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競馬って、どうやって賭ける馬を決めれば良いんだ?

※母に聞いたら2トンじゃなくて1トンでした。修正しました。


1週間掛けて作ったコラボ実況パートがつまらなかったので、やめて急遽別の話を作りました。

普段より短いですが、ご容赦を…。

 人通りが多い都内の、とある犬の像前にて。儚さと物鬱げな、さらに色っぽい雰囲気を纏った一人の女性が佇んでいた。

 服装もまた色っぽく、へそ出しスタイルのクロップドトップスに、細い腰から下のスタイルがくっきりと表れるメリヤスズボンを履いており、その姿に道行く男たちは思わず見惚れていた。

 同性からも、そのスタイルの良さに羨望の眼差しを向けられているほどだ。


 さらに夏真っ只中。汗ばんでいる表情もまた、色気を際立たせる要因となっていた。

 そんな女性に男全員が声を掛けるのを我慢出来るはずもなく、二人の男が彼女に声を掛けた。


「お姉さん、すっごい美人さんだね。今一人?」

「よかったら俺たちと遊ばない?」


「?」


 お世辞にも紳士とは言えない下品な目を向けられながら声を掛けられた女性。

 しかし何を思ったのか、辺りをゆっくりと見渡し始めた。


「いやいやいや!お姉さんだよ、声掛けてるの!」


「あら~。私に声を掛けてたのねぇ。てっきり別の女の子かとぉ」


「それはないって。今俺たちの目の前にいる女の子、貴女しかいないんだから!」


「まぁ。言われてみればそうね~」


 どうやら先ほど感じていた雰囲気とは異なり、少々不思議ちゃんなようだ。


「それで、何のお話だったかしらぁ?駅の場所が聞きたいんだったかしら?」


「こんなところで駅探して迷子になる奴なんているか?」

「いやいねぇだろ…。俺らはお姉さんを遊びに誘ってんの。わかんない?」


「私を?」


 ようやく自分がナンパをされていることに……気付けたかどうかどうも怪しい感じがするが、遊びに誘われたということは理解出来た女性は、申し訳なさそうに断った。


「ごめんなさい。既に先約がいるの。それに“知らない人に遊びに誘われたら断りなさいよ?絶対に断んなさいよ!?”って、同僚から耳にタコさんが出来るくらい口うるさく言われてるから~」


「いいじゃん!お姉さんもたまには“息抜き”、したいでしょ?」


「そうそう!俺らと楽しいことしようぜ?」


「あら~。困ったわね~。そんなに遊び相手が欲しいのねぇ」


「そうなんだよ。俺たち遊び相手が欲しいんだよ~」


「退屈させないからさ?な、な!」


 ナンパ男たちはしつこく女性に言い寄る。

 強く断れない彼女に対して、押せば行けると思っているのだろう。


「うーん。困ったわね~」


 眉を下げてどうしようかと困り果てていると、そこに救いの手が差し出された。

 横から女性の手を取ったのは、小中学生と思しき“女の子”の両手だった。


「やっと見つけた~!もう、探したんだよ?」


「あら~。そんなに探させちゃったかしら?ごめんなさいねノヴァく…」

「ごっほん!」


「あ。えっと……ごめんなさいね優くん」


「ううん!いいよ“ママ”!早く行こー!」


「あらあら。そんなに引っ張らなくても、時間はまだ大丈夫よ~。……て、ママ???」


「え。あ、ちょ!?」


 自分の子どもに半ば無理矢理連れて行かれたと思われる女性に、虚しく手が伸びた状態で固まるナンパ男二人組。

 互いに顔を合わせて溜め息を一つ吐いた。


「子持ちかよ~…」


「まぁ。あんな良い女を放っておく男はいねぇよな…。てかアレで経産婦ってマジか」


「すげぇよな…。にしても、子どももすっげぇ美少女だったな~。ありゃ将来モテモテだな」


「だな~。……ん?てかあの感じ、母親の方が迷子だったのか?」


「あ~…。なんか有り得そうな性格っぽくはあったな」


 二人はしばらく、美人人妻とその子どもと思われる美少女の話で盛り上がっていた。




「───なーんて、今頃あのナンパ野郎二人には思われてるんでしょうね…」


「あははははははwそういうことだったのね~。だからいきなり私のことをママだなんてw幼い子どもの振りだなんてよく思い付いたわねぇ?」


「我ながら、良い救出方法と名演技だったと思ってます。あ、お茶どうぞ。水分補給が欠かせない季節になって来ましたからね」

※メンタル強者。


「ありがとう~♪助かるわぁ」


 駅までの移動中。さっきのナンパ事件を振り返って笑っていた。主に社さんが。


 美少女に擬人化した馬の育成ゲームの案件配信から2日経った今日。

 あの案件でリアル競馬に興味が湧いた社さんの誘いで、競馬場へ観戦しに行くことになった。


 “こっちの競馬にも”元々興味あったし、二つ返事でOKしたのだが……待ち合わせ場所に行ったらいきなり社さんがナンパされているとは思わなかったな…。

 まさか俺の容姿で「その人俺のツレなんだけど?」なんてイケメンムーブかましたところで説得力がない自覚はあったので、強引にその場から連れ出す為に社さんの子どもを演じてみた。

 結果。追って来なかったので救出は上手くいった思われる。


「それにしても、私って貴方くらいの子どもがいると思われるくらい老けちゃってるのかしら~?」


「そうは言いませんが、社さ……ああいや、篠宮さんってあの育成ゲームに出てくる人妻感満載の娘と似た雰囲気あるんで……まぁワンチャンいてもおかしくない程度には思われてても不思議はないですね」


 探せばいそうとはいえ、“社さん”とVの名前で呼ぶのはマズいだろうから本名で呼ぶ。

 ちなみに彼女が俺を名前で呼んでいるのは、名字より呼びやすいからだそう。


「夫どころか、彼氏すらいたことがないのだけれど~…」

「マジかよ」


 意外だな。篠宮さんほどの女性なら引く手数多だろうに。


「私ってほら。抜けてるところがあるからぁ」


「うーん。それだけで放っておくのかな?」


「そう言う優くんは、女の子とお付き合いしたり、告白されたこととかないの?」


「ないですね。たぶん同級生と先輩の奴らは、俺の可愛さに嫉妬していたんで」


 ただの推測だが。

 顔がキモいと馬鹿にしたり、暴力を振るって来てたのは、自分たちより可愛い男という存在が気に食わなかっただけなのだろう。

 もしそうなら肝っ玉の小さい女さんたちだよなぁ。


「ああでも、最近初めて告白されましたね~。その時は断りましたけど、今でもちょくちょくアタックと思われる電話が来ます」


「まぁ!そうなの?どんな子なの」


「火力が高い食いしん坊な年上合法ロリ系」


「わ~。アニメキャラみたいな子なのねぇ」


 いや“わ~”って。俺と貴女の同僚しかいねぇだろ今の情報からして…。彼氏いなかったのその鈍さも原因なんじゃねぇのか?


「優くんは、その告白してくれた子のことはどう思ってるの?」


 駅に着き、ホームで電車を待ち始めると篠宮さんが恋バナの続きをしたがった。雰囲気は大人のお姉さんだが、これでも俺と同い年。

 人の恋バナには目がないのかもしれない。


 ───なおその会話は、同じく電車待ちの周りの人たちにも聞こえていた。


「食わせがいのある面白い人って感じですね。出した料理全部、美味しそうに平らげてくれますし」


(え。最近の子って、そこまで進んでるの?私より進んでない?てか小学生くらいの子ってそんなに料理出来るもんなの?)


「へぇ~。じゃあ優くん自身の脈はありよりなのかしら~?」


「どうでしょうね?女の子を好きになれる環境で育ったことないんで、よくわかんないです」


(あの女の子に告白したの同性かよ!?マジか。今時の子どもの間では、同性愛とか普通だったりするのか?)


 優が女の子と思われるのも、完全に様式美である。


「あ~。そういえば結構大変な学生時代を送っていたんだっけ?それじゃあ仕方ないか~」


(ん?“送っていた”?)

(え。もしかして社会人なの!?あれで?)

(合法ロリ来ちゃあ~!)


「まぁ俺がクラスの女子より美少女だったのが悪いんですよ。可愛いは罪ってね(キリッ)」

「あはははははwww何よそれ~wとても男の子の発言とは思えないわよ~」


(((あれで男なのかよ!?)))

(どおりでなんか噛み合わないと思ったわ…)

(ほう…。全然イけるな)


 ───なんか変な会話してる親子がいると思っていた電車待ちの周囲の人たちは、心の中で一斉にツッコんだ。

 一部変態が混ざっていたこともあり、さながらミーチューブのコメント欄のようであった。




 しばらくして、目的の競馬場に到着した。

 すると篠宮さんは周りを見渡して、首を傾げた。


「あら~?予想してたより人が少ないわねぇ」


 競馬場は賑わってることには賑わっていたが、どうやら彼女が想像していた物より静かに感じているようだ。


「今日は重賞がないですからね。どうしても人が少なくなるんです。それでも有名馬の子どもがたくさん出走するからか、これでもまぁまぁいる方だと思いますよ」


「重賞って確か、G1~G3のことを言うのよね。ということは、今日はオープンとかプレオープンしかないってことかしらぁ?」


「そうですね。よく覚えておいでで」


「貴方が案件の時に、懇切丁寧に説明してくれたおかげよ♪」


 例の育成ゲームで、レースの種類なんかも教えたのだ。その中でも特にG1は予想が難しくなりやすいイメージがある。

 人気の高い馬が120億円を紙屑にしたり、逆に人気がビリの馬が勝って億の金が動いたこともあるからな。まさにギャンブル…。


「そういえば今日は賭けに来たんですか?それともただの観戦?」


「うーん。そうねぇ~……せっかくだから賭けてみたいわよねぇ。競馬民の人たちは、どうやって賭ける馬を決めてるのかしら?」


「それならまずはパドックを見に行きましょうか。あと10分ほどで始まるはずです」


「パドックって、ゲームでもあった一番人気とかを紹介してた、アレ?」


「はい。そのアレです」


 パドックが行われる場所へ向かいながら、説明を続ける。


「ゲームで各キャラのステータスを確認するように、こっちのパドックでもお客さんが馬の調子を確認するんです」


「なるほど~。それで賭ける馬を決めるね。……でもそれで本当に馬の調子がわかるものなの?」


「わかる人にはわかるんじゃないですかね?まぁ月曜日出勤のサラリーマンみたいな馬とか、わかりづらい奴もいますからねぇ。ただの参考程度に考えといた方がいいです」


「あはははははwそんな子までいるのねぇw」


 ゲームの方でもチラッと登場だけしてたな。その内実装されるんだろうか?


「そういえば優くん。競馬に結構詳しいわよね?やっぱりあのゲームの影響でそんなに詳しくなったのかしら」


「それもありますが、一番は母方の祖父が馬主だったことですね。背中にジョッキーを乗せるのではなく、ソリを引かせる競馬ですが」


「まぁ!お爺さんが馬主だったのね。しかもソリを引かせるレースだなんて……そんな競馬もあるのね」


「ええ。北海道名物の競馬です。探したら他の県にもあるのかもしれませんが」


 最後に見たのは中学に上がる前くらいだったか。こっちの競馬よりも図体がデカい馬ばかりで、力強くてかなり迫力のあるレースだ。

 たぶん擬人化したら全員が鉄球を圧縮出来るレベルのパワーがある。いやマジで。


「お爺さんの馬はどんな馬だったの?」


「何頭も飼ってましたからねぇ。パッと思い出せるだけで6頭います」

※実話


 なお内1頭はあだ名が“利かん坊”だったせいで、馬名を思い出せないんだよな…。おかんがソイツに身体をめっちゃ押し付けられて潰されかけてた思い出。


「6頭!?馬って確か、お金が凄く掛かるのよね?よくそんなに飼えてたわねぇ…」


「思い出せるだけでって話で、実際はもっといた気がします」


「へぇ~。その中でも自慢の馬は?」


「自慢か~。圧倒的なのは、一番大きなレースで二回勝ってる馬ですね。人気が低いことが多かったんですが……身内贔屓かもしれませんが、アイツは正直化け物でしたね」


 懐かしい顔を浮かべながら言う。

 アイツはあの欠点さえ無ければ、もっとレースに勝ってたし、人気も高かったんだろうなぁ…。


「あら?化け物と言うくらいには強いのに、人気は低かったの?」


「はい。というのもその馬、めっちゃマイペースなんですよ。あっちの競馬はソリに重りを乗っけて、その重さでレースのランクが変わるんですが……普通ソリが軽かったら、馬は速く走ると思うじゃないですか?」


「ええ。そうね」


「ところがアイツ。ソリがどれだけ軽かろうが、どれだけ重かろうが関係ないんです。常に同じ速度でしか走りません…。速くもなく遅くもなく」


「あら?」


「マジでほぼ自分のペースでしか走らないんです。騎手がどれだけ叩こうとお構いなしに。だから普通なら勝てるレースも負けたりするもんで、賭ける人が少なかったんです。……まぁ人気が低い中、勝つ時は勝ってたから、“伏兵”っていう二つ名がありましたが…」


 あの馬にとってレースは、散歩程度にしか思ってなかったと思う。

 白いアレより本気で走ったことない説あるぞ。たぶん。


「じゃあ優くんがその子を化け物呼びするのは、本気で走ったら凄く強いからなの?」


「そうと言いたいところですが、そんなところを一度も見たことないんですよねぇ…。俺がアイツを化け物と思っているのは、そのスタミナですね」


「スタミナ?」


「はい。俺の記憶のままであれば、あっちのレースは最大1トンの重りをソリに乗せて走らせます」


「1トン!?」


「もちろん今話してる馬も1トンを引いて走ったことがあります。そしてそんな重い物を引っ張って走ったら、大体の馬はゴール後にソリを外してもらうまで、疲労でまともに動けないんですが……うちの馬はソリごと帰って行きます」


「……え~?」


 レース後はソリを外してる映像が流れるのだが、その頃にはアイツはもういなくなってる。ソリごとな…。

 つまりアイツにとってレースはこんな感じだ。


『あー終わった終わった。散歩(レース)終わった。早く部屋に帰ろ~っと』


 人間で例えるなら、マラソン大会でゴールした直後にそのまま走って家まで帰れるスタミナがあるみてぇなもんだ。


「なんだか聞くだけでも凄そうね。その子のレースも見てみたいわ~」


「とっくに引退してますし、なんならもう天国に逝ってます。でもこの間ミーチューブで検索したら出てきたんで、いつでも観れますよ。ちなみに馬名は───」


 篠宮さんとそんな話をしていると、いつの間にかパドックの場所に着いていた。

 これから紹介されるのはオープンに出る馬たちで、全部で8頭いるようだ。


「えっと……今検索してみたところ、競走馬の腹回りと歩き方を見ると良いって書いてますね。でもこれマジで参考程度にしかなりませんね…。腹回りはまぁ太めに見えたり細目に見えたりと様々ですが、歩き方とかあまり違いないですね」


 顔を上げて真っ直ぐ歩いたり、やや下向きに歩いたりしてるくらいしか、まともな違いは見つからねぇ。

 あとは買っといた競馬新聞で親とかの情報を見るくらいか。


「うーん。どの子も可愛いってことくらいしかわからないわね~」


「そうですね。全員可愛いです」


「皆が怪我なく帰って来てくれたら、誰が勝っても良い気がして来るわねぇ」


「気持ちはわかります。何見ても決まらないなら、直感でも良いと思いますよ。大金注ぎ込む訳じゃないんでしょう?」


「そうね~…」


 しばらく悩む篠宮さん。

 ここに来るまで、彼女は無意識に妖艶さと物鬱げな雰囲気を醸し出してるせいか、常に周りの人から視線を向けられていた。

 そんな彼女が悩む仕草をしただけで、それらがまた際立ったように感じた。こちらに向けられる視線が増えた気がする。


 そしてそれは、人だけではなかった。

 1頭の馬がこちらに───正確には篠宮さんへ顔を向けた。


「───あ。今あの6番の子、こっちを見たわよね?」


「ええ。一瞬だけ、チラッとですが」


「前に聞いたことあるのだけど、目が合っただけで買った安い馬が実は物凄く強かったことがあったんだって。その話にあやかって、6番の子に賭けてみようかしらぁ」


「良いと思いますよ。そういう直感って意外と大事らしいですし」


 競馬で人生を一発逆転狙ってる訳じゃないんだ。遊びの範疇で留めるなら、それで賭けたって良いだろう。


「じゃあ俺も6番にいくらか賭けますかね。どうせ見てもわかんないんで」


「そうしましょう♪二人で一緒に、あの子を精一杯応援しましょう」


 しかしまぁ遊びとはいえ、思い切った選択したな~…。あの6番の馬は5番人気と、かなり微妙なラインぽかったぞ。

 ゲームならスキル次第で勝ち筋あるけど、リアルだとどうなんだろうなぁ。

次回はこの続きを書きます。

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