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2人の奇妙な利害関係

このページにある物語は、「かなり」偏っています。

同人要素やエロゲ、BLという言葉に嫌悪感を抱く方は

回れ右で引き返すことを推奨します。


内容に直接、性的な表現はないような気がしますが、

間接的にはそういった表現が文中に度々登場する、


かもしれません。


あなたが無理して気分が悪くなったとしても、

霧原菜穂は損害責任を負う気はありません。


そして、私は別に欲求不満じゃありません。

無駄に深読みしないでください、妄想を膨らませて勘違いしないでください。


加えて、

1人で夜の時間を愉しめるような内容ではありません。


フィクションとノンフィクションを一緒にしない方のみ、本文をお楽しみくださいませ。

『わ、私……先輩のことが、好きですっ!!』

 彼女は少し上ずりながらも、自分の思いを目の前の相手にぶつけた。

 人気のない放課後の教室。しんと静まり返り、西日が差しこむ絶好のシチュエーションの中、主役の二人の吐息だけが響く。

 ポニーテールが似合う、一つ下の少しおっちょこちょいな後輩。何に対しても一生懸命で、先日の試合では努力でレギュラーを勝ち取った。その時の特訓に付き合わされたのも、今となってはいい思い出だ。

『真鈴さんのことは分かってます。でも、私だって……負けないくらい好きなんです!』

 彼女が自分を慕っていることは知っていた。だけど、あえて気付かないふりをしたんだ。

 ――俺の中には、別の女性の姿もある。俺は二人を天秤にかけたんだ。

 彼女は俺のそんな気持ちを理解してくれて、あいつより先に、こうやって告白してくれたんだ。

 優しすぎる、そして……彼女にそこまでさせてしまった自分が情けない。

 夕日よりも顔を真っ赤にして真っすぐこちらを見据える彼女の瞳は、潤んでいるようにも見えた。

『お願いします……答えを、聞かせてくださいっ……!』

 答え、ここではぐらかすのは彼女に対する冒涜だ。

 だから、俺ははっきり伝えなければならない。

 彼女に、自分の出した答えを。

 それは――


「……うぅ、ごめんね花梨ちゃん。今回は君ルートじゃないんだよぉぉ!!」

 私は断腸の思いでクリックする。

 『ごめん、君の気持は嬉しいけど、俺はやっぱりあいつが好きだから』という選択肢を。


 その後、1時間かけて幼馴染の真鈴ちゃんルートへ突入した(途中のミニゲームで手こずった……)私は、再度、画面に出てきた選択肢で悩んでいた。

「ねぇ……どうする?」

 画面の向こうにいる彼女が、色っぽい目線で問いかける。

 男の1人暮らしにホイホイあがりこんできた彼女は、間違いなく今夜のメインディッシュ。

 それは分かっているけれど……無意識のうちに、パイプ椅子の上で胡坐をかいていた。目の前にある選択肢は二つ。


 服を上から脱がせるのか、それとも下から脱がせるのか。


 直前でセーブして、後から差分を回収する。要するに、結果的には両方の選択肢を選ぶことになるのだ。

 だけど、悩んでしまうんだなぁ、これが。

 どちらを先にするべきか……。イヤホンのコードを人差し指でいじりながら、考える。

 上か、下か……これは重要なファクターだ。

 真鈴ちゃんはスタイル抜群の世話焼き幼馴染だ。上を先にすればたっぷりご奉仕、下を先にすればこっちがご奉仕、という展開が待っているはずだ、そうに決まっている、それじゃなければ許さない。

 普段の私ならばまず先に上を脱がせるクリックなのだけど……なぜだろう、今日は何となく決めかねる。

 悩むこと約3分。舌なめずりをしながらも決められなず……折角なので、同じ空間で本を読んでいる、この部屋の主でもある「彼」の意見を聞いてみることにした。

 耳につけていたイヤホンを右側だけ外すと、くるりと体を椅子ごと反転させて、

「ねぇ新谷氏、上を先に脱がせるのと下を先に脱がせるの、どっちがいいと思う?」


「いきなり真顔で聞くな。それに……どうせ差分を回収するならどっちでもいいだろう?」


 この部屋の主人が読んでいた本から顔を上げ、パソコン用の椅子に座っている私に冷めた声で的確に突っ込んだ。

 あまりにも的確だったので、悔しくなった私は……彼をジト目で見降ろす。

 椅子に座っている分、私の方が位置的な上から目線になる。お互い視力は底辺ギリギリなので眼鏡着用。ノンフレーム眼鏡の彼と、視線が一瞬交錯して、

「あれ、新谷氏……本は? 読み終わったの?」

「終わってないよ。沢城の唸り声が気になるから」

 ため息をつかれた。眼鏡の奥にある瞳が、完全に呆れている。

 彼は腕を組み直し、あたしに向かってもっともな一言。

「どっちでも結論は同じだろ?」

「同じだけど違うの! 上を先にすればおっぱい天国だし、下を先にすれば――」

「あぁもういい。頼むからこれ以上言うな。聞いてる僕が恥ずかしいから」

 赤面しつつ、ひらひらと右手を振った。その視線は最早こっちを見てもいない。

「冷たいなぁ、新谷氏は」

「俺が冷たいんじゃなくて、沢城が無神経だと思う……はいはい終わり終わり、己の欲望のままに好きな方を選んでくれたまえ」

 首までふって話を終わらせようとする彼に、私も我に返って苦笑いを向けた。そんな、いつもの光景。

 私がパソコン上で進めていたのは、18歳未満お断り要素満載のゲーム。言葉を選ばずに率直に言うならエロゲ。

 ちなみに、先ほどまでプレイしていたのは、オーソドックスな学園恋愛コメディ。だけど、SF、RPG、陵辱、ジャンルは問わない。面白そうなら、私の波長に合うなら何でも来いという雑食なのだ。

 ただ、私の波長に合わない場合は、プレイ中にそういうシーンをすっ飛ばす、という暴挙に出ることもある。純粋にグラフィックの美しさやシナリオの面白さで楽しみたい場合は、こういうゲーム最大の売りである濡れ場を豪快にすっ飛ばしたって構いませんとも。第一、女の子の喘ぎ声を聞いて興奮するほど飢えてないし。

 女の私視点だから余計に思うんだけど、こういうゲームのヒロイン、人間的に素晴らしい場合もあったりして。

 料理得意、世話焼き、成績優秀、ナイススタイル。ファッションが可愛ければ参考にしたい、仕草が可愛ければ見習いたい。ただしもっぱら思うだけ。実行できればゲームを見てポッキーをくわえたりしないのである。

 主人公を操作しているリアルな私は、そんな彼女たちと間逆の位置にいるのだろう。伸ばしたことなどない、かろうじて肩付近までのびたゆれるストレートの髪に、さり気なく淵のある眼鏡。特にコレといって特徴のない風貌に、動きやすい格好が好きなので、基本的にTシャツとジーンズ着用。

 そう、こんな私だから……長い髪の毛を可愛くアレンジして(現実的に不可能な髪型の女の子もいるけどね)、普通にスカートをはいている彼女たちを妙に尊敬してしまうのです。

 冬なのに、とか、思いながらだけど。

 言い足りない私の雰囲気を察しているのだろう。彼は強引に話をまとめた。

「まぁ、頑張ってフルコンプ目指してくれ」

「言われなくても」

 そんなこと、言われなくても分かってる。

 私がポッキーをもう一本口にいれると、彼は読書再開。本屋のカバーがかかった文庫本に挟んだしおりを引っ張ると、開いたそのページから読み始める。

 面白いからって大声で笑ったりしないし、そんなシーンだからって1人で興奮したりもしない。基本的にいい人面のポーカーフェイス。

 彼は外見も整っているので、文庫本がオプションとして似合うのだ。知的っぽいというか、インテリっぽいというか。勝手なイメージだけど。

 本当に、動揺のカケラもない、ごく普通の表情だから……彼が読んでいるは一般文芸の文庫本なのかって思ってしまうんだけど。


 違うんだな、コレが。


 彼が読んでいるのは耽美小説。最近の言葉を借りるならBL――ボーイズラブ、美少年と美少年が繰り広げる今のところ法的には色々と禁断の世界を、そりゃーもう濃厚に、かつ、理想的に描いている小説なのだ。

 挿絵も少女漫画並のキラキラ具合で、拍子はホログラム使用。一目で分かる受けキャラは正直、女性かと思うくらい可愛いことも多々。

 現時点で私は専門外、というか受け付けないジャンルなのだけど……最近はあまり、そんなことも言っていられないような気がして。

 きっとそれは、この彼にも言えることだ。

 それに、さっき散々、画面の向こうのヒロインに突っ込みをいれたけど、よく考えると自分も似たような状況なんじゃないかって、ふと、思うこともある。

 先ほどちょっと述べたように、この部屋の主人は私じゃない。今、胡坐をかいて小説の世界に没頭している彼なのだ。

 要するに、「男の1人暮らしにホイホイあがりこんで」っていうのは私にも言えること。自分の無防備さに多少なりとも危機感を抱いてはいるんだよ、多分。

 ただ。

 私にそういう計算があるとか、彼にそういう下心があるとか……そういうことでは、なくて。

 私たちの関係は、一種の利害関係。きっと世間的には誰からも認められないであろう、そして、可能ならば誰にも知られたくない、そんな関係。


 私は彼が読みたいBL小説を私の友達から借り、

 彼は私がやりたいエロゲを同じく彼の友達から借りて、交換する。

 加えて学生寮生活の私は、一人暮らしである彼の部屋にあるパソコンにゲームをインストールして遊ばせてもらっている。ゲーム終了後は勿論アンインストールして、また……新たなソフトとBL本を交換する。


 そういう関係だ。

最初に公開していたのがあまりにもR-18だったので差し替えました……気になる方はホームページ版をご覧ください。

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