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乗りたい物

私は恥ずかしさのあまり この場に居る事が


出来ず 強引にメモを渡して その場から


走り去ったのでした・・・





そして日曜日 私がメイクをして 香水を軽く


吹きかけて 部屋を出ると


母がニヤニヤしながら 私を一瞥すると


「ふ〜ん 気合入ってるじゃない」


「そ そんなんぢゃないから!」


「まあ 頑張ってね〜」


「な 何を頑張るのよ!」


「まあまあ いってらっしゃーい」




ニヤニヤする母に 見送られながら


私は家を後にした


「母さんったら そんなんぢゃないのに!」


私はブツブツ呟きながら 待ち合わせの場所に


足を運んだ


確か あの辺りだったと思うんだけど


甲斐君が指定した場所は 恋人達が


待ち合わせの場所によく使う 像の下だった





像が見えて来た時 その下でソワソワしてる


甲斐君の姿が 見えた


その姿が 可笑しくて 吹き出しそうになった


遅れてもないのに またあんなにソワソワして


「甲斐君〜 待った〜?」


右手を高らかに上げて そう叫ぶと 急に


立ち止まって 私の方を見ながら


「いえ 僕も 今来たとこです」


ニッコリ笑ながら そう言ったのを見た 私は


甲斐君の隣に駆け寄り


「じゃあ 行きましょうか」


顔を覗き込んで そう言うと 甲斐君は驚き


顔を真っ赤にして頷いた




「ところで今日は 何処に行くの?」


「新しく出来た 遊園地に行きませんか?」


「新しく出来た 遊園地?」


あそこは行きたかったのよね でも ここで


喜ぶと子供っぽいなって 思われないかしら


等と下らない事を考えてると


「遊園地 あまり 好きじゃないですか?」


不安そうな顔つきで 覗き込んだ


「大丈夫よ 行きましょう」


「良かった 子供っぽい場所は 嫌いかなって


心配だったんですよ」


「悪かったわね 子供っぽくて」


「え?何か言いました?」


「いや 何でもないわ 行きましょう」




そして甲斐君の車に乗り込み 走る事三十分


遊園地に着き 車から降りて人の多さに驚いた


「す 凄い人ね・・・」


「そ そうですね・・・」


私達は気を取り直し フリーチケットを


買って 遊園地に入場した


案の定 遊園地の中も 人でごった返していた


「どれから 乗りますか?」


「甲斐君が乗りたいので いいわよ」


「じゃあ あれにしましょうか」


甲斐君が指差した先は 私が気になっていた


観覧車だった




観覧車の列に並び 十分程で 私達の番が来た


私はいそいそと乗り込み 席に座った


そして ガタンと言う音と共に 動き始めた


観覧車の中から見下ろす景色は絶景で


暫く我を忘れて 景色に見惚れていた


そしてふと甲斐君を見ると 背筋をピンと


伸ばして座り 小刻みに震えてる 両手の拳を


足の上に置いて ジッと前を見ているのに


気づいた




「甲斐君 景色見ないの?絶景よ?」


「あ いや 高い場所は 苦手で・・・」


「え?高所恐怖症?」


「そうとも 言います」


「変なの 甲斐君が乗りたいって言ったのに」


「あ いや これに乗りたそうだったから」


「え?私が?」


すると黙って頷き 再びジッと前を見ていた




私は自分が 恥ずかしくなった


自分の事しか考えてない 自分が・・・


甲斐君は自分が高所恐怖症で 高い場所は


苦手なのに 私が乗りたそうにしてるのに


気付いて あえて観覧車を選んでくれた


自分の事より 私の事を考えてくれて・・・


「ありがとね」


「え?何でしょう?」


「何でもないわ ほらもうすぐ降りられるわ」





私達の乗っていた観覧車が 降り口に着いた


そして係員が扉を開けてくれて 私が降りた時


その後ろで降りた甲斐君が 突然倒れたのです


「甲斐君!甲斐君!大丈夫?」


辺りは騒然として 担架が運ばれてきた


私も甲斐君の付き添いで 一緒に医務室へと


向かった




先ず 甲斐君が医務室に運ばれて 私は廊下の


ベンチに座り 診断の結果を待った


暫くして 先生に呼ばれ 私は医務室に入った


「甲斐君の様子はどうですか?」


「ただの睡眠不足だ 横のベッドで寝とるよ」


「そうですか」


私はホッと胸をなで下ろして 先生に甲斐君が


高所恐怖症だったのを 知らずに観覧車に


一緒に乗った事を告げた




すると成る程なと 頷きながら話し始めた


「どんな病気にも 度合いがある様に


高所恐怖症にも あってな 彼はかなり重度の


様だな」


「重度?それは かなり酷いって事ですか?」


「そうじゃないと 降りた途端に 倒れたりは


しないだろう」


「それならそうと 何故言わなかったのよ」


「何を言ってるんだい?そんなの決まってる


じゃないか」


「え?」


「君と一緒に乗りたかった それだけだよ


じゃあ 彼の側に居てあげなさい」


先生は私の肩に手を置いて 医務室から


出て行った




仕切られたカーテンを開けて 椅子をベッドの


側に持って行き 腰掛けた


ス〜ス〜と静かな寝息をたてて 幸せそうに


甲斐君が 眠っていた


「どうして甲斐君は 私なんかの為に


そんな必死になれるのよ」


そして聡子の言った事を思い出していた


本当に大切な物は 目に見えないか・・・


確かに そうかも知れないわね


甲斐君の寝顔を見ながら そう思ったのでした























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