20話 4戦目信頼と不安
「では四巡目。再びユエル・タニア様」
ユエルが配られた手札を見てムムムと難しそうな顔をしていた。
そんなユエルにあたしは聞かなきゃいけない事がある。
「ユエル。改めて聞きたいんだけど、あのラウンジで話してた事は本当?」
「はい本当です。ここに入団できれば最高ですよ!」
「わかった。ならあたしを信じてくれる?」
「フェルの事ならなんでも信じますよ」
「ありがとう……ユエルの手札をこの場で見せてくれる?」
「なっ! 手札を公開ってそれは反則でしょ?」
あたしの言葉に当然ムエルニさんは台を勢いよく叩いた。
「どうして? ルール説明には手札公開してはいけないなんて一言も説明されてませんよ?」
「確かに説明はしていません。けど暗黙のルールと言う物があり、手札を見せないからこそ面白い醍醐味があるんですの」
「そうね。進行役として私もそこまで堂々と通しのイカサマ宣言をするのは認められないわね」
リーシャ様もムエルニさんのことに同意した。
当たり前だよね。あたしでさえそんな事を言った人をいれば苦言を言うかも。
「そうですか……残念です。イカサマできてるこの台が可能なら、あたしの意見も通ると思ったんですが……」
「そ、そんな嘘を通じるわけがありませんの! 負け惜しみ! 勝てないと思っているから私をイカサマしたといっているんですの」
あたしの言葉にムエルニは睨みつけるように見つめる。
明らかな動揺を見せていた。
「触った時から似ているなと思っていたので。そして三巡目にて触る前に気づいていたのが、とあるカード」
「ふぅん、どう言う事かしら?」
「台と言うよりも使われてる木ですかね。ゲルムと言う特殊な木。通常の地表とは違い魔力濃度が濃い地域の近くに生えるといわれているとか。村にいた際に来ていた商人の人にこれと同じ材質の木を見せてもらったんです。この木は魔力を通しやすくする材質で出来ているんでしょ?」
あたしは視線を向けた。
向けた先の視線は誰かは明白、続けるように言う。
「ムエルニさんが特注品と仰っていたので、これぐらいなら朝飯前かなって」
「仮にそうだったとしてもそれがどうしてイカサマとなるのか説明してくれるかしら。たまたま私はあなたの言う良い材質だったから選んだまで」
「ならリーシャ様。この回はやり直しでしてもらってもいいでしょうか? もしだめならあたしの証明不足でこのゲームは敗北で構いませんので」
証明しなければ証拠にならない。
「構わないわ。代わりに証明できなかったら、この試合はフェルあなたの敗北でムエルニとユエルの再試合となるわよ」
ゲーム進行者かつ責任者の許可をだした。
ムエルニは反論を言おうとするも押し黙るしかなかった。
「ありがとうございます。ではジョーカー1枚を台の上に広げ、残りの配ってない束はそのまま置いてていただけますか? あと手持ちにジョーカーがあればデックの中に入れて下さい」
ジョーカーを取り出し台の上に置かれ、ジョーカーは出てこない。
デックの中にもう1枚のジョーカーがあるようだ。
「予想通りなら……」
そう呟きながらあたしは台に手を置き魔力を注ぎ込む。
するとポンと小さい爆発とともにジョーカーのカードが宙に舞う。
ユエルはそのまま落ちてきたジョーカーを上手くキャッチしてあたしに見せてきた。
「なんすかこれ。なんすかこれ! ジョーカーだけ空に飛んだ。けど他は反応がないですよ?」
「ガンかけね。カードについた魔力で反発し合ったって所かしら」
「サリエント様の言う通り。ジョーカーには魔力が付与されていたの。そこであたしはこの木を通じて魔力を流し込むと、他の人の魔力と接触し反発し合った結果……ぽん」
あたしは台を優しくなでながら話を続ける。
「最初に言った通り、この木の特徴は魔力を通しやすい性質もあり、魔法使いが持っている杖の先か全体に使われている素材もこの木が多いって聞いたから。その人専用の杖になるのもその理由なはず」
あたしはデックの束に指をさし、上下に動かす。
「ムエルニさんはカードを操れるのが得意そうなので、特に付与された特定のカードを自分で追うなら、慣れた魔法使いなら枚数をおおよそで当てるぐらい朝飯前じゃないのかなって」
村の外で魔物と交戦していた時に出会った魔法使いの人。
また前にもバニーハウスでのギャンブル勝負の際に起きたトランプのこと。
ここでも同じように培った経験則が活きた瞬間だった。
「だけどそれだと、リーシャさんの魔力も干渉して暴発を起こるんじゃ?」
ユエルは当然の疑問を呈してきた。
「あたしは仮にやると未熟だから無理だけど、サリエント様ほどの手練れなら完全に消失できると思う」
「なるほど! なら、他のカードも同様に魔力を付与すればどのトランプがどこにあるかわかるんじゃ!」
あたしは首を横に振る。
「それも無理。他のカードは使い終われば回収されるから。実質残るのはジョーカーのみ。仮にそれをするならムエルニさん本人がディーラーとしての役をかって出なければならなかったはず」
リーシャはパンと手を叩く音が聞こえ全員そちらに向く。
「さて、こうしてイカサマも明らかになり、台自体も対象となったわけね。処遇をどうしようかしら。ゲーム自体この時点で終了にして、ユエルとフェルの入団は勿論、ムエルニの降格。いえ、実質ギルドに損害を与えた罪は重いからそれ以上の罰則が必要かしら」
「サリエント様。あたしはこのまま続行したいと思います。あくまでさっきのジョーカーはムエルニさんが自ら手札に来たのも運ですし。判明するのがジョーカーだけであってそれ以外は全く不明なはずです。ただ、不平等なので先ほど言った、手札の公開を許可してほしいと考えています」
「面白いわね。あなたがそう言うなら構わないのだけど。残り二人はどうかしら?」
「私もその案で構いません……」
「自分はよくわからずにいたのですが。フェルがそういうなら自分には否定する権利なんてありません」
客は不満の声があがると思っていたが、当人達が納得しているおかげか大人しい。
「では再度カードを配り直して四巡目。ユエル・タニア様から」
ユエルの手札は、♥4、♠6、♥7。
あたしの手札はジョーカー、♦3、♣6。
デックの枚数も少なくなってきたからかジョーカーの入手がしやすくなってきた。
それはムエルニさんも同条件なはず。
そしてジョーカーがあたしの手に渡っているのも、彼女にはわかっているだろう。
逆にあたし達は残りのジョーカーが不明。
ここからは運の勝負。
「ユエル。スペードの6を捨てて」
言われた通りに♠6が捨て山にいく。
♥4と♥7で11。
あたしの番となるがパスを宣言。
「ムエルニ様の番です」
「そうねあたしは3枚頂こうかしら」
ムエルニは手で口元を隠す。
悟られないようにするためか、ジョーカーが来たとしても判断しにくい。
「ではコイン宣言をユエル・タニア様」
「当然ここは白ですねフェル!」
あたしはコクリと頷く。
「あら、ユエルは本当にフェル・ラグンダルトに従っていいのかしら?」
白のコインを出そうとした手がピタリと止まる。
「どういうこと?」
「どうしてあなたは手札を公開させたのか考えて?」
「それは自分がフェルを信じての事でやったまで」
「私はその逆ね。今は私が優位に立ててます。ユエルあなたは勝ち星を一つとれてますの」
「確かに自分は一つ運良くとれてる」
「だけどフェル・ラグンダルトはまだ勝ち星一つも取れてない。頭の悪そうなあなたに特別に教えてさしあげます。今回の何も考えなしに手札公開したによってあなただけ数字がどれか丸裸にされたわけですし。誘導なんて更にしやすくなりましたの。彼女の思考はこう、自分とあなたの手札が確認できることによって私に優位に働く。このまま誘導し続けることで勝ち星を取り勝ち上がる。逆に言えば必然とユエル、あなたの敗北が決まる。それに今回ジョーカーを持っているのはフェル・ラグンダルト」
言葉の誘導。心理的圧迫。ユエルの表情も不安そうにあたしを見つめる。
「フェル。自分どうすればいいのかわからない……フェルの事を信じたいのに不安になってきました……」
「更には今回勝てば次のデックでもジョーカーが私たちのどれかに来るから、勝ちやすくなる」
ムエルニさんの言う通り、次のゲームでカードを配れば確実に手に入るだろう。
ジョーカーもきやすい為、こちらの優位に立つ可能性が高い。
「ユエル。ごめんなさい」
「フェル……」
「あたしも手札を公開する」
台の上にカードを広げ公開した。




