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タイトル未定2026/02/13 13:55


 恋愛必須の校則を取り入れた大学のキャンパスでは、催し物が行われている。世間では話題を呼び、有名校ではないにもかかわらず、例年以上の賑わいを見せている。季節は夏。カラフルなTシャツを着た生徒があちこちにいる。屋台。煙。賑わい、喧噪。スピーカーから聞こえるMCの声。キャンパス中央のステージの前には、パイプ椅子が並べられていた。もうすでに満員である。


 パイプ椅子の周りには、立ち見の見物人たちで溢れている。スピーカーからマイク越しの声が聞こえる。


「皆さん大変長らくお待たせいたしました。たった今集計が終わりました。それでは結果発表に移ります!」


 観客たちの歓声がどっと溢れる。マイク越しに「しー」と言う声が聞こえると、場が静まり始める。陳腐なドラムロールが流れる。「第五十六回、ミスコンテストのグランプリは……」


 名前が聞こえた。


 呼ばれた人だろう、前方のパイプ椅子から立ち上がる。観衆も椅子から立ち上がる。歓声が聴こえる。周りの人々が彼女に拍手を送っている。


 彼女の顔はまだ見えない。


 女が階段を上っている。MCの拍手と笑顔に見送られ、ステージ中央に置かれたマイクに向かっていく。マイクの前に着き電源を入れる。キーンとハウリングの音がする。場が静まる。女が前を向く。


 女の顔を見た。初めて見る顔だった。なのに、男はつま先を前に出した。マイクから彼女の声が聞こえる。立ち見の人々の隙間を縫うように男は進んだ。肩がぶつかった人たちの視線もすぐにステージ上へと戻る。女が喋っている。内容は何か。聞こえない。AIがなんだのと言った気がした。空耳だろう。間隔の狭いパイプ椅子の隙間を、がたがたと音を立てて進む。次第に近づいてくる音、観衆の疑惑の視線、ステージ上からは丸見えだったのだろう。MCは予想外の状況に困惑し、その場で狼狽えている。女はスピーチ途中で口を止めた。


 男はステージの前に立った。見下ろす女と目が合う。


 男はステージに足を掛け、上り、その女の胸に抱き着いた。


 一瞬、時が止まったかのように、屋台などの喧騒をよそに、その場だけが静まった。


「だ、誰ですか?」


 あっけにとられていた実行委員会の学生たちだろう、すぐにステージに駆けあがり男を女から引きはがした。


 男はステージから強制的におろされ、複数の男子生徒に囲まれ連行されていく。MCが謝罪の言葉を述べている。その声を遮り「わたし!!」とマイク越しに言った女。馬鹿でかい声がハウリングを起こし、観衆は眉間にしわを寄せる。耳を塞ぐ。


「人間になったよ」


 とても澄んだ声。反芻――情景が走馬灯のように走る。


 感情がゴバっと溢れ出した。


 両腕を掴まれている男は振り返えろうとしたが、前を向いた。


 ステージ後方。離れていく。


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