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妹フラ!?お兄ちゃんはVTuber!

体調不良から復活。

「お姉ちゃん。まだ終わらないの?」


「ごめん!もうちょい待ってて!?もう少しで化粧終わるから!」


 とある家庭にて。双子の姉妹が出掛ける準備をしている。

 と言っても妹の方は丈の短いジーンズに、無地のシャツの上にパーカーを着ただけで終わったので、あとは姉の化粧待ちなのだが。


「……お兄ちゃんに会いに行くだけなのに、そんなに気合い入れる必要ある?」


「あるわよ!向こうに着いたら、兄貴に色々なとこ連れてってもらうんだから」


「ただ様子見に行くだけのはずなのに…」


 本日は土曜日。月曜が祝日で学校が休みになって三連休となった姉妹は、母から年の離れた兄の様子を見に行ってくれと頼まれていた。


 理由は連絡を寄越さなかったり、しばらく帰省してないから……ではなく。仕送りである。

 兄は毎月給料が入ったら実家に仕送りを送っている孝行息子。普通なら良い子に育ったな~と喜びと感謝だけで済むところだが……


「そんなことはついでよ、ついで。第一お母さんが大袈裟なのよ。ちょっと仕送りの量が増えたからって怪しい仕事に手を出してないか確認して来てだなんて」


「今まで多くても5万とかだったのに急に20万も仕送りされたらお母さんの反応は当然だと思う…」


 そう。今月の兄の仕送りが異常だったのである。

 そんな大金を振り込まれて逆に心配になった母は、急いで息子に電話したのだが……


『いやーそのぉ、割の良い仕事が見つかってさ~。どんな仕事かって?……………たくさんの人に幸せを届ける仕事』


 しばらく間が開いた後にそんな誤魔化すように曖昧なことを言われたら、昨今問題となっている闇の仕事に手を出したのではないかと思われても仕方ないだろう…。

 母はほぼ毎日パートで忙しくて様子を見になど行けない。そこで三連休の姉妹二人に代わりに行ってもらうことにしたのだ。


「兄貴もアホだよなぁ?なんだよ人に幸せを届ける仕事ってwアイドルとか?チビの兄貴じゃ無理かw」


「お兄ちゃんの顔なら、身長は大して問題ないんじゃないかな?」


「……………いやまぁ……確かにそうかも?てかあの顔ならむしろチビの方が人気出るか…?」


「でもネットで調べてもお兄ちゃんは出て来ないから、たぶん芸能人になった訳じゃないと思う。お兄ちゃんの容姿で話題に上がらない訳ないし」


「それはさすがに言い過ぎじゃない?」


 兄に対して失礼な姉と、兄のポテンシャルを理解している妹がそんな風に好き勝手言ってる間に、姉の準備が終わった。


「よし!お待たせ~!それじゃあ行こうか」


「うん。お兄ちゃんに会うの久し振りだから、とても楽しみ」


(まい)は相変わらずブラコンだなぁw」


(お姉ちゃんにだけは言われたくない…)


 準備が出来た二人は、いよいよ兄が住んでるマンションへ向かった。

 一方で……


「どうもー!おはようございまーす!スハ・ノヴァです~!今日も引き続き、このゲームをやっていきたいと思いまーす!もうドハマリしちゃってますよ俺はw」


 そんなことを一切知らされていない兄……櫻葉優は、今日も今日とてスハ・ノヴァとして元気に活動中であった…。




ストーリー冒頭

「この子どうやって使うんだ?スキルボタンで攻撃方法変わるのか?」


次のエリア到達。

「お!なんだこのお姉さん!?めっちゃ介抱してくれてる。……え。消えた…?」


なんか除去中。

「汚染されてた塔の上に宝箱あるじゃな~い。見逃しませんよ俺は!」


本ストーリーのメインヒロイン登場。

「すっごい!マジすっごいこの人の服装wエッチィ!!!とても良いと思います!」


ヒロインの愛が重い。

「愛が重いなこの人wずっとそばにいさせてって何回言うんだよw」


だんだん好きになってきたところで……

「そ、そんな!?俺を庇って!あああああ!?やめろー!!!」


クライマックス。

「行けーッ!!!初期化なんて消滅させてやれーーー!!!」


脳が焼かれた。

「ああああああああああッ!?!?!?」


 どうも。ゲーム実況中のスハ・ノヴァこと櫻葉優です。

 最近話題のオープンワールドゲームに手を出したら止まらなくなって、始めて3日目で第1章の最後まで終わらせた。


「の、脳が……脳が焼かれた…(泣)焼き切れたんですけどマジで…。公式嫁じゃんこんなん!?どうりでこのストーリーがすげぇ話題になってる訳だよ。これで人気出ない訳ないもん!確信した。覇権ゲーです。正しく覇権ゲー!いやマジ最初は『旧友とはいえ愛が重いな~w』くらいに思ってたけどさ?ストーリー終わった今の感想としては『主人公の嫁!正妻!純愛!俺が幸せにする!!!』だもんなぁwしかもこの人、浮気オーケーみたいなこと言ってたんですけどw出来ねぇよこんな嫁いたら。20連で引いた新キャラのこの子も相当脳を焼いてくるって聞いたけど、これを越えてくる衝撃は来ないよな流石に?」


 このゲーム本当に面白すぎて課金もしちゃったしな…。後半復刻の最強キャラ引いたらその人の新衣装も買う予定である。

 いやそれよりも俺の脳を焼きに焼きまくったこの子の復刻はよ。


「いや~。第2章も非常に楽しみですね~。それじゃあ最後にスパチャを読んでいこうと思いますぅ……てうおッ!!!なんじゃこのスパチャの量は!?なんか今日はスパチャ多いな~って思ってたけど、まさかこんなに来るとは…。赤スパもめっちゃあるw普段の数倍、下手したら10倍くらいスパチャ来たかも?wいやー、皆さん本当にありがとうございます!」


 やはり流行りのゲームのトップレベルに人気の高いストーリーをやると同接が増えて、それに比例するようにスパチャも増えるんだな…。


「それではスパチャ読んで行きますか~。え~『ルールは破る為にある!』さん。どこ銀河のゴミ箱好きでしょうねこの人wてかいきなり赤スパだwありがとうございますぅ~。『いつも観てます!これからも頑張ってくだ───』」


───ピンポーン……ピンポーン…。


 と。スパチャ読みを始めたところでインターホンが鳴った。

 なんだ?宅配なんて頼んだ覚えも、送られてくる覚えも無いんだが…。


「インターホンが鳴りやがりましたわ。ちょっとお待ちになってて皆様方。少し席をお外し致しますわ!」


『なぜにお嬢様言葉w』

『よくあんなおもろいテンションでずっといられますわねw』

『いってらっしゃいですわノヴァ様~♪』

『いつまでもお待ちしておりますわ!』

『スパチャを読まれましたわ~!脳が震えますわー!!!』

『綺麗なペ○公がいますわーwww』

『お嬢様大量発生w』


 コメント欄が面白いことになってるのを他所に、インターホンのカメラを見に行く。

 どこぞのアレの集金だったら無視だ無視……と思ってたのだが、それはなんとも予想外の客人だった。


「え?ええーーー!なんでアイツらが!?なんか連絡来てたっけ!?」


『なんだなんだ?』

『ノヴァちゃんどうしたんだ?』

『爆発させた星の住民でも襲来したか?』


 来客の姿を確認した俺は、スマホに何かメッセージが届いてないか確認する。が、ない。

 ということはつまり、アポ無しで遊びに来やがったのか…。まずい。非常にまずい!

 俺は家族にVTuberになったなんて話してない。どこから身元が割れるかわからないから、家族にも内緒で活動している人も少なくない。

 ど、どうしよう…。撮影機材を隠す暇なんてないぞこれ!?


 いや一先ずこのことを視聴者に説明して、枠閉じないとだな。


「やべぇ皆!妹二人が急に来やがった。それも連絡も無しにっ!」


『マジかwww』

『まさかの妹フラwww』

『そういえばノヴァちゃんお兄ちゃんなんだったw』

『ワンチャンお姉ちゃん』

『お姉ちゃんなお兄ちゃん』

『お兄ちゃんはお姉ちゃんだった???』


「ちゃんと付いてる男の娘ですーッ!あ~、どうしよう!?モーションキャプチャーとかマイクとか、撮影機材をしまってる余裕なんかねぇよ!?と、とりあえずごめん皆!スパチャ読めなくて!今日はもう枠閉じるわ!?さようならー!!!」


『バイバーイw』

『妹ちゃんたち大切にねーw』

『次も見に来るねーw』

『さようならお姉さま!またお会いしましょう!』

『おいまだお嬢様いんぞw』


 枠を閉じて、とりあえずほったらかしにした妹二人に俺がいることを伝える為にインターホンのマイクをオンにする。


「今寝起きで裸だからもうちょっと待ってて!」


『は?』

『お兄ちゃんって裸族だったっけ…?』


 よし。これで少しは時間稼ぎ出来る!……しかしこの撮影機材の山をどうやって隠す?

 サウンドカバー付きマイクにモーションキャプチャー、なんとなく使ってる手元映し用のカメラ。なんか妙に本気を感じさせる三つのモニター。

 その他一般家庭ではまず見ないVTuberに必要な機材諸々を全部隠すなんてこと、服を着る時間内で出来る訳がない。


「くっ!苦肉の策だが、致し方ない…!」


 大量のバスタオルで覆い隠すしかねぇッ!

 ……パソコンの熱でバスタオル燃えたりしないよな…?




「……お兄ちゃん。遅いね」


「全く兄貴ったら…。可愛い妹二人を10分以上も放って何やって……はっ!えっちな漫画隠してるとか?だったら仕方ないか~!」


「お兄ちゃんはそういうのは電子書籍だから違うと思う」


「なんで知ってんのよそんなこと…。てかアンタずっとスマホで何観てるのよ?イヤホンまで付けて」


「……推しのアーカイブ」


「ふ~ん」


───ガチャ!


 バスタオルでパソコンと周辺機器を隠した後、すぐさま扉を開けた。

 一応パソコンがある程度冷めるまで待ってたから遅くなってしまった…。大丈夫だとは思うけど、バスタオルが燃えて火事になったら怖いし。


「お、お待たせ~…」


「兄貴おっそい!」


「いやいや遅いって言われても、急に来られたこっちの身にもなってくれ…。休日は惰眠を貪りたい派なんだよ」


「だからって昼過ぎまで寝んなし…」


 急に俺んちに来たのは、双子の妹たち。

 上の妹の(あい)は粗暴っぽく、少々わがままな性格をしている。理不尽なことを要求してくることもしばしば…。

 よく手入れされたサラサラのロングヘアーに整った目鼻立ち。我が妹ながら、贔屓目なしに美少女だと思う。白のワンピースがよく似合っている。

 子どもの頃は下の妹の舞共々、よくわがままに付き合わされたものだ…。


「お姉ちゃん。お兄ちゃんも仕事で疲れてるんだよ。あまり攻めないであげて。それに連絡も無しに来た私たちも悪いんだし。久しぶり、お兄ちゃん。相変わらず小さいね」


「久しぶり、舞。小さいは余計だ…」


「……(チラッ)」


「? スマホと俺を見比べてどうした?」


「ううん。なんでもない」


 下の妹の舞は藍とは正反対で、おとなしい性格をしていて、最近はよくスマホでライバーの配信を観ているらしい。

 藍と一緒の顔をしているが、こっちは目蓋が力なく垂れていて、眠そうな顔に見える。実際は全然眠くないそうだが。

 舞はショートヘアの為、藍と見分けがつきやすくなっている。それに服の趣味も違い、パーカーと短いジーンズという動きやすさ重視の服装だ。

 手間の掛からない良い子なのだが、表情があまり変化しないせいで兄の俺でも何考えてるのかわからない時がある。


 ……ちなみに姉妹二人して俺より背が高い…。

 二人とも160センチ半ばと、話す時は見上げなければならない。

 首が辛くなる…。


「まぁとりあえず入れ。長いこと電車に揺られて大変だったろ?」


「はーい!お邪魔しまーす♪」


「お姉ちゃん。邪魔するなら帰った方がいいよ」


「だが断る!」


「ネタの情報量が多いわ…」


 リビングに招いて、二人に適当に麦茶を差し出す。

 それからさっそくと本題に入ることにした。


「それで藍、舞。なんで連絡も無しに急に来たんだ?」


「お母さんがね───」


「うちら今日から三連休なんだー!んでせっかくだし、兄貴にこの辺の面白いとこにでも連れてってもらおうかな~って!」


「マジかよ…」


 なるほど。いつもの藍のわがままか…。

 だったら連絡の一つでも寄越して欲しいものだが、マジでいつものこと過ぎて仕方ないとすら思うようになってしまった…。怒った方がいいんだろうか?


「あ!でもその前にぃ~……久々に兄貴のご飯食べたいな~♪良いでしょ?」


「俺の飯?この辺の地元にはない店とかじゃなくて良いのか?」


「いいのいいの♪それは夜で良いしぃ。それに下手な店行くより、兄貴の飯の方が旨いしさ。ね!おねが~い♪」


 上目遣いでおねだりしてくる藍。

 正直、高校2年にもなってこんなおねだり方をするのはキッツいと思います…。まぁ俺の飯の方が旨いって言ってくれるのは嬉しいが。


「はぁ…。何が食べたいんだ?」


「兄貴のオリジナルスペシャルカレー!具材たっぷりで!」


「カシューね。わかった。今作るから待ってろ」


「あ!出来れば海鮮系でお願い~」


「マジかよ、買って来なきゃじゃん…。じゃあちょっとスーパー行ってくるから、待っててくれ。あとインターホン鳴っても無視して良いからな?都会はふざけた宗教の勧誘とか集金が多いから」


「了解~」


「……気を付けてね」


「ああ、それと!バスタオル被せてる機械には絶対触るなよ?あれめっちゃ大事な物だからさ。もし壊れたらとんでもない金額が飛ぶことになる…」


「はいはい、さすがに兄貴のプライバシーは守るって。早く買い物行ってきてー」


「だったら事前に連絡くらい寄越せよ…」


 まさかいきなり昼飯を作ってくれと言われるとはな…。しかも海鮮カシューと来た。

 エビとかホタテなんて買って来ないと無いので、一人で最寄りのスーパーへ向かった。




「……行ったね?」


「行った。それでお姉ちゃん。なんで嘘吐いたの?」


 母から優の様子を見て来てと言われたから。

 そう要件を伝えようとしたところで、藍が割って入ったことに疑問を抱いていた舞が聞く。


「いやね?私も無いとは思ってるけどさ。兄貴がまさかヤバい仕事に手を出してるなんてこと。でも仮に手を出してたとしたら、正直に答える訳ないじゃん?怪しい仕事してないかって聞いたところでさ」


「それはそうだけど…」


 どうやら藍も少なからず20万の仕送りに対して怪しんでいるようだ。多くて5万のところを、いきなり4倍のお金を仕送りされては、やはり内心穏やかではいられないのだろう。


「それに私たちを出迎えるのがあまりにも遅かったしね…。まるで証拠を隠していたかのよう。怪しさは普通に満点に近い。だから兄貴が買い物行ってる間に、そういうことしてないか手掛かりを探すのよ」


「でもどこを探すの?お兄ちゃんがそんなわかりやすい証拠を残すとは思えないけど…」


「そんなもん……“これ”を調べるに決まってるでしょ!」


 藍が指したのは、優が触るなと言ったバスタオルが被らされた機械だった。

 しかも何枚も使って全体を覆い隠しているので、絶対に見られたくない感が凄い。


「だ、ダメだよお姉ちゃん…。お兄ちゃんが絶対触るなって言ってたんだよ?もし壊したら嫌われちゃうよ」


「ふん!今の仕事を曖昧な言い方でしか説明しない兄貴が悪いのよ!……さて。まずは邪魔なバスタオルを外してと…」


 藍がいそいそとバスタオルを取っ払う。するとそこには、優が愛用している例の機材たちが……


(こ、これは…!これってもしかして、やっぱりそういうことなの?)


「パソコンと……な、なにこれ?ファーストテイクで見るようなマイクに、こっちはカメラかしら…?なんかよくわかんない物まであるわね。何に使う道具なのかしら?……てかなんでモニターが三つもあんの!?兄貴ってなんかのゲームガチ勢?」


 舞が何かを察してる横で、優の商売道具を物色し始める藍。

 ちなみにこれらは何十万という金が掛かっているので、壊したら本当にヤバい代物である…。


「お姉ちゃん。やっぱりやめようよ…。なんだかとっても高そうだよ」


 これは本当にやめた方が良いと思った舞が、藍を止めに入る。


「うーん。確かにこれは壊したらヤバそう…。でも何かヤバいことを隠すなら、このパソコンしかなくない?パソコンならデータ消去だけで証拠隠滅出来るだろうし…」


「それは……そうかもだけど…。でも……」


「……じゃあちょっとだけ!ちょっと怪しそうなとこ調べたらすぐシャットダウンするからさ」


「私にそれを許可する権利はないよ…。絶対やめた方がいいって。お兄ちゃんが帰ってきた時に聞こう?それで怪しい反応したら、中身を見せるように詰めれば良いと思う。それにいくら家族でも、守るべきプライバシーはちゃんと守ろう。ね?」


 やはり兄のパソコンの中身を勝手に盗み見るのはダメだと説得する舞。

 いくら怪しいと言えども、プライバシーの塊とも言える物を勝手に使うのはいけないことだと。


「確かに舞の言う通りだけどさ…。こんな怪しげな機械見つけちゃったら、内心穏やかじゃいられないってぇ…」


「そ、それに関してはその……大丈夫だと思う。私それ、どういう物かたぶん知ってるやつだから…」


「マジ!?何に使うやつ?」


「えっと……それは…。うぅ~…。ごめんお姉ちゃん。お兄ちゃんがいないところで、私の口からはとても…」


「どういうこと!?それって本当に大丈夫な奴なの!」


───ガチャ。


 二人が悠長にそんな問答をしている間に、玄関の扉が開いた。


「ただいま~」


「え!?嘘でしょ、もう帰ってきた!ば、バスタオルを!早くバスタオルを掛け直さないと!?」


「そんな時間ないよ…。とりあえず正座だけしよ?」


「うぅ~…。私、正座苦手なのに~…」


(得意な人の方が稀有だと思う…)




「よーっす。戻ったぞ~。近くに魚屋さんがあったのを思い出してさぁ。おかげで早く……って何やってんだお前ら?」


 リビングの扉を開けると、なぜかこちらに向かって正座している妹二人。

 一体どうしたんだ?俺の寝室の本棚にある純愛系のエッチな本でも見つけちゃったか?

※見られても堂々としてられるメンタル強者。


 えっと……とりあえず俺も正座するか…。


「あ、兄貴。その~……ごめんなさい…。約束破っちゃいました…」


 そのまま土下座に移行する藍。

 いやどうした…。コイツがいきなり土下座してくるなんて、俺のゲームデータを間違って消した時以来だぞ?


「ん…。私も共犯です。煮るなり焼くなり、この身を辱しめるなり好きにしてください…」


「煮る焼くはともかく、俺はガチ妹をそういう目で見れないな~…」


((煮たり焼いたりはするんだ…))


 舞まで土下座とは……こっちはまだ中学生だった舞が、俺のスマホで読んだエッチな漫画の影響で「土下座で懇願されるのが興奮するんでしょ?」って言って謎の実践をしてきた時以来だな…。

 アレは流石にドン引いた。


「で、何をやらかしたんだ?昔みたいにゲームのセーブデータでも消したか?それともエロ本でも見つけたか?」


「ううん。違う。でもお兄ちゃんのエロ本は興味あるから後で探す」


「18になってから読みなさい…」


「えっと……ほら。兄貴が絶対触るなって言ったやつ…。あれ…」


「ん?……あ~~~…」


 パソコンの方を見ると、バスタオルが取っ払われてるのが目についた。

 藍が好奇心に勝てなかったんだな…。でも見られるだけならまだいい。ゲームを快適にプレイする為の機材だとか、ビデオ通話用のカメラだとか、まだ誤魔化しが効くからな。

 問題は中身だ。


 ホーム画面に撮影用のアプリとかあるから、見られたら即効で俺の今の職業がバレる…。


「な、中身は見た?」


「見てない。見ようとしたけど、舞がダメだって…」


 よくやった舞。お前のおかげでVTuberだとバレずに済んだ…。


「見てないなら良いんだ。でも今後はこんなことしちゃダメだぞ?」


「はい。わかりました…。それであの、正座を解いてもよろしいでしょうか?もう既に膝が、悲鳴を上げてて…」


「ああ、うん。それはご自由に…」


 一旦落ち着いて話す為に、皆で椅子に座り直す。俺は買ってきた食材を冷蔵庫に詰めてから。


「改めてごめんなさい。お兄ちゃん。言い付け守らなくて…」


「良いって。壊されてないなら別に気にせんよ。あれ一個一個マジ高いからさ…。こっちにいる間は細心の注意を払ってくれな?」


「「はぁい…」」


 とまぁ、もうこの辺で良いだろう。

 さっさと海鮮カシューでも作ってやるとしよう。


「腹減ってんだろ?この話はもう終わりだ。カシュー作るから、ちょっと待ってろ」


「わーい!兄貴のカシューだー!」


「元気になるのはやっ…」


「“ノヴァお兄ちゃん”。動画は撮るの?」


「この間企画でカシュー作ったばっかだから、撮らないかな~。あー、でも撮り貯めしておくのも有りかぁ?来月辺りに海鮮カシューの紹介動画、もしくはショートに出したり雑談でちょこっと出し……………んんんっ???」


「……………やっぱり。そうなんだ…」


「えっ。動画を撮る?企画?なんのこと???」


 待て。待て待て待て待て待てっ!

 今、舞の奴なんつった!?!?!?


「スハ・ノヴァ。大手VTuber事務所『ジューにんトイロ』の第7期生。超新星爆発によって誕生した男の娘系VTuber。活動を開始してからまだ2ヶ月も経っていないのにも関わらず、チャンネル登録者数はもうすぐ100万人に到達しようとしている、正に大型新人VTuber。活動内容は主にゲーム実況と自身で考案したバラエティ企画。そして納豆と超新星爆発ネタを中心としたショート動画。女性顔負けの容姿に可愛らしい声、さらにVモデルに限らずリアルも女の子みたいな可愛い容姿をしているらしいと有名。独特なユーモアセンスと男らしい言動による容姿とのギャップが大人気。しかも大先輩であるイルミネーションやテンペスト・シュナイダー、果てには箱内トップの花刃蕾寧々にすら物怖じしない強靭なメンタルを持ち合わせた、未来のトップVTuberと揶揄されている…」


「ぽかーん…」


「……………(汗だく)」


 舞がこれ以上にないくらい饒舌に語り始めて、藍が放心状態に。俺は汗が止めどなく溢れていた。

 とりあえず脱水症状回避の為に、水飲んでいいすか?


「初配信の時から、もしかして?とは思ってたんだ。納豆ジャンキーで。妹がいて。Vモデルと同じくガチの男の娘で。何より言動も声も、お兄ちゃんと瓜二つ。お兄ちゃんみたいな男の人が、そう何人もいるはずないからね。それにあの仕送りの量も納得……相当稼いでたんだね?お兄ちゃん」


「あ、兄貴…。どういうこと?」


「……………煮るなり焼くなり、この身を辱しめるなり好きにしろ…」


「兄貴!?」


「その身体を辱しめるのはともかく、ガチ兄を煮たり焼いたりする趣味はないよ」


「「辱しめる気はあるのかよ!?」」


 この後。自分の心を落ち着ける為に海鮮カシューを作り、食べながらVTuberになったことを説明した。

 ちゃっかり動画も撮った。舞の撮影で。

 しかも結構映えてました(丸)

この兄にしてこの妹あり。主に舞。


なんのゲームを実況してたかは……ワンチャン伝わりそう。

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― 新着の感想 ―
めっちゃ面白いです!! 更新楽しみにお待ちしております!!
最近は某vにママンも参戦してるしなw
ノヴァちゃん?くん?のカオスさで毎回面白く読ませてもらってます! 妹ちゃんたちもちゃんと同じカオスな血が流れてる...d(≧▽≦*) 鳴○ですかね.....?
感想一覧
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