85 シーバスの捕獲・激辛シャークパイ添え
よし、いよいよシーバスを料理する時が来た。
この世界のシーバスは弾丸の様に飛んで来るそうだから俺と可愛い妹にキャリ、そしてマレスとサーマが港で待ち構えている。
ジョニーさんはペグさんの船に乗ってラビナさんとベルを連れて一足先に沖に出た……まあ鮫がシーバスと一緒に飛んで来たらそれこそB級映画になっちまうからな。
それにしても……本当にあの虫取り網みたいな道具でシーバスが捕まえられるのか?
というか可愛い妹とキャリの分はあるのに俺とマレスの分の網がないのは何故だ?
「いいかいアンタ達!トビバスは地面に落ちたら味が落ちちまうから死ぬ気で捕まえるんだよ!」
「「「「「「「おおぉーーーっ!?」」」」」」」
参加者のやる気が物凄い熱気を放っていやがる……そんなに食いたかったのか?
裏を返せばそれだけ美味いって事ではあるが。
「更に今年は私の娘と、私の幼馴染が認めた優秀な料理人が今まで見た事がない美味さの料理にしてくれるから期待してな!」
「「「「「「「うおおぉーーーっ!!?」」」」」」」
って全員分の料理を俺とマレスに作らせるつもりかコラ!
流石に無茶だろ!
「捕まえるのは私に任せてバーベキュー頑張ってね、お兄ちゃん」
「パパもマレスお姉ちゃんも頑張ってー!」
可愛い妹と娘の声援とあればやってやらぁ!
「あの師匠、私はカルパッチョで手一杯になると思いますが」
「つまりバタしゃぶは俺一人で作るしかないのか……まあ、何とかするさ」
ジョニーさんは鮫を捕まえる為に来たんだし、可愛い妹も鯵や鯖ならまだしもスズキみたいな大きめの魚はやった事がないしな。
残った面子も料理が出来ないとあれば死ぬ気でやるしかない。
……しかしアレだな、本当に勢いよく飛んでるスズキを見てると深夜に見かけたサメ映画を思い出してしまう。
皮の色が群青色で鱗が真っ赤ながらサイズや太り具合は食べ頃だし、脂も乗ってそうだ。
そして全員が網で捕らえたスズキの頭に千枚通しの様な針を刺しているが……あれは何だ?
「あれは確かパパが迷い人から習った【シンケイジメ】って技術ですよ、ああするとお魚が動かなくなって美味しく食べられるとか」
成程、神経締めか。
難しい理屈は解らんが神経締めをすると死後硬直を防ぎつつ鮮度が長続きするとかしないとか……
「因みにあのタコヤキ返しは女神様のお手製で、お魚を刺すと電気を流せるとか……そうするとどんなお魚もオサシミに出来るそうです」
おいトゥール様……日本でもつい最近になって作られた技術を早速流用してんじゃねぇよ。
採れた魚に電気を流すのはいわゆる寄生虫対策で、コストは掛かるらしいが安全に、かつ冷凍するよりも美味しく食えるそうだ。
まあ、当然のごとくそこまでして刺身を食いたいのか?って言う奴も居るがな。
だが刺身は美味いんだから仕方ない。
「お兄ちゃん、マレスちゃんもそろそろ捌き始めないとお魚が腐っちゃうよ」
おっと、いつの間にか大漁だな。
鮮度を保てると言っても限度はあるし急いで捌こう。
スズキはまず鱗を剥いでエラに沿って頭を落として、と。
「動くな」
……やはり来やがったか野菜狂信者め。
ふと見たらマレスの背後にも居たが幸いにもサーマが気付いてくれたらしいし、まずはいつも通りの時間稼ぎだな。
「本当にお前は俺と縁がありまくるな、まさか俺のストーカーなのか……えっと、アーメン」
「アメーラだ!」
こいつの名前は至極どうでもいいとして、俺一人なら多少の怪我ぐらい構わんがマレスを危険に晒す訳にはいかん。
可愛い妹の友達で俺の一番弟子だしキャリのお姉ちゃんだからな。
「で、今回の狙いはトビバスか?」
「いや、そのトビバスを餌にするシャークが必要でな……ついでに貴様を釣り餌にしてやる」
まさかの鮫狙いだったか……となるとジョニーさんが危ないがペグさんやラビナさんが居るならまあ大丈夫だろう。
後はふん縛ってから聞き出すとして、マレスが人質で誰も動けないこの状況はどうした物やら。
「ベーコン、エビフライ、やっちゃって!」
「ンナー!」
「ヒャー!」
うわっ、背後から強い風が……やるなベーコン!
だがこれで隙が出来た!
「ウチの娘に何してんだおらあっ!」
「ゲボォッ!」
よし、マレスの救助は出来たな。
マレスを人質にした野菜狂信者は背中が氷っていたが……まあ生きてりゃいいだろ。
それにしてもサーマの奴、割と距離があったのに一瞬で詰めやがったな。
マレスに指導してたし大丈夫だとは思うが絶対に怒らせない様にせねば……
「もっかい!エビフライ、お願い!」
「ヒャー!」
「なっ、私の足が!」
エビフライはベーコンより魔力が多いんだな……
「セイッ!」
「グフゥッ!」
か、可愛い妹よ……いくらムカつく相手だからって股関を蹴るのは止めてやれ。
それは見るだけで痛いんだ。
現にギャラリーの男達も前屈みになってしまっているからな。
「災難だったなボーイ……だがこっちもシャークの餌になりかけたベジマニア共を連れて来てやったぜ」
「シャークも4匹釣れた」
えっと、今回は合わせて6人か。
一気に半分のノルマを達成できるな。
しかし鮫がデカいな……小さめのクジラぐらいデカい。
「それでお兄ちゃん、今回は何を食べさせるの?」
「折角の海だしこの場に大量にある、シカゴピザ級のシャークパイはどうだ?」
「ハハハ、そいつはいいな!」
という訳で作ろう。
パイ生地は可愛い妹に、鮫を捌くのはジョニーさんに任せて俺とマレスで作る。
というかジョニーさん以外の誰もが鮫を捌けんからな。
まずは鍋にバーボンとバターに少量のハチミツ、塩コショウを入れて混ぜて、と
後は鮫を一口大にカットして鍋に突っ込んで煮るだけだ。
この辺の作業はマレスに任せよう。
その間に俺は大量の唐辛子の種を取って、千切りやみじん切りにしていく。
「パイ生地は出来たよ」
「よし、仕上げるか」
下段は丸ごとの唐辛子と粒のままのコショウ、中断に煮込んで水気を切った鮫とみじん切りの唐辛子、上段に千切りの唐辛子を入れて包み卵黄を塗って焼く。
「おいおい、随分とタップリ唐辛子を入れたな」
「こいつを食うのは野菜狂信者共だからな」
「ああ、ベジマニア共なら別に構わんな」
おっと、続いて俺達が食うシャークパイも作っておこう。
これは唐辛子抜きで普通に作るけどな。
「因みにベーコンとエビフライ、こいつは凄く辛いからつまみ食いをするなよ?」
「ンナッ!」
「ヒャッ!」
よし、出来た。
食わせてる間に可愛い妹とキャリには先に食べさせるとして、熱い内にサクッと済ませよう。
「という訳でペグさんとサーマ、後ギャラリーの数人はこいつを食わせるのを手伝ってくれ」
「了解した」
「おい止めろ、前回は翌朝に酷い目に合ったんだぞ!せめてそのハラペを抜け!」
「安心しろソーメン、貴様とマレスを危険な目に合わせた奴の分にだけは大量の一味唐辛子を掛けて食わせてやる」
「だからアメーラだ、増やしてど辛ぁ!?」
俺はまだしも自慢の弟子を怖がらせた罰だ、しっかりと地獄を味わうんだな。
「所でボーイ、ギャラリーの何人かがそのパイに興味があるらしいぜ?」
「マジか、だが追加を作ろうにもトビバスをどうにかしなきゃならんからなぁ」
「シャークパイは私とキャリちゃんがやるから、お兄ちゃん達はシーバスを料理してて」
なら遠慮なく頼らせて貰うか。
バーボンで煮た鮫は美味い




