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運命のカードを引くギャンブラー~王都カジノの少女賭博録~  作者: レブラン
2章

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11話 クァースの死角とセブンズミラーの門

 今、セブンズミラーって聞こえた。

 その前もサリエント様の名を出したし、この人もセブンズミラーの関係者?


「お前がなんつったけ? 確かフェル・ラグンダルト」

「は、はい」


 思わず返事をしてしまった。

 ライネスはあたしの前に立つと襟首をつかみ持ち上げた。

 大きい……そして足が地面に着かない……。

 一般男性ぐらいありそうな高さで、あたしよりも頭二つ分……いや、それ以上ぐらいの背の高さだろうか。


「ちいせえな」

「あ、あなたが大きすぎるだけです。確かにあたしは他の同年代と比べたら小さ……れませんが……」


 声が小さくなる。

 自信のなさの表れなんだろうけどってそんなことを言ってるわけじゃない。


「その人はすごいんですよ! ギャンブルで男をバッタバッタとなぎ倒し。更にはあんたと同じセブンズミラーのリーシャって偉い人に気に入られたすごい人なんです! 自分、その場面をちゃんとこの目で見ていたんですから! あんたなんてすぐに負かす事ができるんですからね! ねっフェル!」


 顔が紅潮するのがわかる。

 褒められてるのに恥ずかしい気持ちが強い。

 とりあえず、あたしはライネスに名刺を見せた。


「セブンズミラーの関係者ならサリエント様の所に連れて行って!」

「ふーん、オツムが足りないただの妄言かと思いきや確かにリーシャの名刺だな。本物だわ」


 ライネスは手を離すとあたしは地面に座り込んだ。


「まあ連れて行ってやらんこともないが……そうだな。お前があのギャンブルに勝てたって話が本当なら、試してやるよ。俺様の用意したギャンブルで勝てたら連れて行ってやる。負けたらもう諦めて故郷に帰れ」

「あたしが?」

「元々初心者狩りの奴等には俺様たちの縄張りも兼ねて王国に不利益があったからな。粛清対象にも入ってたが。リーシャにも行くように言われて、冒険者組合の奴からも駆り出されたから渋々だった。が、まさかこんな光景に出会えるとはな」

「わかったけど一つ追加してもらっていいですか?」

「なんだ?」

「あたしが勝ったら、粛清なんてせずここにいる全員無事……に王国騎士団率いるリベル様の所へ連れて行って」

「リベル? あいつのことも知ってるのかよ……チッ。いいぜリベルの所へ出してやるよ」


 サムはあたしとライネスに詰め寄ってきた。


「ちょ、ちょっと待って。それだと私は……ひぃ!」


 ライネスに睨まれたサムは大人しく黙った。

 鼻息荒くしたライネスは準備にかかり始めた。

 手に草を持つと斧の上に置き始めた。


「ルール説明入るぜ。ここに三つの草がある。見た目は同じだが、一つは毒草が混じっているかもしれない。一回きりで薬草だと思った物を選んで食べろ」


 あたし達が今まで取ってきた薬草と見た目は全く同じ。

 毒草が入っているのだとしたら運悪く選んで食べたら死んじゃう。

 マヤ姉と二度と会えないのはやだ!


「ただし、質問は三回まで受け付けるが答えに対する質問はなしだ。勿論これらに質問が終わるまで触れるのも禁止。勝利条件はフェルお前と、そこのタニアつったけ? そいつが薬草を引き当てたのみ」

「なら私が毒草を選べば……」

「粛清確定だ」


 一発勝負というわけね。

 慎重に考えないとあたしかユエルが毒草を食べるはめになるかもしれない。


「じゃあいくぞ――【クァース】」


 ライネスが叫ぶと、腕輪の一つが光を放つ。

 あのギャンブル場と同じようにあたし達の周囲に魔法陣が現れドームのように覆い囲う。

 関係者は皆使えると聞いていたけど、実際にこの人もセブンズミラーの一人なんだ。


「一つ目、この草はどこから採取したものなの?」

「この森からだってこんな下らない質問でいいのかよ。残り二つだ」


 三つの草はどれも色、(つや)、形とも同じ。

 本当にどれかに毒が入っているのかも怪しい。


「二つ目、いつ頃採取したものなの?」

「今さっきだ」


 確かにどれも色合いは悪くない。

 まず間違いなく薬草だ。

 っあれ?

 どれも(・・・)……?


「さあ最後の質問だ」

「三つ目……勝てば。この人たちはリベル様のもとへ連行していくのよね?」

「はぁ? 最後の質問は本当にそれでいいのか?」

「そ、そうよ。今の質問は無効にして考えなおしましょう」

「よくわからないけど、確かに質問の意図がよくわからないですよ! 二つ目の質問までならまだ自分の頭でもギリギリわかりますよ。フェルならどうにかなると考えてますが、自分も少し不安になりますが……フェルは自信あってこの質問に言ったんですよね?」


 全員が全員あたしの質問にわけがわからない顔をしている。

 実際あたし自身でも視点を変えれば理解できない質問だっただろう。

 しかしあたしは自信をもってこう言った。


「うん!」


 ライネスはわけわからんという顔をし、頭をぼりぼりかき始めたあと、膝を叩いた。


「ああ、そうだよ。お前が勝てば連れて行ってやる。これで三つ目の質問は終わった。答えを出せ!」

「良かった。聞けて。そして先に取られなくて良かった」


 あたしはおもむろに草を全部取ると口に含んだ。


『なっ!』


 予想外の行動にサム、ライネス、ユエルはみな驚きの声を上げる。

 苦い……。

 目に涙を浮かべながらも無理やり全部頬張り飲み込む。


「お、おい何で全部食べたんだよ!」

「そうよ。そうしたら私の分。いえ粛清が……」

「大……丈夫。粛清なんてされないし、あたしも死なない。勿論ライネスあなたもね」

「どういう……」


 手を口に向けて吐き気を抑えるように集中した。

 しばらく経ち口の中の薬草は胃に入り気分が落ち着くと深呼吸をした。

 良い気分。


「落ち着いたようだが、説明しろ」

「このルールではあたしとユエルが薬草を選べば勝ちとなるわけよね」

「ああ、そしてそこの女が薬草を食べたら負け。そしてお前かタニアが毒草を選ぶと負け」

「そもそも本当に毒草はあったの?」

「……っ! 気づいてたのか……」

「うん。だってそうしないとライネスあなたルール違反で死んじゃうんだから」

「え? え?」


 サムはどういう事か理解していない様子。

 ユエルはなるほどと言って手を叩いた。


「クァースって確か絶対順守の魔法。ルール違反者には死が待っている。ルール宣言前に決めた勝敗条件での報酬はあたしが勝てば全員無事……という事を言っているのに、何故かライネスは毒草を持ち出した。その時点でおかしいことになってるってことですね!」

「そう、ユエルの言った通り」

「確かに言ったさ、だけど仮に毒草といっても解除薬も持ち合わせたかもしれんぞ」

「“かもしれない”とあなたはそう言った。このかもしれないはあくまで憶測の範囲内でルール適用外。そして何より全員無事という絶対条件があるから。これがもしクァースを使わなかったらまた違ってたかもしれかったけど」

「憶測だろ!」

「うん、憶測だね。けど憶測でもこうして死なずに済んでるって事は正解だったって事」


 サムはまだ理解していない事があるのかあたしに詰め寄った。


「フェル。あなたが薬草三つ全て食べた事の説明は?」

「え? だってあたしが先に全部食べれば、サムさんが選ぶ余地もなくなるでしょ? サムさんの選択肢を無くしただけだよ?」


 サムは口を開け、言葉を失う。


「……ぶっ……ブハハハハッハハ! 面白い! 実に面白い女だ! その度胸確かにリーシャが気に入るわけだ」

「本当、フェルはすごい人ですよ! 自分には思いつかなかった事をやってしまうんですから」

「もう、いいでしょ! あたしが勝ったんだから連れて行って」

「ああ、わかった約束は約束だ。連れて行ってやるが、その前に……寝とけ」


 ライネスはサムを殴り気絶させた。


「別に殺しちゃいねーよ。無事にあいつの所に送ればルール的に問題ない」


 屁理屈だなと思いつつも何も起きないのだからその通りなのだろう。

 ライネスはサムとロム、そして売買人全員をロープで縛し上げると連れて行く。


「ほれ、王都に着いたぞ」


「ありがとうライネス。だけどこの人たち大丈夫かな?」


 地面をずるずる引きずられる売買人達。

 全員が全員あたし達に訴えかけるように涙を浮かべながら懇願(こんがん)していた。

 道中起きたものの身体が縛られてるのもあってか抵抗できず、何度も木の幹や石に顔をぶつけられ怪我をしていた。

 あまりにも騒ぐものだから一度止まると、ライネスは売買人達を怒鳴りながら振り回して黙らせる。

 数度繰り返す事で効果てきめんだったからか、王都付近になると嬉しさの悲鳴が聞こえた。


「ほれ、王国騎士団様がやってきたぞ」


 槍の紋章を付けた複数人の兵士があたし達のもとにやってきた。

 兵士を見るやいなや売買人達は嬉しさのあまり、捕まらせてくれと叫ぶ。


「自分、あれだけされると流石に不憫な人たちって思ってしまいました」

「あたしも……」


 そんな異常事態に兵士は全員顔がひきつっていた。


「これは一体……」

「あー、こいつら例の初心者狩りの連中だ。こいつらやるからリベルにでも話をつけといてくれ」

「しかし」

「あん? 俺様を見てまだ文句あるのか?」

「あ、あなた様はセブンズミラーの。いえご協力感謝いたします」

「たくよーわかりゃいいんだよわかりゃ。ほれ俺様たちも行くぞ」


 あたし達はライネスの後ろをついていく形で歩いて行く。

 巨斧、体格、顔の傷もあるせいか目立つが街中で歩いていてもどこかしら注目を浴びる形になる。


「ほらここがセブンズミラーだ」


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