幕間。ロリィーの気持ち
普段より短いです。
今月20日にもう1個投稿するかは、私の気分次第です。
「こんのふざけんなよ運営!?俺はその特殊攻撃出来るキャラ二人しかいないんだぞ!てか実装済みなの4人だけだべや!?誰もが暗闇で怖がらせる面白ランタン妖精を引いてると思うなー!!!」
どうも。ただいま某オープンワールドRPGで高難易度コンテンツを実況中の男の娘です。はいスハ・ノヴァです。
このゲームは特定のキャラがいないと攻略が難しい敵がいくつか存在するが、最近新しく追加された敵は輪を掛けて難しい。
なんせそいつを倒す時の推奨キャラが4人しか実装されていないのだからな…。
「こうなったらゴリ押しじゃ!水でダウンさせて、あとは師匠とシェフでぶん殴ってやる!?」
苦節30分。試行錯誤の末、導き出した答えは火力によるゴリ押しである。
4凸までしてた最強アタッカーのお陰で、1分も掛からず終わらせることが出来た。復刻来たら絶対完凸するんだ…。
「へっへー!調子に乗るからだデカブツ!ギミックが役立たなければ何も出来ないんだね~。ざーこ♪ざーこ♪」
『ざーこ!?www』
『草』
『メスガキやんw』
『声が可愛いから許されるやつw』
『男なのにメスガキとはこれ如何に?』
『可愛いければ一向に構わん!』
『メスガキボイスよろ。言い値で買う』
ちなみにこの高難易度コンテンツは前半と後半に別れており、キャラをそれぞれ4人ずつ配置しなければならない。まぁ単騎でもやろうと思えばやれるけど。そんな変態はなかなかいない。
さっき文句垂れてたのは前半だ。後半は女性なのに父親を名乗ってる最強のお父上で楽々攻略してる。
「お父上最強!お父上最強!無凸なのに強すぎる!その麗しぇ瞳で私を見つめてぇ♡」
ちなみにその瞳を見つめすぎると見てはいけない物を見るかもしれないので、今の俺の発言は自殺行為の可能性が高いですはい…。
『お父上www』
『そんな風に呼ぶ人もまぁいるけどもw』
『無凸でもそうそう腐らんよなこの人』
『初心者でも安定して使えるし。マジで最強…』
その後の最後の敵たちは、普通に雑魚だったのですぐに終わった。
マジで害悪ギミック嫌だね…。敵が強いんじゃなくてギミックがウザいは本当にストレス貯まるわ。
「それでは本日はこの辺で失礼致します!さようなら~♪」
スパチャ読みも終わり、配信を終了する。
今日も配信は同接1万の大盛況だった。チャンネル登録者もいつの間にか100万人越えてたし、今度100万人達成企画とかやらないとな~。そうすればもっと盛り上がるはずだ。
「さてと。腹も減ったことだし……納豆タイムだ!」
炊いといたお米をよそい、トンカツをレンジでチン。納豆とキャベツの千切りも冷蔵庫から取り出して遅めの晩ご飯の時間である。
「配信お疲れ様ノヴァくん。今日もご飯美味しかったよ」
「それはお粗末様した」
ちなみにロリィーさんはまだいます。
だけどそれも今日が最後だ。
「ようやくカードが再発行されましたね…」
「うん。やっと家に帰れる」
結局。ロリィーさんの落とした財布が届いたという連絡は来なかった。カードの再発行の方が先に終わり、今彼女の手元にそれがある。
「今まで本当にありがとうね。いっぱいご飯を作ってもらっちゃって……この恩は絶対に忘れない」
「そんな大袈裟な。困った時はお互い様ですよ」
彼女が満足出来るだけのご飯を作るのは大変だったけど、ぶっちゃけ凄い美味しそうに食べてくれて嬉しかった気持ちの方が大きかったし、割と役得だった気がする。カードが再発行出来たのに晩ご飯をご馳走したのは、そういう面もある。
毎度のことながら、疲労はマジでえげつなかったけど…。
「はい、これ。今までのお食事代だよ」
そう言って机の上に置かれたのは、大量の札でパンパンになっているであろう封筒だった。封が閉じきっていないのだが…。
「あの……食事代を払ってくれるのは良いんですけど、これたぶん多すぎるんじゃ…」
「人件費分も入ってるよ。だってノヴァくんってば、大丈夫って言ってるのに満足するまで料理を作ってくれるんだもん。それも毎回。それなのに食費だけだなんて、薄情でしょ?」
「だとしてもこれは多いような…」
「受け取らないならこの身体で払うよ」
「なんだその意味わからん脅しは!?怖ぇよ!てか自分の身体は大切にしてください?俺がそれを受け入れて襲うような男だったら完全にヤバかったですよ、マジで…」
それくらい信頼してるという意味で言った冗談なんだろうが、ドキッとするからやめてほしい…。
そう思っていると。ロリィーさんは頬を赤らめて俯き、モジモジしながら言った。
「……経験はないけど、ノヴァくんにだったら……襲われても、良いと思ってるよ…?」
「……スゥー…。お、襲わん。襲わんぞ俺は…!?納豆、いただきまーす!!!」
「うふふ。残念♪振られちゃった。思ったより意志が強かったみたいだね」
「そういう予定は、今はまだ無いんで…。申し訳ないですけど」
あんな顔で、あんなことを言われれば、女の子に対して嫌な思い出しか無くとも。ロリィーさんの“気持ち”には察しが付くというものだ。
だが少なくとも今は───恥をかかせることになるとしても、“それ”は丁重にお断りさせていただいた。
「……見た目に似合わず、火力高いっすね…。ロリィーさん…」
「いぇーい。とりあえず今回は私の勝ちだね♪」
「一体なんの勝負してるんですか…」
────────────
もう大丈夫だよ。そう言った私に、君は首を横に振る。
「そんなにお腹鳴らしておいて、説得力ないですよロリィーさん。待っててください、今パエリア作ってるんで。もうすぐ出来ますよ」
この約2週間の間。彼はいつも笑顔で、私に料理を振る舞ってくれた。
最初は本当に飢えが苦しくて、つい我儘を言ってしまった。お腹一杯食べさせてもらうのは、その時だけにしておこうと自粛していた。
それなのに彼はそれを許さない。許してくれない。必ず私が満足するまで食べさせてくれる。
何度も何度も。長時間キッチンに立つなんて辛いはずなのに。疲労を顔に出しても、決して嫌味になるようなことは言わない。
私が空腹でいることを許さない。ただの先輩で、ただの居候であるはずの私が、何度断ろうとも絶対に満足させようとする。
その優しさが申し訳なくて、心が痛かった。
でもそれ以上に───その優しさが。すごく、温かかった。
『ごめんね千石。これだけしか食べさせてあげられなくて…』
『稼ぎが少なくてごめんな…。腹一杯食わせてやれなくて、ごめんな…』
今よりもっと小さかった頃は、水と草だけで飢えを凌ぐことも珍しくなかった。
まともな食事を摂ったところで、私のお腹を満たすことはなかった。
お父さんの頑張りで、ちょっとずつ家が裕福になっても、私だけはずっと空腹のままだった。
結局。実家にいる間に満腹を経験したことは、一度もなかった。
ノヴァくんの家に居候させてもらう間は、またそんな空腹の日々を過ごすことになると思っていた。
それなのに……私のお腹も、心も。毎日満たされていた。
「ふぃー。今日もいい戦いだった…」
「いつもありがとうね。ノヴァくん。……ごめんね。大変だよね?こんなに料理を作るなんて…」
謝るのは違う。なるべくお礼を言うようにしていた。じゃないと失礼だから。
それでも申し訳なくなって、つい口から謝罪の言葉が出てしまうこともあった。
でも君は。必ず笑って言うんだ。
「気にしないでください。目の前で空腹に苦しんでる人を放っておくとか、俺には出来ないんで。それに……あんなに美味しそうに食べられると、俺も嬉しいから」
その笑顔と。その言葉をくれる君は。本当に温かかった。
君にとってこれは。困っている人を助けてるだけ。という感覚なのだろう。
でも。それだけで───“十分”だった。
君に。“初めて芽生えた感情”を向けるのには。本当にそれだけで、私には十分すぎるものだった。
「……見た目に似合わず、火力高いっすね…。ロリィーさん…」
私の気持ちを知った君は、耳まで顔を真っ赤にする。
それが可愛くて、謎に勝ち誇った気持ちになった。
だって少なくとも───君の心を掴むチャンスが、私にもあると思ったから。
「ねぇ。ノヴァくん」
「はい?なんでしょうか…?」
「……他に目移りしちゃっても構わないよ。君にも選ぶ権利があるから。でもね───」
彼の頬を挟むように。両手を添えて、私は微笑んだ。
「その度に。私に振り向かせるから」
それを聞いた君は。さっきよりも、顔が赤くなった。
ヒロインレースという物は好きですが、少ない人数でやりたいです。




