5.
また少し開けた場所に出る。空気はやはり淀んでいる。
「五分以内で、できそう?」
私は二人に尋ねた。その広場にはかなりの数のゴブリンがいる。統括するのは......三匹か
ゴブリン・シャーマン、ゴブリン・ヒーラー、ゴブリン・ロード。これは、本格的に高難度の依頼だな。しかし、役職付きのゴブリンは協力しないはずだ。違和感。この洞窟に入ってから、ずっと感じている。それに、誰かに見られているような気配もする。
「はい!やります」
ユウが答える。フォリアも頷く。
初陣ということを考慮すると無謀とも言える。能力は逆境によって開花するものだ。二人の将来性に期待し、ここは彼女らの意思を尊重しよう。
「分かった。さすがに数が多いから私も手伝うわ。二人はお互いの背中を守りなさい」
『はい!』
私は剣を抜き、最初に飛び出す。狙いは三匹の上級ゴブリンだ。頭がいなくなればゴブリンは統率力を失い、駆除は一気に楽になる。
まず私はシャーマンに切りかかった。しかしその剣はロードに防がれる。驚いた。私の剣を受け止めることが出来るとは。ロードはすぐに、私から離れる。するとシャーマンの氷魔法が飛んできた。
私はそれをひらりと躱し、シャーマンに懐に仕込んでおいたナイフを投げる。しかし、ヒーラーがシャーマンの身体を突き飛ばしたため、致命傷に至らない。
ロードが、シャーマンと私の間に入る。その後ろで、ヒーラーがシャーマンと自らの傷を癒している。割とぐっさり刺さっているはずだが、その傷の治りは早い。随分と魔力量があるのだなと驚いた。
この感覚......どこかで.........。
「うわっ!」
後ろを見ると、フォリアが尻もちをついていた。それを見たユウは剣を大きく振ってフォリアが体勢を立て直す時間を確保した。二人とも随分押されているようだ。
早く終わらせなければな。私は上級ゴブリン三匹に向き直った。役割分担がしっかりなされている三匹。最終的に力の差で倒せはするのだが、奴らの連携が手こずらせる。
人間を相手にしているようだった。お互いの短所を補完し合いながら、長所を押し付けていく。まるで、仲のいい人間のような......。
ぞっとする推察が頭にふと浮かんだ。あの死体、この連携が取れた三匹のゴブリン。
ゴブリンが積極的に人間、特に冒険者を襲う理由が、人間の性質をゴブリンに移すためだとしたら?
私はユウとフォリアの二人を見た。才能あふれる二人が、もしこいつらに捕まったりでもしたら......。
早くここから出なければ、私は敵に切りかかった。