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純白のギャンブラー(改稿前版)  作者: レブラン
2章

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29話 慈悲のリーシャとムエルニの再起

 パチンと指を鳴らすと、浮かび上がっていた映像は消失。


「さて、サーティーンズ・デスの結果は伝えた通り、フェルの勝利で幕引きね」


 パチパチと手を叩いて拍手する。

 他に誰もいないせいか、部屋が広いせいか拍手音が響く。

 何ともない拍手音、しかしそれが何故かとても恐ろしく聞こえた。


「とても面白い試合。見てるこちらも楽しめたわ」


 リーシャ様は近くに来ると指で私の顎をくいっとあげる。


「あっ……」


 思わず声を上げる。

 リーシャ様は私に一瞥するも、すぐにリーシャ様の視線はフェル・ラグンダルトのほうへ向く。


「約束通り、フェル・ラグンダルト。ユエル・タニア二名は今日からセブンズミラーの一員。皆に招き入れるよう職員たちには伝えておくわ」

「は、はい。ありがとうございますリーシャ様」

「そうそう、私の事はリーシャって呼んでも構わないわよ」


「え?」私と彼女は同時に声をあげた。

 呼び捨てなんて、私でも恐れ多いのに。

 言いたかった。だけど、私に発言権はないから黙るしかない。


「だってあなたが欲しいと言ったのは私なのだから。それに今日のギャンブルは実に良い見物だったわよ」

「わかりました。リーシャ……様」

「ふふ、まあいいわ。今日は帰ってもいいわよ」


 扉を開け、部屋から出ようとした彼女は立ち止まり振り返る。


「あの、ムエルニさん。今日は楽しかったです。またいつかギャンブル勝負できたらしてほしいなって」


 返事はない。視線はテーブルの方へと向かい俯いているだけ。

 彼女は言えた事に対して満足した表情で出て行った。


「さて、わかっているわね」


 ポンと私の肩に手を置かれ、ビクっと震わす。

 視線をリーシャ様に向けると、リーシャ様もまたこちらを見ていた。

 綺麗な瞳。視界に反射して映るあたし、視線は逸らす事さえ許されない。

 思わず顔が紅潮していくのが分かってしまう。


「はい……この勝負で負けたので私はもう不要だって言うのが……」

「確かにあなたは自ら、負けた時の処遇を言ったわね。それについてはとやかく言わないわ」


 止めてもくれない。

 やはり私はこの人にとって不要なんだ……。


「あなたが敗北した理由は何だかわかるかしら?」

「はい……最終戦で守りに。これで最高の手だと思って守りに入ってしまった事」

「そうね。確かにそれも一つ。それよりもあなたの大きな敗因は有利に立っていると思っていた慢心。いえ思わされていたと言っていいでしょうね」

「え?」


 どういうことなのだろう?


「相手は自分よりも経験の低い初心者。プレイスタイルでさえ劣る。実際に1戦目のコインを使ったのは私でさえミスだと思っていたわ」

「リーシャ様も?」

「ええ。だけど彼女は驚異的なギャンブル運で不利を有利にさせたわ。2戦目以降、あなたとフェルはコインを使う事で勝利を狙って有利に立とうとした。そして勝てたのはムエルニあなた」


 確かにあの時の私は1勝でも勝ち上がれば優位に立てると思っていた。


「そして四戦目にコインが不利であるにも関わらず、フェルは勝負を仕掛けあなたは釣られた」

「確かに私はあの時、フェル・ラグンダルトの悪あがきだと考えていました。そして私の勝ちだと思っていました」

「そうね。そして最後にはお互いコインを出し尽くし本当の運勝負であなたは負けた」


 もがく様を見るために私は乗ってしまい、結果返り討ちにあった。

 足元をすくわれたとはまさにこの事だろう。


「あなたはこれまで長く経験を積んできたからこそ、それゆえに守りに入ってしまった」

「確かに私はあの子。フェル・ラグンダルトを過小評価してました。前回のギャンブルとて、もう一人と徒党を組まないと私に勝てないんだと……。私は、私はあなたのお役に立てられると思って……」

「私はね、あなたの能力は評価してるのよ? 上りつくまでに相手を蹴落とす。貴族の出を捨ててまで私の元に来る努力家でもある。地に堕ちた今でもまた這い上がって上り詰めると思っているわ」


 私はこの人にそこまで評価されているとは思っていなかった。

 私は間違っていた。

 私は……私はこの人について行くのが正解だと改めてわかった。


「一つ聞かせてください。どうしてフェル・ラグンダルトをあなたは気に入り、評価しているのでしょうか?」

「そうね。評価に関しては未知数と言えるかしら。私はあの子を気に入ったのも、ギャンブルの仕方」

「ギャンブルの仕方?」

「あの子に関しては私も勘違いしていたのだけど、攻めに入る守りよりも守りに入った攻めのほうが強いと言ったほうが正しいかしら」

「それはどういう意味でしょうか」

「ふふ、あなたもじきに分かるわ。さあ行きなさい。私の可愛い子猫ちゃん」


 クラクラする。

 火照らされている感覚に陥りながら、私は部屋を出た。

 しばしの静寂。

 ドアを叩く音が聞こえると扉が開かれる。


「入りなさい」


 紅茶の入ったティーカップと紙を持って、リベルが入ってくる。


「君は人たらしだね」

「あら、そうかしら。私は彼女にもまだ期待しているのよ?」

「まあ、一席空いてしまったのは大きいが。確かに彼女ならまた返り咲くだろう」

「そんな事よりも報告を頂戴」


 ティーカップをリーシャの前に置く。

 リーシャは紅茶を口に運びながら視線を紙に移す。


「ああ、確かに君の言う通り今回はあの場に彼女は来ていたらしい」

「ふぅん、らしいねぇ」

「証言によると彼女たちの観戦はしており、終わったあと外に出てから尾行していたのだけど途中でまかれたとの事」

「宣伝効果もあってか、逃がしはしたものの餌の食いつきは上々ね。ただ」

「ただ?」


 リーシャはティーカップと紙をテーブルに置くと少しため息をついた。


「どれに対してでしょうね」


 視線をまだ片付けられていない卓へと移す。

 リーシャは何かを思い出したかのように、ポンと手を叩いた。


「そうそうもう一つ、お願いしたいことがあるの」

「それ“は”ギルドに関連していることかい?」

「あら察しが良いわね」

「君のことだ。なんとなくいいたいことはわかるさ」

「そう、じゃあお願いね」


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