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89 恩師のガンボ・お泊まり添え

「次の物々交換やけどな、来週ここでやって貰うで」


等と野菜狂信者の子供達を治療しながら仰られて、焼きそば付きのお好み焼きを12枚も食って帰られたトゥール様のお言葉を全員に伝え……


流石に仕入れに行く暇がないのでタープとマリア、キャリに頼んで手紙を出して貰う事にした……一通送るのに3バラン掛かるが仕方ない。


キャリはマレスに【アンチョビや鰹節の仕入れと物々交換の誘い】を、マリアにはロリババアに【大量のイモとコメ酒】、タープはグリルに【羊の骨付きロース肉とラズベリーワイン】を頼んで貰った。


本当なら俺が自分で書くべきなんだろうけど、この世界の文字は未だに読めんからな。


マレスの場合は俺よりキャリが誘った方が嬉しいだろうとは思うが。


「お兄ちゃん、オヤッサさんがオクラ採れたって言ってたから塊のベーコン渡しておいたよ」


「お、マジか!」


よし、これでようやくガンボを作れる!


必要な材料はある程度揃ってるし、ソーセージは昨日燻製しておいたから後は米を固めに炊飯して……


「ボーイ、ガンボは俺が作るからマカロニを頼むぞ」


「あー、うん……来るだろうとは思ってた」


「何だ、つまらんな」


って俺を驚かせる為だけに突然来やがったのかジョニーさん!


いや、ガンボを食いたかったのもあるだろうけど。


「スミマセンね、主人はガンボとやらを楽しみにしてまして」


「あんなに張り切ってるパパは久しぶりに見たよ」


「ラビナさんにベルも来たのか……まあ、念願のガンボを食えるとあれば連れて来るよな」


「ハハハ、だがボーイだってベーコン・エクスプロージョンかバッファローウィングを作ると聞けば飛んで来るだろう?」


「否定はしない!」


どっちも俺の好物だからな。


むしろ行かない理由がないだろ。





「ほぅ、アメリカ式のアンドゥイユか……いい仕上がりだぜボーイ」


「何故か知らんがジョニーさんに普通に誉められるのは違和感があるな……」


「ハハハ、たまには素直に喜べ」


アンドゥイユというのは燻製した豚の肩肉を荒挽きにして作るソーセージの事で、仕上げにまた燻製するのが特徴だな。


主に煮込み料理に使われる事が多くて、全体にスモーキーな香りが移るけどそれが美味いんだ。


今日か明日にはオクラが採れると思ってベーコンと一緒に作っていたが、用意しといて良かった。


「そういやジョニーさんのガンボにはワインが欠かせなかったけど、ブドウはないから何を使うんだ?」


「そうだな、ガンボならボーイのお気に入りのラズベリーがいい」


「あれ結構貴重なんだぞ……必要なら使うけど」


仕方ない、追加は手紙で頼んだばかりだし何とかなるだろ。


それとオクラの他は鶏肉にピーマン、タマネギ、トマト、ジャガイモ……後はひよこ豆を用意してある。


「他に足りない物はあるか?」


「なら固茹で卵とパプリカパウダー、それとケチャップも頼むぜ」


パプリカパウダーはトゥール様に頼んで買ってきて貰ってるから幾らでも使ってくれ。


ケチャップも可愛い妹がいつでも使える様にしてるから問題はない。


だが固茹で卵だけは今から茹でるしかないな。


「苺心、人数分の卵を買ってきて固茹でにしてくれ……代金は俺の財布から出す」


「はーい」


これでよし、クラムチャウダーの時もそうだったがジョニーさんはガンボを作る所を誰にも見せたがらないからマカロニを作るか。


まあ家庭の味って言ってたからなぁ……秘伝の何かしらがあるんだろう。


マカロニは以前も作ったベンネだから説明は割愛する。


おっと、今のマリアは米に飢えてるしあれば両方食うだろうから米の炊飯はしておこう。





よし、ベンネは茹でてコーン油をまぶして冷ます、と。


調子に乗って大量に作ってしまったがまあ残ったりはしないだろう。


米も後は蒸らすだけだ。


「ベーコンとエビフライ、そのベンネをつまみ食いしたら夕飯がマスタードになると思え」


「ヒャッ!?」


おっと、今回はエビフライだけか。


よく見たらベーコンはキャリと一緒に居たな。


可愛い妹が殻を剥いてる茹で卵を狙ってるだけな気もするが……


「ベーコン、つまみ食いしたらパパがマスタードしか食べさせてくれなくなるよ!」


「ンナッ!?」


……まあ、ちゃんと教育はしてるみたいだからいいか。


そういやジョニーさんの方はどうなったかな?


「よし、上出来だ」


おお、オクラでトロミの付いた赤いスープからスモーキーな香り……これは絶対に美味い奴だ。


「このアンドゥイユは本当にいい出来だな、余ったのは貰っていいか?」


「ああ、構わないよ」


「よし、来月までにまた作っておけ……クラムを生でやる時はマレスにシーフードガンボを食わせてやりたいからな」


「そいつはいいな、マレスも喜ぶだろ」


「それとワイフ達やストロベリー、お嬢ちゃんには黙っておけよ、言ったらボーイが酒を飲めなくなっちまうんだろう?」


お気遣いありがとよ……少し泣く。


一緒に行く理由を考えるのが大変そうだが、貝と酒の為にも捻り出さんとな。





「このガンボっちゅースープ、マカロニやコメを一緒に食うたら美味いわぁ」


「ベーコンより香りが強いけど、この味付けに合ってて美味しい……コメにも合う」


「ガンボを食べてるとカレーも食べたくなるよね……でも美味しい」


まあ煮込んだスープを米にぶっかけて食う訳だしなぁ……日本人ならカレーを連想するのも仕方ないだろう。


だがカレー粉はないし作り方も知らんからな……


「流石の俺もカレー粉は解らんな」


ジョニーさんも知らないか……元々ジビエ系が得意分野だし、アメリカじゃ余り食わないから無理もない。


「……時にお嬢ちゃん、ライスとマカロニを一緒に盛って食うのはどうかと思うぜ?」


「だってどっちも美味しいから、一緒に食べたらきっと美味しい!」


キャリ……タープが真似するから炭水化物の同時盛りは止めような?


せめて器を2つ使いなさい。


「お兄ちゃんもこの前焼きそばとお好み焼きを同時に盛ったじゃん」


「お好み焼きというより小麦粉はオカズだから問題はない」


「それ、ベーコンが調味料に匹敵する暴論なんだけど?」


誰が何と言おうがベーコンは調味料だ。


ダニエルさんがそう言ってたから間違いない。


「ボーイもストロベリーも落ち着け、ベーコンは野菜だ」


成程、確かに野菜として使う場面も多いな。


あのレシピ本にもベジタブルサンドイッチにはベーコンが欠かせない、とも書いてあったし。


「……ホンットこのバーベキュー馬鹿達は」


ハハハ、誉めたっておかわりしか出せないぞ。


「ハハハ、誉めたってこのガンボのレシピはやれんぞ」


「いや、誉めてないから」





「じゃ、アンドゥイユとベルの事は頼んだぜ」


「おう」


何故かベルは暫くウチで預かる事になった……


マレスが使ってた部屋が空いてるし、可愛い妹も喜んでるから問題はないんだがいきなりどうしたんだ?


「スミマセン、私がイチゴちゃんのお友達に会ってみたくてお願いしたんです」


ああ、桃花に会ってみたかったのか。


確かに来週になったら来るからな。


「そのお友達は凄く強いそうで、ぜひ手合わせして欲しくて!」


……この性格はラビナさん譲りだな、間違いない。


だがジョニーさんの娘とあれば変な物を食わせる訳にもいかんし、マレスの時以上に注意せねば。

ガンボのトロミはオクラに限る(個人の意見)

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