まあまあかな〜・・・だったから」

「そう、私は今から・・・」

「・・・そう、頑張ってね」

よく聞き取れなかったが、こんな夜中に出動のようだ、


彼女たちは夜中が忙しいんだ。

「お待たせ、行こうか今日も頑張ってね。」

これは、デリヘル配達のイケメンの甘い声。


呑気にしている場合じゃない!

明日、大家に文句言ってやる!!!


「ちょっと!!」


えっ?なに?


「ちゃんと払ってよ!何よこれ!馬鹿にする気!」

またまた女性の声・・・

「ふざけないでよ!」

「何怒ってんの?」

・・・これはイケメン

「しらっばくれて!」

「落ち着いて、落ち着いて」

「2件で7万の約束でしょ!3万5千ってどういうこと!」


・・・半額セール?値切りすぎ?・・・


「何かの間違いだと思うから、明日ちゃんとするから機嫌直してね。」

・・・私は男の猫なで声は嫌い・・・もめるなら家の中でお願いします。



7月7日


朝から大家さんに電話をして、今までのお隣さんの様子を話した。

管理会社に任せてあるが、確認しますとの事で少し安心。


早くどっか行って欲しい・・・


午後、大家さんからの電話で

管理会社も調べてみない事には返事が出来ないと言って来たらしい。



7月10日


早く調べてちゃんと対処してくれるように頼んだ。

が・・・2日たっても3日たっても返事がない。


朝、ゴミを出しに行った時、大家さんに会った。


どうなっているか聞いてもちゃんとした返事がない・・・

ほんとうなら私よりも大家さんのほうが怒るべきではないか?

お隣さんにも、いい加減な管理会社にも、


人の良い大家さんなんだろう・・・私が管理会社に電話してやる!


決心して受話器に向かった、

「大家さんから聞いてると思いますが、お隣の件どうなりました?」

「建築事務所での申し込みで書類も揃ってますので・・・」

「はぁ?書類じゃなくて実際に調べました?」

「いえ・・まだ・・こちらも忙しいもので・・・」

「何の為にエントランスとエレベーターに防犯カメラが付いてるんですか?」

「それは・・」

「真夜中から朝まで不特定多数の女性が出入りする建築事務所って事ですか?」

「今、調べてますので、もう少しですね・・・」

「結果が出たら知らせて下さい、何か事件が起きてからでは遅いですから!」


埒が明かない・・・少し様子をみよう・・・

っと思っていた矢先・・・


ヒロがまた遊びに来た、私よりもお隣に興味があっての事だけど。


「どうどう!その後!?」

瞳が好奇心で輝いている・・・わかり易い性格かも・・・


私は大家さんと、管理会社の事を話した、

「それって、グルかもよ?!」

「グルって?」

「大家さんも、管理会社も知ってて、知らん顔」

・・・まさか・・・管理会社はともかく、大家さんまで・・・

「大家さん、ここの1番上に住んでて気が付かないかな?」

・・そう言えば・・そうかな・・まさか・・ね・・


「ピンポーン・ピンポーン」

「はい」

「すいません・・・あやかです・・・」

・・・また間違いだ、でもこの人泣いてるみたいだけど・・・

「違うと思います・・お隣じゃないですか・・」

「あっすみません。」

よく謝る人、けど・・お隣で「すみません」て言った人は、はじめてかも


「まだピンポン間違いあるんだ〜」

「うん、どんどん新人さん増えてるみたいかな。」


『ドーン!!』『ガシャン!』『ドカーン!!!』

・・・???何だ?この派手な音は???・・・


隣の部屋から聞こえてくる、壁に何かがぶつかって、

私の大好きなHIRO・YAMAGATAが傾いている・・・


ヒロと私は二人揃って壁に耳をくっ付けていた。

〜まさかにコップまでは持ち出さなかったが、

お行儀はかなり良くない。


女性の泣き声・・・男性の怒鳴り声・・・

別の女性のヒステリックな叫び声・・・

別の男性の話し声・・・女性の泣き声・・・

男性の怒鳴り声・・・何かを叩き付けるような音・・・

『ドガーン!!』また壁に何か飛んで来た!


二人は壁から飛び退いた・・・お隣で何か異変が・・・

恐る恐るもう一度壁に耳を当てたが、もう何も聞こえてこない。


「何だったんだろうねぇ?痴話喧嘩かなぁ?」


そこに救急車の音が近づいて来た!


「まさかでしょ?」

救急車の音は止まることなく何とか現象で通り過ぎていった。


「そりゃそうよね〜そんな訳無いわ〜サスペンスじゃあるまいし〜」

(そう!二人ともだいのワイド劇場好きです。)

「あっ今日のロードショウ何だっけ?」

「宇宙もんだったと思うけど、新聞テーブルの下に有るよ」

「スターウォーズか、前に観たけど、観ようっと♪」

(そう!二人ともだいのSF好きです。)


お隣の事なんてすっかり忘れて

何度も観ている映画にダメ出しをしながらのおしゃべり。


もちろん!HIRO・YAMAGATAは壁から外して措きました。


「ピーポー・ピーポー」遠くで救急車の音がする

「事故多いよね〜」

「ほんと、サイレンの音聞かない日無いもんね〜」

「近づいて来るよ、このへんに救急病院有ったっけ?」

「無いと思うけどな〜」

「止まった!」Yがベランダに出て行った。

・・・まさか・・うち?

「前に止まった!救急隊の人がタンカ持って入って来る!」

・・・まさか・・私は、玄関のドアスコープを覗いた・・・

「大丈夫、上の階に行ったからお隣じゃないみたい。」


・・・ほんとうは、大丈夫とかじゃないけど・・・


ヒロと私は野次馬になりきってベランダから

救急車にどんな人が運び込まれるのか見ていた。


タンカに乗せられていたのは22,3歳にみえる女性で

意識が無いようだった。


玄関前の街灯に照らされた顔は青白く

オレンジ色のペディキュアが何だか痛々しい

「どうしたんだろうね、若いのに」


・・・若くても病気にはなる・・・


えっ?なんで?付き添っている女性に目が行った

お隣の事務員さんだと思っていたデリヘルさんの一人だった


・・・でも、救急隊の人はお隣へは入ってない・・・

何で・・上の階から降りてきたんだ・・・


あれこれ考えている間に救急車は出て行った。


部屋に戻ろうとした時

駐車場の影から人が出て来た・・・

救急車が出て行くのを待っていたようにみえる・・・


やっぱり!そうだ、間違いない!

その影はデリヘルのイケメン君だった。


お隣さんは、お隣だけではなく、上の階もお隣さんで

もしかして最近空き部屋が無くなったのは全部お隣さんなのか?

ってことは大家さんも管理会社も知ってるんだ。


冗談じゃない!


警察の何とか?相談窓口に電話した。

一般住宅にデリヘルが許されるのか!


今までの経緯を説明して理解を求めたが、

気の無い返事しか返ってこない・・・


大家に相談しろとか、管理会社に言って下さい、

ばかりで、話にならない・・・


「何かあってからでは、遅いんです。」

「何があるんですか?」

・・・現に救急車も来てるじゃないか!

一般住宅に嘘の看板で入居して

デリバリーヘルスやってるじゃないか!

まともな風俗店がそんな事する訳が無いでしょうが!


「売春は法律で禁じられているんじゃ無いですか?」

「そうですけど、お宅さん現場見たんですか?」


・・・なにそれ・・・現場・・・こいつ絶対馬鹿だ!


「まあ、未成年者でも出入りしているようなら連絡下さい。」


・・・何なんだ・何なんだ・・・その態度・・・



















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