★駅で
駅に着く数分手前頃から、田波とその従兄の話を聞いた。話を聞いて、俺はその従兄は狂ってるとしか思えなかった。別に俺はいとこ同士で好きになるのを否定はしない。恋愛は人それぞれだから、偏見はしない主義だ。だけど、これは流石に可笑しいだろ。
手に入らなかったら死ぬ?
それは相手を困らせるだけ。それは相手に責任をずっと負わせ続け、ずっと苦しい思いをさせるだけ。本当に相手を思っているのなら、そんなバカなことはしないはずだ。ろくに恋愛などしたことのない俺でも、考えれば分かることだ。
「確かにそうかもね」
その旨を田波に伝えると、力なく微笑みながらそう呟いた。それ以降会話は途切れ、沈黙のまま駅に着いた。
「送ってくれてありがとう」
駅に着くと、改札口に入る前に田波にお礼を言われた。
「どういたしまして」
いつものように改札口に定期を通そうと田波はしたが、突然動きが止まった。何かに驚いたように、一点を見つめ続けている。
「どうした?」
不審に思った俺は、田波に声をかける。が、田波の次の言葉で俺も驚くことになる。
「……優斗兄さん」
奥の方から現れたのは、20代前半の若くて優しそうな男の人だった。ここで、先程の田波の言葉を思い出そう。田波は確かこの人を見て"優斗兄さん"と呼んだ。
は? ちょっと待て。死んだのに何でその人本人がここにいるわけ?
その人をじっくりと観察してみたが、シンプルなホワイトシャツに黒のチノパンと至って普通の格好だ。そもそも体は宙に浮いていないことから幽霊ではないことを悟る。いや、幽霊じゃなくても死んだと聞かされた相手がいるのだから怖いのだが。
「田波、この人がお前の言っていたお兄さんなのか?」
自分の頭を整理したくて、田波に問い掛ける。少し間があったが、田波は肯定を表した。
「……うん」
きっと松下くんが不思議なように私も不思議だから、とそのあとに付け加えながら。そこで漸く今俺達を不思議がらせている本人が口を開いた。
「優香。……迎えに、来たよ」




