シワくちゃのチケットと報われない想い
「あ 母さん?どうぞ」
すると部屋の扉が開き 半ニヤの怪しい笑顔を
浮かべて 私をジッと見ながら
「映画 どうするの〜??」
そう言って 私に詰め寄ってきたのです・・・
「ちょ ちょっと待ってよ 母さん」
詰め寄る母さんを なだめて説明した
「成る程ね でそれが二枚のチケットね」
「うん そうなの」
母さんがチケットを眺めながら
「そして一枚が シワくちゃなのね 成る程」
「え?どうしてか 分るの?」
「え? お姉ちゃんは 何故か 分らないの?」
「うん 分らない」
「う〜ん そっか 分らないか〜」
「ねえ どうしてなの〜」
すると母は シワくちゃのチケットをポケット
に入れて 私をジッと見ながら 口を開いた
「甲斐君はね 今みたいに シワくちゃの
チケットをポケットに入れて お姉ちゃんに
渡す機会を 常に窺ってたのよ きっと」
「え?」
驚いた私には お構い無しに 母は話を続けた
「ひょっとしたら お見舞いに来た時も
ポケットに入れてたかも しれないわね」
私は何も言えず ただ黙って聞いていた
「会社でも 周りの目があって 中々渡す事が
出来ずに ポケットでただ 握り締めるだけで
そして気付いた時には シワくちゃになった」
母はポケットから シワくちゃになった
チケットを私に差し出した
差し出された そのシワくちゃのチケットには
甲斐君の想いが 詰まってる様に思えて
涙が 溢れそうになった
「だけど二枚渡されたんだし 早く仲直りして
聡子ちゃんでも 誘えばいいんじゃない?」
聡子の名前を聞いて 一瞬ギクリとしたが
そうね 甲斐君とは無理だし そうしよう
そう思った時 母が立ち上がった
そして部屋から出て行こうと 私に背を向けて
立ち止まると
「その映画 もう直ぐ終わるから 行くのなら
急いだ方がいいわよ 」
「え!?そうなんだ どうせなら もっと早く
渡してくれたら よかったのに〜」
「お姉ちゃん それ本気で言ってるの?」
「え?」
私を見た母が 睨んでる様に見えて 驚いた
「そのチケットは ずっと渡せなかったから
そんなに シワくちゃに なったんでしょ?」
「あ う うん」
「甲斐君は チケットを買って 何日も何日も
渡せなくて 悩んで 苦しんだと思うわよ」
「そ そうよね」
それなのに 私はもっと早く渡してくれたら
とかって 自分の事しか考えず サイテ〜ね
私が俯き 黙ってると 母は部屋を出る前に
「まあ 分ったならいいけど でも どんな事に
したって 報われない想いって 辛いわよね」
そう言い残すと 部屋を出て行った
私は ベッドに転がり シワくちゃの
チケットを眺めながら
「報われない 想いか・・・」
そう呟いたのでした・・・




