初めて剣を志した日
この作品では以後、前書き・後書き、は一切ありません。読者様が、作品に没頭して頂く為です。
ですので最初で最後のお願いです、面白ければ★5個、つまらなければそれにふさわしい星の数をページ下の箇所より入れて頂ければと思います。
そしてブックマーク、感想、常にお待ちしております。
後書きに書かない、作者の思い等は活動報告にあげてますので、よろしければ見てください。
それでは皆様、作品の方を宜しくお願い致します。楽しんでいただければ幸いです。
―聖竜暦1381年、ナシュドミル王国。
モンタルナ地方、モンタプータ村。
「エイ、エイッ、やぁー!」
まだ3歳の自分が初めて木剣を取った日の事は忘れられない。
これまで住んでいたハルアーナ王国に在る、生家のグルヴァン家を追い出され、連れてこられた日だったからだ。
それで名前が変わった。
昨日までバーケスノと呼ばれていたが、今日からはヤークセンと呼ばれるようになる。
ハルアーナ人の名前から、ナシュドミル人の名前に変わったのだ。
なぜこうなったのかは、正直分からなかった……
その日、今年最初の雪が降った。
降る雪の中、自分は怒りと、悲しみ、寒さと憎しみの中で夢中になって剣を振る。
型も何もあったものじゃない。
そんな自分の様子を、出会ったばかりの男が、じっと傍で見守っていた。
「君……どうして剣を振る?」
彼はこれから自分の世話をすると言う、南方生まれの外国人だった。
「アイツらがね、自分をね……」
頭の整理がつかず、たどたどしく悲しみを吐き出した。
数日前に、父親が死んだ後、生家を追い出された幼い自分。
母親も叔父も自分を引き取らなかった。
そしてこれからは、この外国人が自分を育てる事になる。
……ついさっき叔父にそう言われた。
その後自分は、何も考え無しに、この新しく住む、このボロ家の床に落ちていた小さな木剣を手に取り今に至る。
後にこれはナイフの練習の為の木剣だったと知るが、この日はそれを知らない。
とにかく、何か悪い事をしたのか?
この人は自分を叱るのか?
そう思って項垂れたのを覚えている。
「剣を習うか?」
男がそう言ったので、自分は思わず彼を見上げた。
「強くなれば此処を出る事も出来よう。
お前が大きくなり、一人前の剣士となったならな……
戦えれば、戦えない者よりも自由になれる。
強くなりたいか?」
「……強くなりたい」
男はそう答えた自分の頭を撫でた。
男の名は“世捨て人”エラーコンと言った。
自分を育てた男、そして我が剣の師。
彼に出会わなかったら、きっと女友達に出会う事は無かったのだろう……
崇める神の違いで、いくつかの世界に分断された大陸がある。
そんな世界の一つを、女神フィーリアを崇める人々が住む地と言う意味で、フィロリアと言う。
フィロリアには4つの大国があり、この4大国の中で最も北に在る国を、マルティ―ル同盟と呼んだ。
このマルティ―ル同盟は偉大なるエルドマルク王を頂点とする、ハルアーナ王国、ナシュドミル王国が連合して出来た国だ。
そしてハルアーナ、ナシュドミルの王も又エルドマルクの王であり、この様に同じ王を戴く国の連合体を“同君連合”と呼ぶ。
……現在この連合国家マルティ―ル同盟の盟主にして、エルドマルク王国の王は、女王クラーラ一世である。