14話 ユエルの勝負する理由
あたし達はライネスに案内されラウンジ、つまりは待機室に案内された。
一人用のソファーが大量に置かれ、そこにあたし達はそれぞれソファーに座った。
クッションの反発が気持ちよく、座っている感覚を忘れるほど。
かなり高価なんだろうなと、素人ながらのあたしの目から見てもわかる。
「気持ちいいですねー。なんですかねここ、とても地下とは思えないほどの心地よさというか。貴族の館なのかな」
ユエルの言う事に同意したくなる。
ふかふかのソファーに上品な机も並べられ、椅子の数はざっと十脚以上あるのに座っているのはあたし達二人のみ。
この場所は人数はざっと楽に三十人以上は入れるんだろう。
まるでここでも大人数との対戦を想定するために用意された部屋のよう。
床も壁も一目でコンクリートではない上質な素材でできているのが分かる。
天井も何で出来ているのかわからないが、地下だからか窓もないのに部屋全体が明るい。一定間隔に照らされているおかげもあるのだろう。
「たくよ。お前等のんきだな。これからあいつとの対戦なのに」
「……うん……そうだね」
「なんだよ、まだ気にしてるのか? いいんだよ。あいつはプライド高いからあんな事を言ったのは、自業自得」
「そうなのかな? けど負けたら一般職員になるって言われてたし。そもそも入団や上に上がるのって難しいの?」
「場所によっては様々だが、このギルドはそっち系じゃ有名ではあるし入団希望者も多いな。俺様やムエルニみたいな幹部に推薦されれば入団はしやすいと思うぞ」
「ならフェルはリーシャさんの推薦があったからこそ入団できるってわけなんだ」
「ああ、んで幹部になるには内外で活躍をすれば成り上がりやすいらしい」
「らしいって? まさか、自分たちにあった時にしたように相手をなぶり殺しにしまくるとか? そんな自分たちには無理無理の無理!」
ユエルは大きくわざとらしく身震いする。
「んなこたぁわかってるよ! 活躍って言うのは評価の事だ。ギルドに対して貢献できるかどうか」
「なるほど。確かにライネスだとあんな風にしないと評価上がらないってことだね!」
「お前いちいち癪に障る言い方するな。まあいい。んで俺様は自分で言うのもなんだが成り行きであいつに認められた。どっちの勝負も挑んでみたものの敗北さ。まあそのおかげか認められて、今の地位にいるわけだが。またリベンジはするがな」
「そうなると、ムエルニは難しそう。自分から見てもなんかプライド高い感じがして」
「その意見には同感だな。あいつのリーシャに対する信仰心は高すぎて俺様は苦手だが、あいつが一般職員に格下げしたらまた上り詰めるのは苦労するだろうな」
二人の意見の彼女に対する認識は合っているのだろう。
実際、あたしも二人の意見に同意する部分があった。
そして彼女はあたしに対する敵意は理解していた。
そばにいるために地位を天秤にかけてまであたしを蹴落としたいくらい憎いのも。
そんなあたしはこのまま挑んでもいいのだろうか?
「んなことよりもユエル、お前が参加すると思ってもみなかったぞ」
「フェルなら負けるはずないですが。自分が参加する事によって少しでも勝率があがればって思って。それに自分、貧しい村の出身なんですよね。自分、兄弟姉妹を養うためにもどうしてもお金が必要で。この王都へ来たのも金を稼ぎ仕送りするためでしたが、冒険者になるよりも確実に稼げるこっちのほうがいいかなって」
あたしは立ち上がると、ユエルに近づきギュッと両手を握った。
「ユエルはすごいと思う! 村のためにお金を稼ぐためにくるなんて。そんなあたしはたいそうな理由じゃなく個人的な理由で村を出たし……」
「い、いやけどフェルも大切な人を探すって目的があるじゃないですか。それにここに入団すれば捜索に一歩でも近づけますよ」
「うん、そうよね。一緒に頑張りましょう!」
「はいです!」
ライネスは咳き込むように割入り、あたし達は意識をそちらに向けた。
「お取込み中の所悪いが、準備終わったようだぞ」
いつの間にか従業員の一人が来ていた。
「フェル・ラグンダルト様。ユエル・タニア様。準備が整いましたのでご案内します」
「まあ俺様は会場でお前たちの雄姿を見とくぜ」
「ありがとうライネス。行こユエル」
「はいです!」
あたしはユエルの手を握ると、ユエルもあたしの手を握り返す。
この先、なにがあっても大丈夫とそう思いたい。




