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タイトル未定2025/05/12 23:17

 あのときからカフネは何も変わっていない。心の底から長谷川のことを羨ましいと思っている。数日前に彼女は言った。「叶うなら、こうしなければならない、こうせずにはいられないといった強迫観念や人間独自の生態、強い欲求のない人生を送ってみたかった」


 数メートル先を歩くカフネの後ろ姿がぼやけていく。夜目が効いていたはずが真っ暗になっていく。気づけば歩いて数十分が経っていた。視線の先でカフネが線路からホームに上る姿が映る。長谷川もあとに続き、神保町の駅構内を進んだ。地上に出ると目が(くら)んだ。夕方なのだろう、真っ赤な夕日がビルとビルの隙間から覗いていた。


 いくつもの車が片側四車線の道路を覆い、アスファルトを隠していた。放置された車は幾何学的な模様を作っているようだった。反対車線に停まっているセダンに視線が行く。数時間前、長谷川はそのセダンの扉が開いたように見えた。


 気づくと隣にカフネが立っていた。じっと長谷川の顔を見つめていた。長谷川の返事を待っているのだろう。「向こうの」長谷川は指を差した。「反対車線の歩道側にある緑のセダン」


 カフネはそれを聞くと長谷川を置いて車と車の隙間を歩きだした。長谷川がカフネの背中にたどり着いたとき、彼女はセダンのドアを開けていた。「何もないだろ」やはり見間違えだったのか。それとも確かにこの扉は数時間前にも開いたが、痕跡が残されていないだけなのか。


 カフネが助手席のシートから何かを拾ったようだった。長谷川は彼女の指先につままれたそれを覗き見た。その二つに割れたような透明な片割れは、一センチ程度の細長いカプセルを思わせた。


「【ハート】?」長谷川が呟くとカフネは片割れを車内に放り、運転席のドアを乱雑に閉めた。そして歩き出した。


「どこに行くんだ?」ずかずかと先に進むカフネの背中に長谷川は投げかけた。

「探す!」

「何を!」

「遊戯場!」




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