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「ねえ、そんなとこで何してるの?」

 背中で声を聞いたのか、呼人が振り返った。女は、ホール後方の扉をちょうど閉めたところであった。

「仏頼みでもしてたんじゃ……」

 女は絶句する。

 ホールのステージ上には振り返り様の呼人が立っていた。彼の奥には観音菩薩が座っていた。

 女は目を疑った。

「人間道で一生を生きとし生けるものたちよ。その業を以って選ばれし道へと迷い、深く、暗く、落ちてゆけ」

 観音菩薩が立ち上がったのだ。


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