Sideセシリア 晶師匠の恋愛教室
「全くもう……、何でいつもこうなるのかしら」
「きっと本気で心配されるのが照れくさいんだろう」
晶が面白いことを言う。
「……それ、本気で言ってるの?」
ありえないわ。私を笑い殺す気なの?
「……すまん。ないな」
でしょうね……。
「はぁ……」
「ため息付くくらいならもう少し優しくしてやったらどうなんだ?そんなんじゃいつまで経ってもこのままだぞ」
「何で私たちがいつかは付き合いたいみたいな話になってるのよ……」
「違うのか?」
晶が意外そうな顔で聞いてくる。
そんな顔をされるほうが意外だ。
「確かに彼は大切な仲間だけど、男として惹かれる理由がないわ」
そうよ。スケベだし、馬鹿だし、すぐに突っ走るし、女の子に話しかけられただけで誰にでもすぐに惚れちゃうし、スケベだし。
もし忍をステータス表示すればこんな感じになるだろう。
忍
性別 男性
職業 ゲーマーLv100
知性 1
誠実 1
優しさ 4(くらいはあげてもいいかも)
ルックス ?|(不明)
財力 推定1|(前作でも課金装備しているところを見たことがない)
スキル ポジティブLv100 うっかりLv100 お調子乗りLv100 惚れっぽさLv100 スケベLv100 ドエムLv100 Exぼっち
果たしてこんな男に惚れる女がこの地球上にいるだろうか?
確かに私のことを生き返らせてくれはしたけど、あれは忍を庇って死んだものだからノーカンにしてもいいと思う。
いきなりプロポーズされたときは雰囲気に飲まれてちょっとだけ格好いいかもと思わなくもなかったけれど、多分それは私が男馴れしていないからであって、今まであったことをどんなに思い返して見ても彼に惚れる要素はない…………と思う。
「無理に理由を探そうとしている時点で惹かれてるようなものだ。それとも姫はゲームにあるみたいな『ステータス』で人を好きになるのか?」
「うぐ…」
「例え理由がなくたって理屈で人を好きになるよりいいじゃないか」
「それは……」
「それに早くしないと美月や美羽やローズさんに取られるかもしれないぞ。あいつ惚れっぽいからなあ」
「一体みんなどこを見ているの?心の底から眼科に行くことをお勧めするわ」
あの忍がそんなにモテるなんて世の中間違ってると思う。
でも確かにその3人は忍に惹かれているように思えなくもない。それにあのマイスタークリスだって忍のことはお気に入りだ。
「美月は今まで忍ほど親しい男がいなかったっていうのが大きいだろうな。美羽はとことん面白さを重視するタイプだし、ローズさんは自分を取り繕わないで済むところに惹かれてるんだろう」
「今さらっと爆弾発言が出たような気がするんだけど…」
確かに美月はいいとこのお嬢様って感じがする。私の友達にも美月みたいなタイプはいた。
美羽に限っては言わずもがな。
ローズは……そうだったんだ。
「そして姫と美月に共通しているのは、ダメな男を放っておけないところだな」
「人をだめんずうぉーかーみたいに言わないでよ!」
全く失礼な。それとこれとは完全に別問題として割り切る自信が私にはあるというのに。(※自分は大丈夫と思っている人に限って…)
「とまぁ全部推測なわけだが、後々後悔することのないようにな」
「後悔なんてしないわ」
そう。後悔なんてするはずがない。
「そしてこの会話はイージスのみんなに筒抜けなわけだが」
晶の言葉で我に返って周囲を見ると、まだギルドメンバーはみんなこの場に留まっていた。
美月も美羽も含めて。
「たった今後悔したわ……」
なぜか笑みを浮かべている美月と美羽を見て思った。
心の底からね……。
そこへ今まで黙って聞いていた美羽が小悪魔のような笑みを浮かべて言った。
「マスターがいらないなら、ボクが忍のことをもらっちゃおうかな」
いつものようにそれを嗜める美月。
「ダメですよ、美羽。それだったら私が忍さんのことをもらいます」
しかしその言葉はいつもとは違っていた。
その意味を理解してしまった瞬間、私の頭の中は真っ白になった。
そこから先自分が何を言ったのか覚えていない。
そして気がつけば二人によって定番のギャグで締めくくられていた。
「「どうぞどうぞ」」
この流れは……うん、分かっている。
私はきっと取り返しのつかないことを言ってしまったのだろう。
はぁ……忍じゃないけど鬱死したい。




