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〈かりがねの親水公園デイトする 涙次〉



【ⅰ】


 安保さんの甥つ子、卓馬の悲戀物語は、当該シリーズ第64話に書いた通り。卓馬は初めて味はふ失戀の痛手で、受験勉強も手につかない。そればかりか、「戀敵」アンドロイドJを産み出した魔界つてどんなところだらう、と要らぬ方へ心が揺れ動いてゐる有り様。さう云へば「寄與美」は... あれ以來魔界に住み付いてしまつたのである。これは卓馬のみならず、安保さんの心をも大いに痛めた。自分の造つたアンドロイドが魔界の住人になる... カンテラ一味のメンバーたる安保さんにとつて、最大級のしくじりだと云へた。



【ⅱ】


 安保さん、忙しい每日の合ひ間に、誰か一味のメンバーに着いて貰つて、一度現在の魔界がだうなつてゐるか、「見學」に行きたいな、と思つてゐた。かう云ふ場合、ぴゆうちやんが役目に相應しい。「安保ヲヂサン、僕ガ連レテ行ツテアゲル」‐ぴゆうちやんの護衛付きで、安保さん及び卓馬の魔界行きが決まつた。今の魔界は丁度「ロールパン」(前々回參照)の統治に移り變はる(それ迄は、謂はゞ無政府狀態だつた)時期に当たり、善人・山城太助の誕生に力を貸した安保さんにとつて、魔界行はやはり必要な事だつたと云へる(前回參照)。



【ⅲ】


 卓馬を連れて行くのは、流石の安保さんも氣持ちの整理がつかない「寄與美」関連の事件があり、さぞかし(自分にそれが不可能なぐらゐだから)彼・卓馬も混乱してゐるだらう、とまあ一種の思ひ遣りから決めた事である。それが、その後の卓馬の變心を誘ふ事にならうとは、現時點の安保さんには思ひも寄らなかつた。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈云ふ事を云ひ盡くす為努力するラノベも一般小説もない 平手みき〉



【ⅳ】


 ぴゆうちやんに連れられて、安保さん、卓馬は魔界へ降りた。ぴゆうちやんは、何やら「ロールパン」らしき【魔】と交渉してゐる。だうやら「寄與美」の居場處を訊いてゐるやうだ。

「寄與美」は何と、「ロールパン」主宰の黑ミサの祭壇役となつてゐて、會ふ事罷りならぬ、と「ロールパン」は澁つてゐるやうだ。せめて一目でも駄目なのだらうか、卓馬の願ひ虛しく、その許可は下りなかつた。たゞ、「ロールパン」、自分主宰の黑ミサの模様だつたら、「見學」してもいゝ、と云つてきた。今の自分の権勢を、人間である安保さん・卓馬に見せつけてやりたかつたのだらう。



【ⅴ】


 群衆(無論【魔】の)の最後尾から黑ミサの一部始終を見た、安保・卓馬。こゝで卓馬の心が、魔界に染まつてしまつた‐「僕は大學なんか行かない。魔界の住人になる。腎臓の病氣でいつ死ぬとも知れぬ僕は、未來、と云ふ言葉が元より嫌ひだつた」安保さんは突然の卓馬の「デスペラ宣言」には驚いた。「卓馬、そんな無茶を云はずに、俺と人間界に帰らう」だが、完全に【魔】に心を奪はれてゐた卓馬は、惡鬼の如き形相で、「あんたがそれを云へた義理かよ。『寄與美』は『ロールパン』の愛人になつちまつたぢやないか!」安保さんは心沈んだ。確かに全て「寄與美」の失敗から來てゐる。



【ⅵ】


 そして、「卓馬、お前が魔界の住人となれば、カンさんに斬つて貰ふ事になる。それでいゝのか?」‐「だうせ老い先短いんだ。太く短く散つてやるよ!」‐結局人間界に帰つたのは安保さん、ぴゆうちやんだけだつた。安保さん、卓馬とのやり取りを、洗ひ浚ひカンテラにぶちまけた。

 カンテラ「安保さん、本当に卓馬くんを斬つてもいゝのかい?」‐安保「我が甥だ。本当は自分が手を下したいところなんだが。カンさん濟まん!」



【ⅶ】


「シュー・シャイン」に依ると、次の「ロールパン」の黑ミサは✕月✕日だと云ふ事だ。それに合はせて、カンテラ・じろさん・テオの面々が、魔界に降り立つた。黑ミサが始まる。と、テオが惡臭發生装置(安保さん製作)から、【魔】の嫌ひな臭ひ、人間の倖せの象徴、味噌汁の匂ひを發した。「う、これは堪らん」‐「ロールパン」はじめ【魔】たちは逃げ出した。「寄與美」と卓馬だけが居殘つた。



【ⅷ】


 カンテラ「さあ卓馬くん、『寄與美』ちやんに思ひの丈をぶつけるんだ!」てつきり斬られると思つてゐた卓馬、然しカンテラの厚情に感謝し、「『寄與美』ちやん、僕のところに帰つて來てくれないか...」‐「寄與美」は案外素直だつた。「はい、卓馬さんがわたしの事愛してくれるなら」‐じろさん、蔭に隠れてその模様を見てゐた【魔】たちを威嚇した。【魔】は逃げ去つた...。



【ⅸ】


 と云ふ譯で、安保卓馬、アンドロイドの戀人「寄與美」の心を再び摑む事になつた。安保さん「カンさん、何と云つたらいゝか」‐「何、味噌汁の匂ひのお蔭だよ」。つひに、卓馬、そして安保さんは笑顔を取り戻したのである。卓馬は安保さんに向かつて吐いた暴言を全て詫びた。【魔】の影響下にあつた言葉として、それらは皆不問に付された。

 禮金は勿論、安保さんが支払つた。これにて一卷の終はり。ぢやまた。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈秋光や我が埼玉は川の國 涙次〉



PS:「ロールパン」に開發された女性としての(セックス)で、「寄與美」は卓馬と結ばれた。彼女は愛のないセックスにはもう懲りごりだつた。卓馬童貞脱出である・笑。


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