突然の出来事
そして聡子の言った事を思い出していた
本当に大切な物は 目に見えないか・・・
確かに そうかも知れないわね
甲斐君の寝顔を見ながら そう思ったのでした
そして甲斐君が目を覚ましたのは 夕方だった
「あ あれ?ここは何処ですか?」
不思議そうに辺りを見渡した姿に 私はプッと
吹き出すと 倒れた経緯を甲斐君に話をした
するとそれを聞いて 突然ベッドの上で
深く頭を下げ 両手で布団を 握りしめながら
「すいません 本当にすいません」
そして涙が 布団にポツポツと吸い込まれた
その突然の出来事に私は驚いた
「どうして甲斐君が謝るのよ 甲斐君は全然
悪くないわよ?」
「いえ 折角の休日を無駄にさせてしまって
申し訳ないと 思って」
私は布団を握りしめている甲斐君の手に
自分の手をそっと重ねると
「どうして甲斐君は そうなの?」
「え?な 何がですか?」
重ねた私の手に 動揺してる甲斐君を見て
笑いそうになるのを 堪えながら
「観覧車にしてもそうよ 私が乗りたいと
思ったからって 本当は高所恐怖症で とても
怖かったんでしょ?それなのに どうして?」
「そんなの決まってるじゃないですか
一緒に乗りたかったからですよ」
爽やかな笑顔で言った甲斐君に 私は呆れて
「本当に甲斐君は 変わってるわね」
「そ そうですか?」
「うん 変よ 変 絶対に変!」
そして私達は顔を見合わせて 笑い出した
そこに丁度 先生が 帰ってきて私達を見ると
「調子は大分よくなったみたいだね」
「すいません 有難うございました」
私は立ち上がり 甲斐君はベッドの上で
互いに お辞儀をした
「そんな事より 早く行かないと 遊園地が
閉まってしまうぞ」
私達は先生に急かされて 病室を後にした
「ねぇ 甲斐君 どうして・・・」
そう言いかけて 甲斐君に視線を向けると
苦しそうな表情で 俯き歩いていた
「え?何ですか?」
それなのに 私を見る目は微笑んでいた
「そこのベンチで 少し休みましょうか」
「ぼ 僕なら 大丈夫ですよ」
「違うの 私が疲れたのよ」
「じゃ じゃあ 少し休みましょう」
甲斐君はヨタヨタと ベンチに近づくと
深く腰掛けて 大きく息を吐いたその姿が
痛ましく思えた 重度の高所恐怖症なのに
ムリして観覧車に乗ったりするから・・・
「私飲物買ってくるわ 甲斐君は何がいい?」
「いや 僕が買ってきますよ!」
立ち上がろうとした 甲斐君の肩を手で押さえ
強引に ベンチに座らせると
「いいから甲斐君は座ってて で何がいい?」
「じゃあ スポーツ飲料お願いします」
私は自販機に向かい 二人分の飲物を購入して
ベンチに戻り 甲斐君にジュースを手渡すと
それを 一気に飲み干して
「美味しかった〜 あ ジュースのお金を」
「いいわよ ジュース位」
「あ 有難うございます」「じゃあ何か
乗りに行きましょうか!」
「もういいから 少し休みましょう」
「でも まだ観覧車しか・・・」
「私はもう十分よ」
「すいません 気を遣わせて・・・」
「気を遣ってるのは 甲斐君の方でしょ?」
「いや 気は遣ってないですよ」
「じゃあどうして私が観覧車に乗りたいって
分ったの?」
「それは・・・」
甲斐君の言葉はそこで途切れ 沈黙が続いた後
大きく息を吸い込み マヂマヂと私を見ると
「僕が貴女を想ってるからです」
突然の告白に驚き 私は言葉を失い 某然と
立ち尽くしていると 両の掌を横に振りながら
「でも 僕が勝手に自分で想ってるだけだから
それでいいんです ムリなの分ってるから」
「それは私と付き合うのが ムリって事?」
すると小さく頷いて
「だから これを最後に し・よ・うと」
その後の言葉は涙で かき消された
私は 何も言えず ただオロオロしているだけ
その何も言わない私の それが答えだと
受け取ったのか 涙を拭い顔を上げると
「それじゃあ さようなら 楽しかったです」
そう言い残すと 甲斐君は走り去った
そして私の瞳にも 涙が溢れ出した
まだ何も言ってないわよ
それなのに何よ 勝手に・・・勝手に・・・
涙が頬を伝いボロボロ零れ落ちた
私はベンチに座り 両手で顔を覆った
この時初めて気付いた
私は甲斐君の事が 好きなんだと
甲斐君は 私を見て 私を知ろうとしてくれた
そんな甲斐君の想いに気付かなかった
いや気付こうとしなかっただけかも 知れない
そう 自分に正直になるのが怖かっただけ
そして 失って 初めて 気付いた
甲斐君の 大切な想いを 傷つけた事に
それがどれだけ 酷い事なのかも
私は 涙を拭いながら 目の前を行き交う
人達を ボンヤリと眺めた
一人 遊園地のベンチで・・・




