旅、偽り
まぁ「キノの旅」のパクリといわれたらそれまでです。
それでも読んでみてもいいというのなら、どうぞ。
旅人は歩く。どこまでもどこまでも……
旅人が道の茶屋でひと休みしていると、中年の男が現れて旅人に軽く会釈をした。
男は旅人と同じ物を注文すると旅人の隣に腰掛け、纏っていた外套を脱いだ。ひどく薄汚れた赤黒い外套だった。
男は改めて旅人に会釈すると、旅人へこの周辺の街や村について情報交換を持ちかけた。
旅人が付近の街や村の事を伝え終えると、今度は男が
「ここから数日程のところにある村……。あそこの人達はとても良くしてくれてね」
そう言って、この近くにあるという村について語り始めた。
「彼らは私のような風来坊にさえ、身を削ってまで施してくれたよ。非常に美味しかった……。それにわずかだが……、ほら、こうして手土産まで持たせてくれてね」
渡されたズタ袋の中身を旅人が見終えると
「口数は少なかったが、とても優しい人たちだった……。これからも彼らのような人達に出会えるといいんだが……」
そう話を締め括り、男は注文した物には手もつけず立ち上がった。
男は旅人の分の支払いも一緒に済ませると
「……なに。親切のお裾分けだよ。礼ならさっき話をした村を訪ねてやってほしい。そうすれば彼らもきっと喜ぶだろう」
男は旅支度を終えると、最後に旅人へこう訊ねた。
「――そうそう、近くの鍛冶屋まではどのくらいかかるかな?」
――旅人がその村を訪れると、そこに優しい人たちはいなかった。
「人を喰った話……」
旅人は独り呟くと、しばらく目を瞑り、そのまま村を後にした。
旅人は歩く。どこまでもどこまでも……
こんな駄文に付き合ってくださった方に感謝。
最後にひとつ。この話、何が「偽り」なのか。
答えは皆様の御心の中に、ということで。それでは失礼いたしますー。