タイトル未定2026/02/13 13:59
何千万回と見てきた世界の終わり。たった一回。呼人が、人を殺さなかったのは、この時代だけだった。
どの時代でも戦争がなかったことはなかった。呼人が人を殺さなかったこの時代ですら、過去には源だの徳川だの坂本だの、少なからずそういう時代があった。
戦争が起こるたびに三人がしたことといえば、皮肉なことに、電脳の中で生きていたクローン人間たちを【ハート】で蘇らせることだった。彼らには理不尽のはずだ。だが悪役は必要だろう? そんな悪役がいつしか仲間とともに酒を酌み交わしている。人間って変わるもんだね。歴史の教科書に載っている人物が、実は遠い昔、アダムとイブも知らない地球で生きていたクローン人間だなんて。そんなもの、本人が「私はクローン人間だ」と告発しない限りばれることはない。態々言う奴がどこにいる。過去を知っている人間であれば少なからず憧れるだろう。自分が源、自分が徳川、自分が坂本。何なら初めからそうだったのかも。だって私はクローン人間なんだから。
「変な役目を押し付けてくれたもんだ、あんのロボット」
「いいじゃない、あのロボットは淋しかったのよ、独りで」
「三人もいたら一人ぐらい裏切ってくれても仕方ないはずなんだが、お前らなんでこんなに続けてんの」
「みんなわかってるもの」
「何を?」
「ひとりになったら寂しいってこと」
「そう、だから三人」
「は? 二人の方が、俺がいなくなったらあいつが一人になっちまうーって抑止力になるだろ。なんなら、一人抜けたところで二人は残るんだから、まあいっかってならねえ?」
「割れないんだよ」呼人は言う。
「あ?」
「一人抜けたら三角じゃなくなるし」
「あ? あ?」
「みんな角度は六十度って?」
「小学生か」




