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純白のギャンブラー~王都カジノの少女賭博録~  作者: レブラン
2章

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12話 崇拝者(ムエルニ)の疑念と、再会の扉

 見上げると三階……いやそれ以上かな?

 そう思わせる建物。

 入口の看板にはセブンズミラーの文字が掲げられていた。


「バニーハウスって店とは違って何か大きい建物ですね」

「うん、けどセブンズミラーってサリエント様が経営している店なんでしょ? ライネス」

「ああ」

「なら何でこんなにみすぼらしい……んだろ?」


 あたしは思わずそんな事を言った。

 目の前にある建物は、広く大きくはあるものの、派手さもなく古びた印象を受けた。

 建物を作る素材は“木”と“コンクリート”の二つ。細かく言えば“加工”が付く三つ。

 一般家屋が修理の手間な木、そして一部の店もその部類に入る。

 三つ目は高い宿、重要施設、城であれば見た目を考慮して木は使わず、いくつもの地形で集めた金属や魔法石などを細かくした砂と魔法処理で作った水を組み合わせて固めた物を使う。そうすれば耐久性もあがり、修復する際には隙間に埋まり楽に直せるからと聞いた事がある。


 しかしこの三つには資金力という大きな問題がある。

 材質はあるものの木は近くから伐採すれば良いので安上がりだが、魔法石で加工したコンクリートは入手から加工まで手間暇かかる分、運搬費など金もかかるらしい。

 村に居た時でも木で作られた家屋は多かったのは覚えている。

 この建物では木ではなく後者のコンクリートを使っているんだろうけど、人が集める施設なら外見も派手さがありそうなのに、とてもじゃないが他と比べるとみすぼらしい建物とも言える。


「さあな。ただ外見で派手にしなくても一応公式なカジノ店。客は寄って来る。まあここは他と違う特殊な事情はあるが。今も客が入って行ってるしお前たちも実際に中を見てみたらわかるぞ」


 ライネスの言う通り、建物の中に吸い込まれるように入る人。

 冒険者らしい身なり、そして貴族ぽい身なりなど。

 ライネスは扉を開け中に入ると、あたし達も続くように入った。


「中も外見以上にボロっちいんじゃないかと思っていたら案外まともですね。しかしカジノらしく、複数の台にルーレットもある。向こうではブラックジャック? あれはポーカーなんでしょうかね? フェル」


 聞きなれない単語が飛び出してきた。

 ただポーカーだけはどこかで聞いたことあるような……。

 カジノ店なんだからそれに使用する遊びなのだろうか?

 そんな事を考えているとライネスが立ち止まったのに気づかずぶつかった。

 鼻を抑えつつ前を見ると、いつの間にか複数人あたし達というよりもライネスの前に立ちふさがる。

 他の客と違い、全員同一の正装を身にまとっている所からここの従業員だというのが分かる。


「あの……ライネス様……武器の持ち込みは受付にて……」

「俺様に武器を取り上げるってのか?」

「いえそんな事は……しかしここでの決まりでは……」


 ライネスの睨みにただ怯える従業員。

 この時点で立場的にライネスのほうが上なのがみてとれた。

 そんな中コツコツと足音と立てこちらに近づく一人の少女。

 するどい眼差しがこちらを見つめる。


「全く、ライネスはここをどこだとお思いかしら。リーシャ・ウーナ・サリエント様が経営するカジノ店。カジノするにしても似合わない、そして場所に似つかわしくもない物を持ち込むとか常識がなさすぎですの」


 ツインテールに結んだピンクの髪色。言葉遣いと同じように気の強そうな釣り目。背はあたしとそう変わらないだろうか、髪色と同じ綺麗なピンクのドレスを身にまとっていた。

 気の強そうだが、見た目のせいかとても可愛らしい人と印象を受けた。

 少女の邪魔にならないように従業員達は道を譲るように開けた。


「なんですかね。なんですかね。フェルと同じでとても可愛い子が出てきましたよ。頭撫でたい。高い高いしたい。あの可愛い頬をムニムニして抱きしめたい!」

「そこ、うるさい! それに馬鹿にするならこの場から出て行って下さる?」


 逆鱗に触れたのか、カードのようなものを数十枚空中に浮遊させると、あたし達の足元に刺さる。

 あたしには1枚、ユエルには10枚、ライネスには残り全てが。


「相変わらず操作は上手いな。それにさ、いいじゃないかムニムニ」


 ライネスは少女の頭をガハハと笑いながら撫でる。

 少女は怒ったように手を払いのけ、駄々をこねる子供のように地団駄を踏んだ。


「ライネスまた馬鹿にして、私はムニムニじゃないですの! 私の名前はム・エ・ル・ニ! 何回間違えれば気が済むのかしら!」

「悪かったって。そういやこいつを紹介するの忘れてたわ。俺様と同じセブンズミラーの一人ムエルニ。ここの管理を任されてる奴だ。んでリーシャはいるのか?」

「ええ、おりますの……して、そちらの方たちは?」

「ああ、こいつらはフェル・ラグンダルト。と……あー、えー……ちび助だ」

「誰がちび助っすか! 自分の名前はユエル・タニア! というよりもユエルって名前聞いてたよね」


 ユエルは怒りをあらわにしてぶんぶん腕を振り回すも、ライネスは片手でユエルの頭を押さえ制止する。

 まるで大人と子供だ。


「すまんすまん。んでフェルはリーシャに気に入られた奴だ」

「え? 嘘でしょ。リーシャ様に気に入られたって、何かの冗談?」

「嘘じゃないぜ。フェル、あの名刺見せてやれ」


 サリエント様から貰った名刺を見せると、食い入るように見つめた。

 嘘と呟いてからあたしの事を睨みつける。


「あなた、この名刺をいつ頂きましたの?」

「えと、昨日……かな」

「は? ありえない、ありえない、ありえない、ありえない。私でさえ気に入られてここに入るまで長い年月かかったのに。こんなちびにリーシャ様に気に入られるなんて嘘!」

「名刺は確かに本物だ。俺様もこいつ、フェルと勝負を挑んで負けたから実力はあると思っている」


 あたし達を見ていた客も従業員もざわつく。


「ライネス、あなたは正直頭の悪い馬鹿ではあるけど、私と同じようにリーシャ様に認められてる以上実力は本物。そんなあなたが負けたって本当?」

「馬鹿にされてるのは気に入らんが、本当だ。だから俺様がここに連れてきた」

「……あなた、フェルって言ったかしら。ライネスにはどんなイカサマをしたの? そしてどんな風にリーシャ様に取り入ったのか答えなさい!」


 イカサマと言われあたしの中で少しムカっとした。

 あの時、あの人が言った言葉があたしの評価の真実だとしてそれを無下にされた。

 それにライネスとの一戦を見てないからこうも言えるんだ。


「どちらもイカサマなんてしてない。あたしは、この人に運良く勝てただけ。あの名刺ももらえたのもたまたま運が良かっただけ」

「運? 嘘よ。あなたみたいなちっぽけな人があの人が!」


 頭に血が上るのが分かる。

 ユエルがあたし達の間に割り入った。


「フェルもムエルニも勘違いしてます! 確かに運も入っていたかもしれないですけど、フェルは自分の目から見ても実力で勝ち取ったんですよ! ライネスとの勝負も勝ったし、そんなイカサマなんてするわけがない!」

「ユエル……」


 沸騰していたあたしの感情はユエルの言葉によって冷静さを取り戻していく。

 そして擁護してくれたユエルに対してあたしは感動を覚えた。


「気に入らない。私は気に入らない。私は私はどれだけ苦労してあの人に……勝負よ」

「勝負?」

「ええ、これから行うゲームで私に勝てば認めてあげる」


 ……困った。

 あたしは一刻も早くサリエント様に会ってマヤ姉の事を聞きたいのに。


「おいおい、それってリーシャを信用してないって事だよな」

「なにをっ!」

「だって俺様とかならまだしもお前はリーシャを崇拝(すうはい)してるはずなのに、リーシャから貰ったあの名刺をお前は疑うわけだ。つまりお前はリーシャを信用してないんじゃないか」

「なっ! ちがっ……」


 ムエルニは苦虫を噛み潰したような表情をする。


「……ついて……きなさい」


 彼女は複数あるうちの一つの扉を開けると、上へと続く階段が現れ足を踏み入れる。

 あたし達も続くように階段を上る。


「ありがとう、ユエル、ライネス」

「いえいえ、当然の事をしたまでですよ」

「まあそうだな。あいつに絡まれるとめんどくさいし、こうするほうが手っ取り早いだけだ」

「うんうん。ライネスはあの子と同期ぽいのでここでしっかりと自分とフェルを案内しなくちゃ」

「それよりもタニアさんよー」

「なに?」

「お前、何で周りにはそんな丁寧なのに俺様だけその喋り方なんだよ。まあいいが」

「いやー、なんでだろう。自分、なんだかライネスとは気がある気がするんだよね。もちろんフェルとも気が合います」


 ムエルニは立ち止まるとあたし達に振り返り指を指した。


「そこの三匹うるさい。黙りなさい。この扉の向こうにリーシャ様がおりますの。静かにして下さるかしら」


 扉が開き中に入ると、談話室なのだろうかテーブルに囲う七つの椅子。複数のソファー。

 棚には複数の本が並び、相当な価値のある代物だと見てとれた。

 テーブルの一番奥に一人のティーカップを持つ女性が座っていた。

 サリエント様だ。


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