表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/67

Sideセシリア 待ち望んでいたもの

 それはデスゲームに囚われてから一週間後のできことだった。

 デスゲームに囚われた私はレベルを上げながらも、以前のゲームで仲間だったギルドメンバーたちを探し、ギルドに勧誘していっていた。

 なぜ過去にギルドを勝手に去っていった私がそんなことをしているかというと、晶たちに頼まれたからだ。

 いや、頼まれたからというのは少し違うかもしれない。

 イージスの盾が再結成されたのは何も攻略を目指したからではない。


 晶は私を前にして言った。

 当時のギルドメンバーたちが突然こんなことになって不安に駆られている。例え攻略を目指さなくても、気心の知れた当時のギルドメンバーたちで再びギルドを結成すればみんなの不安も多少は紛れるのではないかと。


 それには私も大賛成だった。

 なぜなら私もあまり面識がない人とこのデスゲームの世界でパーティーを組むことに不安を感じていたからだ。


 とはいえ私がギルドマスターである必要はない。

 だから勝手に辞めていった私より晶か、もしくは他の誰かがギルドマスターをすればいいんじゃないかと提案をしたが、その場にいた全員に却下されてしまった。

 やっぱりギルドマスターはセシリアでないと、と。

 何がやっぱりなのかさっぱり分からなかったが、結局は無理やり多数決で押し切られることとなってしまい、再びギルドマスターをする羽目になった。


 それから私たちは掲示板を使って元イージスのギルドメンバーたちに呼びかけることで、少しずつその数を増やしていった。

 当時のギルドメンバーはほとんどがこのデスゲームにログインしていたようで、みんな不安を感じていたのか、すぐに集まってきた。

 呼びかけても来なかったのは当時ギルドの斬り込み隊長だった零、そしてあのお調子者だった初心者の忍、その他数名。


 その人たちは幸運にもデスゲームにログインしなかったのか、もしくは別の仲間たちと攻略を始めているのだろうと思っていた。


 そう、この日までは。



 私と晶は消耗品を補充するため、日が沈んで薄暗くなってきた街中を歩いていた。

 周りにはすれ違っていくプレイヤーたち。その見慣れてしまった光景に気に留めるようなこと何もない。

 しかし私は一人のプレイヤーとすれ違ったときに違和感を覚えた。

 何かを感じたとったというわけではない。その逆だ。

 全く何も感じなかったのだ。


 周囲には隠しているが、私のパーソナルスペースは人よりもかなり広い。

 それはゲームの中でかなり親しい晶に対してでさえ、3メートル以上近づかれると不安を覚えるほどだ。

 それが今すれ違ったプレイヤーには全く働かなかった。

 僅か五十センチもない距離をすれ違ったにも関わらずだ。

 私は思わず振り返った。

 するとそのプレイヤーも足を止め、こちらへと振り返って目を見開いていた。


 私がそのプレイヤーを意識することで、ターゲット機能が働き、頭上にプレイヤー名が表示される。



 ……………………零。



 以前のヒューマンだった外装とは異なり、ダークエルフとなっていた。

 しかしその手に持つ斧槍。そして何より私のパーソナルスペースに入っても不快に感じない者の中でヴァルキリーヘイムにログインしている可能性のある人物は一人しかいない。

 間違いなくあの零だ。


「零!」


 私は嬉しくなって零の元へと駆け寄っていった。


「セシ……リア……」


 零は驚きをあらわにしている。


「そう、セシリアよ!今まで一体どうしていたの?てっきり零はゲームにログインしていないものとばかり思っていたわ」


 後ろから晶も駆け寄ってくる。


「零、久しぶりだな。晶だ。覚えているか?」


 晶が気さくに話かけると零は無言で頷いた。


「お前たちまた一緒にいるのか?まさか……」

「ええ、また昔の仲間たちとギルドを作ったのよ。大吾や忍はいないけれどよかったら零もまた一緒に…」


 私は当然零も一緒に来てくれるものだとばかり思っていた。

 だって彼は……。

 しかし言葉を聞いた瞬間零の表情が変わった。


「また……ギルドを作った……だと!」


 突然零に鎧の襟元を掴まれ、すごい力で引き寄せられる。

 私は咄嗟の出来事に何も反応することができなかった。


巫山戯(ふざけ)るな!お前の無責任な行動がどれだけ……あいつを……」


 無責任な行動?それってもしかして私がゲームをやめたこと?それにあいつって……?


「止めろ、零!一体どうしたんだ!」


 晶が零の手から私を解放しようとするが、ビクともしない。


「笑わせる!そのお前がまたのうのうとお友達ごっことはな!本来ならこの場でズタズタに切り裂いてやりたいところだ!」


 零の目を見て息を飲み込んだ。彼から感じるのは……明確な敵意。

 信じられない……あの零が……。


「ハッ、もういい」


 そう言うと零は私を突き放した。


「零……なんで……」


 訳が分からなかった。


「一つだけ良い事を教えておいてやろう。お前のことを憎んでいるのは俺だけじゃない」


 憎んでいる?あなたが……私を?


「勝手に仲良しギルドでも作って偽善者ぶるがいい。精々《せいぜい》PKには注意することだな!」


 それだけ言うと彼はきびすを返してこの場を去っていった。


 どうして……零。

 私の唯一の幼馴染にして親友だった彼……いや、彼女……。


 そう、彼女とは生まれた頃から現実世界リアルで付き合いがあった。

 家が近く、親同士も親友で、同い年だった私たちは気がつけば本当の姉妹以上に仲良くなっていた。

 私が前作のヴァルキリーヘイムを始めたときも、彼女は仕方なく付き合ってくれていた。


 しかし私がゲームを辞めた頃から次第に疎遠となっていく。

 理由は……多分男ができたからだと思う。

 私がヴァルキリーヘイムを辞めても彼女はずっと続けているみたいだった。

 しかしあるときから外出が目立つようになりはじめる。

 彼女の家に行っても逢えないのだ。

 私たちには二人とも門限があったため、夜遅くまでというわけではないみたいだったが、それでも心配になって聞いてみた。


 すると彼女はこう答えた。支えてあげたい人がいる、と。


 これはいい人ができたんだなと思い、嬉しくなってその人がどんな人か聞きだそうとしたけれど、彼女は言葉を濁すばかりで答えてはくれなかった。

 それからだったろうか。次第に彼女から避けられているように感じるようになったのは。


 そして月日が経ち、春が来て、私たちは新しい生活へと踏み出す頃には会うことがなくなっていた。

 それから何度か彼女と連絡を取ろうとしたが、向こうの両親も困ったような笑みを浮かべるだけで、教えてはくれなかった。


 ヴァルキリーヘイムがリメイクされて始めようと思ったのは、確かに懐かしさによるものもあった。

 だが、もしかすると彼女と再びヴァルキリーヘイムで出会えるかもしれない。昔見たいに仲良くなれるかもしれない。そう思ったからだ。

 彼女と再び交友を取り戻す。その願いがこのときもろくも崩れ去ってしまった。


 何が彼女をあそこまで変えてしまったのか……私がゲームを辞めてしまった所為?それとも支えたいと言った人の……。


 分からない……だからこそ私は今日も戦い続ける。


 いつの日か再び彼女と分かり合える日が来ることを信じて。


 私はインベントリを開いて不備がないことを確認すると、宿屋の自室を出た。


 するとそこにはひまわりのような笑顔を咲かせたあいつがいつものように待っていた。



「姫!今日こそビフレスト攻略だ!」


「こら、らないの。仕方ないわね……死なないように守ってあげるわ」




 支えたい人……か。私にはまだ少し分からないけれど、守りたい人はたくさんできたんだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ