表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/67

第28話 ヘルガイズ討伐②

「それではこれより『ヘルガイズ』の討伐を開始する!タンカー班前へ!」


 姫を先頭に俺たちは大広間へと足を踏み入れた。

 その瞬間俺たち反応したヘルガイズがこちらに視線を向けて咆哮ほうこうを上げた。

 姫がタンカーの発揮できる最高のスピードでヘルガイズへと接近してスキルを発動する。


「ヘルガイズ!『あなたの相手は私よ!』」

「ほらっ、『こっちだよ!』」「お前は『こっちだ!』」


 姫の『挑発タウント』に追随して美羽ともう一人のサブタンカーがヘルガイズの取り巻きであるトロールサブリーダーたちの注意を惹きつけた。


 俺はタンカーたちに狙い(タゲ)がいったのを確認すると、『ダッシュ』を発動させてヘルガイズの遥か後方へと回りこみ、頭上へと剣を掲げ上げてスキルを発動した。


「世界を断ち切る力をこの手にッ!『オーバードライブ!』」


 掲げた剣が徐々に赤い波紋エフェクトを帯び始める。

 『オーバードライブ』とは、最大で5秒間力を溜め続けることにより、次の一撃の攻撃力を1.5倍にまで増幅することができる両手剣のアクティブスキルだ。ただし、力を溜めている間は一歩も動くことができない。

 五秒が経過し、はっきりと見えるようになった赤い波紋を放つ剣を肩に担ぐように構えなおした。


 その間にも、ボスの取り巻きであるトロールサブリーダーたちがアタッカー班の集中砲火に合い、見る見るうちにHPを減らしていく。


 ここは我慢だ。既に増幅限界まで力を溜め終えているが、俺はネームレスさんから出される『ヘルガイズ』への突撃指示をじっと待った。


 そしてさらに十数秒が経過したところでアタッカー班がトロールサブリーダーたちを二匹とも倒し切った。


「ターゲット変更!ヘルガイズ!」


 ネームレスさんの指揮が飛ぶ。

 よし!ついに来たッ!

 委員長へと視線を向けると、こっちを見て子くりと頷いたのが見えた。

 準備は完全に整った。

 俺たちパーティーのデビュー戦を華々しく飾ってやろうじゃないか!


ッ!」


 『ダッシュ』を発動してヘルガイズの背後へ駆け出す。そして”俺たち”はスキルを発動した。


「『オーガパワー!』」

「『換装かんそう!』」


 委員長の覚醒魔法『オーガパワー』を受けた瞬間、俺の筋力は爆発的に跳ね上がり、手に持っている武器が一瞬にして摩り替わった。

 パーティー結成により委員長は『細剣さいけん』を『覚醒魔法』へと入れ替えることができたが、俺も『気配察知』を委員長に任せて他のスキルに入れ替えていたのだ。

 それも美羽が得意とする『チェンジウェポン』へと。

 今の俺は『パワーブースト』と『オーガパワー』の効果を受けて筋力が三十五という驚異的な数値にまで跳ね上がっている。だからこそ俺は”これ”を振るうことができる。クリス作、必要筋力三十五という巨大な両手剣『銀撃ぎんげきのドラゴンデストロイ』を。

 初めてこの剣を目の当たりにしたとき、俺は自分の目を疑った。それほどにでかかったのだ。

 よく自分の身の丈ほどの剣というものが漫画の世界には良く出てくるが、身の丈なんてレベルじゃない。刃渡り二.五メートル、刃幅五十センチがこの化け物ソードの大きさだ。 そして俺は『オーガパワー』のかかっているほんの5秒間だけほとんどペナルティーを受けずに振るうことができる。

 喰らうがいい!『オーバードライブ』と『オーガパワー』そして『銀撃ぎんげきのドラゴンデストロイ』によって執行される”絶対的な暴力”という名の断罪をッ!


要塞破壊斬フォートレスブレイカーッ!!!」


 『ダッシュ』のスピードに乗って『ターンステップ』による回転力を加えた一撃がヘルガイズへと襲い掛かる。

 ドラゴンデストロイが凄まじい斬撃エフェクトを撒き散らせながらヘルガイズの肉を断ちきり、目に見えてHPを削り取る。

 その瞬間ヘルガイズの狙い(タゲ)が俺に変わった。

 しかしこちらも引くつもりはない。

 最初の一撃で『オーバードライブ』の効果は切れてしまったが、『オーガパワー』が切れるまでにはまだ時間がある。


四秒


「ハッ!たぁっ!」


 袈裟懸けに振り下ろし、右へと薙ぎ払ったところでヘルガイズが腕を引いて俺に向かって拳を叩き付ける。


「『スケルトンナイトを生贄に捧げる!代償魔法サクリファイスッ!!』」


 しかしそれは鎧を着た骨の騎士の幻影によって防がれ、ヘルガイズの拳が勢いを失う。


三秒


「エクスリッパーーァァァッ!!!」


 身体を大きく弓なりにしならせ、ヘルガイズの腹部を目掛けてエックスの文字に剣を切り裂くが、ヘルガイズは僅かなりともひるんだ様子もなく、腕を大きく振り上げた。


二秒


 その腕が俺に振り下ろされるよりも早く美羽がスキルを行使する。


「お兄ちゃんはやらせないよ!『騎士の誇り(シュヴァリエール)!』」


 スキルが発動すると美羽の幻影が俺と重なりあった。

 ヘルガイズの攻撃が俺たち二人に襲い掛かる。

 腕を叩きつけられた衝撃を歯を食いしばって耐える。本来なら耐えられない衝撃も美羽と二人でなら耐えられる。

 そして俺のHPは僅かたりとも減ってはいない。

 俺がヘルガイズから受けるはずだったダメージが余すことなく美羽へと転嫁てんかされたのだ。

 心配が募る。

 だが俺の役目は少しでもダメージを稼ぐことだ!ここは美羽とローズさんたちを信じるしかない!


「『ローリングストオオオオオオオオムッ!!!!』」


 俺はボスから攻撃を受けることも厭わず、その場で『ターンステップ』を発動して回転力を増した状態から両手剣のアクティブスキルである『ローリングストーム』を発動した。

 周囲の風を巻き込みながらも、自分を中心に回転斬りが何度も繰り出される。

 大気を切り裂く剣からも真空波が発生し、広範囲に渡って攻撃が広がっていく。

 一見秘技かざぐるまと同じように見えるこのスキルはアクティブスキル特有のシステムアシストによってその性質は全く異なるものとなる。

 なぜならばこの『ローリングストーム』は低威力で八ヒットする範囲スキルだからだ。

 ゆえに本来であれば雑魚に対してはそれほどダメージを与えることができない。

 しかし相手が巨大で、こちらの攻撃力が敵の防御力を圧倒的に上回るという条件に限って『ラインブレイク』よりもさらに突き抜けたダメージを叩き出すことができるのだ。


一秒


 俺はシステムアシストに動かされるままひたすら剣を手に回り続ける。攻撃の範囲内にいるヘルガイズは範囲攻撃による複数ヒットを連続で受け続ける。

 ドラゴンデストロイとオーガパワーで強化された一撃は決して軽いものではない。

 ボスのHPが凄まじい勢いで減っていく。

 しかしボスはそんな激しい攻撃を受けながらも再び腕を振り上げた。


零秒


 『オーガパワー』が切れた瞬間、俺の必要筋力を遥かに超えた『ドラゴンデストロイ』の重みがずっしりと腕に加わってくる。

 さらにフィニッシュスキルに分類される『ローリングストーム』が発動を終え、俺は技後硬直を受けて無防備な状態のまま動けなくなってしまった。

 そこへボスの強烈な一撃が振り下ろされる。

 俺は回避することもできず、ただ黙ってボスの攻撃を受けるしかなった。

 ダメージが美羽に転嫁され、耳元から苦悶の声が聞こえてくる。


「「『エクストラヒール!』」」


 ローズさんたちの詠唱が聞こえて来る。

 良かった。まだ美羽は生きている!


「『こっちよ』。ダメだわ!まだ狙い(タゲ)がうつらないわ!」


 姫が『挑発タウント』を使うも、敵愾ヘイト値を大幅に上げてしまった俺から狙い(タゲ)を取ることは叶わなかった。


マイナス一秒


 未だ動けない俺をヘルガイズが両手で掴み上げる。


マイナス二秒


 ここで硬直が解けるがヘルガイズの力から逃れることが出来ず、思い切り地面へと叩き付けられる。

 そしてそのダメージも美羽へと転嫁する。


「かはっ!」

「「『エクストラヒールオール!』」」


 『エクストラヒール』の再使用時間が回復していないため、パーティー全員を回復する『エクストラヒールオール』で代用しているようだ。

 これ以上は回復が間に合わない可能性がある!

 ダメージのない俺はすぐに起き上がり、スキルを発動した。


「『換装かんそう』!」


 今まで持っていたドラゴンデストロイが消え、必要筋力22のシルバーブレードが再び俺の手へと戻ってくる。


「目が光っています!」


 委員長の声が聞こえた。

 ボスに目を向けると目を光らせ腕を広げて体を大きくひねらせていた。

 これは……まさか俺の『ローリングストーム』と同じような多段ヒットの範囲攻撃か!?

 ボスの攻撃合わせてスキルを発動する。


「『ガードインパクト!』『弐連ニレン!』ぐっ!『参連サンレン!』『肆連シレン!』『伍連ゴレン!』『陸連ロクレン!』『漆連シチレン!『捌連ハチレン!!』」


 思った通りだ。二回目はダメージ発生タイミングが分からず食らってしまったが、あとは二回目のダメージ発生タイミングと全く同じ間隔でダメージが発生している。

 それに合わせて上手く『ガードインパクト』で迎撃すれば一発一発のダメージが小さい分、完全にダメージを打ち消すことができるようだ。

 そして八回目のダメージ判定をしのぎきってそのまま攻撃へと繋げながら美羽に声をかけた。


「美羽!大丈夫か!」

「うん、さすがローズさんたちだね。ボスのダメージも凄かったけど全然死ぬ気はしなかったよ」


 そんなはずがないだろう!

 『騎士の誇り(シュヴァリエール)』のダメージ判定は俺の防御力が適用される。防具がシルバー製になったとはいえ、重装備でもなく盾もない俺が硬いわけもない。

 それにあの美羽の槍を持つ手が震えている。

 今までにそんなことは一度もなかった。

 だというのに、気丈に振舞いやがって……。


「あはっ、凄いねボクたち。この調子なら次で決着がつくかも」

「ああ……ああっ!俺たちは凄い!次は一撃で決める!もうお前にダメージをいかせることはない!」

「もう、何言ってるのお兄ちゃん。そんなことを言ってボクが惚れちゃったらお兄ちゃんのことを掘っちゃうよ?」

「ウホッ!?」


 ヘルゲイズの打撃攻撃を『ターンステップ』で華麗に避けながら剣を大きく薙ぎ払う。

 ヘルガイズのHPバーに目を向けると、もう半分を切ろうとしていた。


「いいかげんに『こっちを向きなさい!』」


 姫の何度目かの『挑発タウント』によってようやくヘルゲイルは姫へと狙い(タゲ)を移した。

 姫の敵愾ヘイト値が俺の敵愾ヘイト値を上回ったのだ。

 よし!これで遠慮なく背後から攻撃を叩き込むことができる!

 後衛アタッカーたちによる攻撃の雨が降り注ぐ中、俺も無我夢中で剣を振り回した。

 俺たちの激しい攻撃を受けてヘルガイズのHPがジリジリと僅かながら減っていく。

 俺たちの与えるダメージがヘルガイズの自然回復を上回っているのだ。


「忍君!さっきのはもう一度できるのかい!」

「ああ!『オーガパワー』の再使用時間は3分だ!再使用時間が回復し次第いける!」

「分かった!それじゃあ次に使うタイミングは僕に任せてくれ!」

「了解!ハッ!たぁっ!パワーブレイクッ!」


 左右へと切り払った後、『ダッシュ』を発動して一歩踏み込み、袈裟懸けに叩き切る。


「目が光ったわ!」


 ヘルゲイズが両腕を大きく振り上げた。今度は単体攻撃か!?


「忍!これは任せなさい!『ファランクス』」


 ヘルゲイズの両腕が姫の盾と激しくぶつかり合い、火花を散らしながらそのまま地面へと叩きつけられた。

 破砕音とともに地面が大きく砕け散る。

 しかし姫は僅かにノックバックするだけで踏みとどまっていた。


「私の役目は仲間を守ること!この程度どうってことないわ!『さぁ、かかってきなさい!』」


 さすが姫だ。敵の攻撃を一身に受けるその気高い姿はまさに戦乙女そのもの。

 これは負けていられない!


「其の血を咲き散らせ!我流滅殺奥義!百花狂乱ひゃっかきょうらん!!!」


 『ダッシュ』を発動して敵を横切るように切り払い、『剛脚』で地面を蹴って急制動をかけ、『ターンステップ』で方向転換しながら『ダッシュ』を発動して敵を切り払う。

 このルーティンを素早く繰り返すことにより斬撃エフェクトを激しく舞い散らせ、あたかも血で花が咲き乱れているかのように演出していく。


「うおおおおおおおおおおおお!!!!」


 複数のスキルを短時間の間に何度も多様するため、SPが減少は尋常ではない。しかし今回はスタミナポーションを自分でも用意している。

 やがてダメージによるヘイト値の蓄積によりボスの狙い《タゲ》が俺へ移るが……。


「『どこを向いてるの!』」


 『挑発タウント』を使い、姫はすぐさま注意を自分へと引き戻す。

 その隙にスタミナポーションを一本飲み乾すとSPが完全にまで回復した。

 これでまだまだ戦える!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ