8話 憧れを追う旅と姉の行方
次の日、あたしは冒険者組合に出向いた。
おじさんは宿屋の店主に聞いたところ、あたしが寝ている間に農夫の人と一緒に村に戻ったそうだ。
今日からこの王都であたしは一人きり。誰も知り合いがいないけど、それでも前に進まなきゃ。
怖いけど……頑張るぞー!
というわけで、冒険者登録は無事一通り終えカードを受け取る。
そういえばマヤ姉の事を聞かないと。
「あの、マヤ姉。いえ、マーヤ・ディラントはどうしているのでしょうか? ここで活躍しているときいたのですが」
「マーヤ・ディラント……少々お待ちください。お調べしますので」
そう言って、奥へと入り、しばらくして受付嬢の人は戻ってくる。
「確認しましたところ、その人は現在行方不明中です」
「え……行方不明? まさか、マヤ姉に何かあったのですか?」
震える声で問い返すと、受付の女性は困ったように眉を下げる。
「私どももその理由は存じませんが、2年以上前から報告途絶えたとしか……それ以外は情報は耳にしておらず、未だに見つかっておりませんので申し訳ありません」
行方不明なのは意外だったが、あたしじゃどうする事もできない。
マヤ姉を探すという事ができず意気消沈してしまう。
諦めてその場から離れようとすると、受付の女性に止められた。
「待ってくださいフェル・ラグンダルト様。報奨金が出ております」
「報奨金? あたしまだ何もしていないはずですが」
「いえ、確かにフェル・ラグンダルト様とお伺いしております。王国騎士団長リベル・マリスター様から言伝も」
「リベル様……から?」
「はい、“昨晩君と戦った男。重要参考人だったため、偶然とはいえ足止めをしていた君には十分に報酬を受け取る権利がある。だから気にせず受け取ってくれ。それから、女性らは皆無事だ”だそうです」
あの女の人達無事だったんだ。良かったー……。
あたしは報酬を受け取るとずっしりとした重みを感じた。
中身を見なくても明らか多すぎるのがわかる。
硬貨をそれぞれ分別するように服のポケットにしまう。
これで昨日みたいに袋に入れっぱなしでスラれる事もない。
受付のお姉さんがあたしを不憫そうな眼差しで見ている。
なんだろ?
「あの……失礼ですが。私達組合は冒険者様からお金をお預かりする事もできますが……」
「……え? あ、あはは。そうなんですね。あはははは……お願いします……」
一部を残しあたしはお金を預けた。
その後、トランプほどのカードを受け取る。
表面にはあたしの名前が書かれていた。
改めて聞くとカード発行にはリーシャさんが携わっているらしい。特別な魔法で管理されこのカードも預け入れたお金の残高表示がされており、一部王国領土内なら利用できるとのこと。
村に来てた人の中では使ってるの見たことなかったな。
ただ……これを発明できるなんて何かすごい人に目を付けられたような……。
「あっそうだ」
ふと昨日貰った名刺の事を思い出し、取り出した。
この人に聞いてみよう。
「あの、これを昨日貰ったのですが。どこに行けば会えますか?」
「これは……え? あ、あなたどうしてこれを!?」
受け取った名刺を受付嬢は食い入るように見つめている。
「き、昨日、さっき言っていたギャンブル勝負であのその……勝ちまして。そのあとで何故か気に入られてこれを。もしかして……まずい状況とか?」
「いえ、その逆です。ただの名刺ならまだしも、この方直々の名刺を貰ったという事はむしろ名誉なことだと思って良いでしょう」
「そうなのですか?」
受付嬢の女性は何度か力強く頷く。
あたしはそれにほっとした。
いきなりまずい事に巻き込まれるんじゃないかと心配してしまったからだ。
「昨日よくわからなくて、リーシャ……いえ、サリエント様という方はどんな人なのでしょうか?」
「サリエント様は……いえ」
受付嬢はコホンと咳払いをする。
「リーシャ・ウーナ・サリエント様はこの国の貢献人かつ王国魔法師にも一目置かれている実力の持ち主。ここ冒険者組合では指折りの実力者で、もちろん冒険者最高ランク、今はここに書かれているセブンズミラーと言うカジノの経営者です」
そうなんだ~、魔法師にも一目を置かれて、指折りの最高ランク冒険者に、カジノ経営者なんだ。すごいなー………………んん?
えっ!?
一気に情報が押し寄せて一瞬混乱はしたが、ただあの人は雲の上の存在というのはわかった。
あの時、出会えたのは奇跡だったんだと。
けど、そんなすごい人ならマヤ姉の情報を知っているかもしれない。
今すぐ会って聞いてみたい。
「もしサリエント様にお会いしたいのであれば、セブンズミラーと言うカジノ店に行くのがよいでしょうが。今行かれても正直お会いできるかどうかは微妙です。関係者にお会いできれば話は別なのでしょうが」
「そうですか……わかりました……」
はやる気持ちはあったが、会えないのではと思い諦める事にした。
とりあえず、冒険者らしく依頼を見に行こう。
名刺を返してもらうと、気を紛らわすために掲示板へと向かう。
張り紙には魔物討伐、薬草の収集、子供の鍛錬教育、館の掃除、他にも大量に張ってある。
「魔物討伐は、ウルフ討伐にキマイラ討伐、他にもあるけど……どう考えても無理そう」
あたしが討伐したのは村近くに出てくるボムリンという球体の形をした魔物。
このキマイラは見た事はないが、冒険者の人から聞いたことある凶悪な魔物。あたしには到底かなわないだろう。
ウルフって事は犬だよね?
確か1度、対峙したことあるけど素早い上に近くに冒険者がいなかったら危なかったっけ……。
あの時、群れずに1匹だけだったから助かった覚えがあるや。
これも危険だから諦めよう。
次に子供の鍛錬教育……は、自分でもわかるほど非力な上にまだ見習いのような者だし、教えられることもなさそう……。
となると残りは薬草採取と館の掃除。
「とりあえず薬草なら知識あるしやってみようかな」
安易な選択ではあるけど、まずは慣れという事で。
と、手を伸ばそうとした矢先、肩に触れられた感触。
「あの……」
声をかけられた。




