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淡き幻想の彼方へ

淡き幻想の彼方へ外伝 シヴァ編

作者: リィズ・ブランディシュカ



 小さな村に住んでいるその男は、害獣を駆除する仕事をしていた。

 しかし毎日、それだけでは暮らしていけないので、町の見回りの治安維持活動などにも参加していた。


 そんな男の元へ、依頼が入った。

 つい最近、害獣に少年が食い荒らされたらしい。

 果物を採取しに行った子供が無残な姿で発見されたそうだ。


 放ってはおけない。

 そう思った男は、害獣退治の依頼を引き受ける事にした。


 森に入った男の名前はシヴァ。

 どんな状況でも冷静にいられる男だった。


 昔、若いころに小国の戦に参加した事があったため、並大抵のことでは心をみだされないはずだった。


 しかし、そんな彼にも冷静ではいられない状況がある。

 それが子供の死だ。


 シヴァは戦に利用されて、無残な死を遂げていった子供達を多く見てきた。

 できるだけ子供が死なない世の中になってほしいと、彼は常日頃から思っていた。





 森に入ったシヴァは害獣退治を淡々と進めていくが、大雨に振り込められて雨宿りする事になった。

 そして、たどり着いたのはさびれた研究所。


 シヴァは訝しみながらも、その建物へと入っていった。

 中は、比較的手入れが行き届いていた。


 誰かが定期的にメンテナンスに訪れているのかもしれないと思った。

 中に入ったとたん、シヴァは人の気配を感じた。

 それは多くの人間の気配。

 数えきれないほどだった。


 シヴァはすぐさま、それば何なのか理解した。

 それは怨念だった。

 死んでも死にきれない、人の想いが形を成した物。

 勘の良いシヴァは、戦場でたびたびその気配を感じていた。


 だから警戒はなれたものだった。

 怨霊に取り殺されないように注意しながら、彼は歩いていった。


 研究所の中には、様々な部屋がある。

 建物の高さはざっと五階ほどあったが、外から見たら三階建てのようにしか見えなかったことを思い出した。


 内部はおそらく空間が歪んでいるのだろうと推測した。





 シヴァは、その研究所の中を細かく観察していった。


 そして、その研究所は、何らかの非道な実験を行う研究施設であると見抜いた。


 犠牲になったのは、幼い子供達。

 身寄りのない孤児などを集めて、実験が行われたのだろうと思っていた。


 その証拠に、研究所を歩いていくとたびたび子供の笑い声や泣き声が聞こえてきた。


 しかし、彼等は悪さをすることはない。


 じっとシヴァの様子を窺うのみで、手を出してはこないようだった。


 シヴァは己の内にある、お守りに手をやった。


 浄化の力がある石を持っていた。


 それがあるから、怨霊は、シヴァにちょっかいをかけられないのだろう。


 シヴァは、研究所の中を探索していった。






 やがて、屋上に出たシヴァは、外で未だに雨が降っている事に気が付いた。

 今、この研究所から抜け出したら、風邪をひいてしまうかもしれないだろう。


 しかし、シヴァはその場を後にすることにした。


 この施設の怨霊は強すぎる。

 シヴァにはどうする事もできなかった。


 何もできないシヴァがするべき事は、すみやかにその場から離れ、この研究所に人が近づかないようにするだけだった。


 シヴァは、屋上から建物の外へ降りていった。


 唐突に足場が崩れたり、窓から化け物が現れて彼を突き落とすような事は起きなかった。


 彼は無事に研究所を出て、元の村へと帰っていった。



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