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84 娘と作る手作りバター・恩師のクラムチャウダー添え

ようやくペスカタに着いたがのんびりする前にサーマの所に行って夕飯の準備とバターを作らねばならん。


ベーコンを売ってマレスの修行の結果を報告して、例によって宿はサーマが手配してくれたらしいがジョニーさん達は……


「安心しなボーイ、俺達はペグって奴に雇われて来たからな……宿は手配済だぜ」


ペグってサーマの旦那じゃねぇか……って事は泊まる宿は同じだな。


つまり夕飯はジョニーさん達の分も必要らしい。


シーバスは明日まで現れないらしいし、ベーコンも売った所で準備をするか。


「ボーイ、夕飯は俺も手伝ってやるから先にバターを作っちまいな」


「そうさせて貰うわ」


となればまずはミルクを買ってくるか。


「そういや、4キロのバターを作るならどれぐらいミルクが必要なんだ?」


「必要なバターの量の最低10倍ぐらいだよ」


最低10倍って事は……40リットルも必要なのか!?


そりゃ金も掛かるわな。


可愛い妹がハチミツを報酬に要求するのも納得だわ。


というか作ってはくれないのにそういう事は教えてくれるんだな。





という訳でミルクを念には念を入れつつ1樽……大体50リットル買って来た。


次にこれをどうすればいいんだ?


「パパ、このミルクにバターと同じ味付けして!」


バターと同じ……よく解らんが塩とガーリックパウダー、香り付けにジンジャーの絞り汁を入れて、これでよし。


「エビフライ、お願い!」


「ヒャー!」


って樽が氷った!


成程、エビフライは氷の魔法が使えるのか。


次からエビフライに氷らせて貰えば氷代が浮くな。


「それじゃベーコン、頑張って!」


「ンナー!」


氷った樽を風で浮かせて上下に激しく振ってやがる……器用だなベーコン。


2匹の夕飯はベーコン山盛りにしてやろう。


「そしたら、パパはキャリを肩車して!」


「ん、ああ……解った」


なぜ肩車する必要があるのかは解らんが可愛い娘のお願いとあればやるしかない。


しかしミルクに味付けして振るだけでバターが出来るのか?


「ヒャー」


「うん、解った!パパ、バターを入れて冷やせる入れ物を用意して!」


入れ物か……それならもう用意してある。


いつもの金属加工で、1キロ分のバターが入る容器を4つ作って持って来た。


これならクーラーボックスに氷と一緒に入れられるし、固まっても取り出しやすい。


余ったバターは今日の夕飯に使えばいいし。


樽を開けてみれば白っぽい液体の中にコロッとした物があったがこれは間違いなくバター……


「ミルクを容器に入れて、冷やしながら思いっきり振る事で分散してる脂肪分同士がくっついてバターになるんだよ……ガラス瓶やペットボトルでやれば割と簡単かな」


うーん、そういう難しい理屈は解らん。


だが瓶やペットボトルでも作れるなら今度試してみよう。


酒瓶なら山ほどあるし。


「因みにその透明な液体は脂肪を取り除いただけのミルクだから普通に飲めるよ」


成程、ちょっと飲んでみたら味が薄いけど間違いなくミルクだ。


だからってこんなに飲めんし……これも夕飯に使うか。


「ようボーイ、上質な蛤や牡蠣がたっぷりあったからクラムチャウダーを作るぞ!」


「そいつはタイムリーなメニューだぜ」


これで絞りカスのミルクを消費できる。


ついでに牡蠣は幾つか冷やして生をチュルッと食ってやる。


「師匠、この時期のカキを生で食べるのはオススメ出来ませんよ?」


「オイスターを生で食いたいなら来月まで待つんだな」


そうか、今はいわゆるRの付かない月って奴か。


生の貝を食いたい欲が高まっていたんだが貝は当たったらヤバいからな……おとなしく諦めよう。


「ま、俺もオイスターは生でいきたいからな……来月は予定を空けておけ、それとライスの酒も用意しろよ」


「解った」


とはいえマリアの実家のある街で買うんじゃすぐにバレるし……グリルに頼むしかないか。


「そういやクラムチャウダーに欠かせないチーズは」


「安心しなボーイ、チーズなら自作した」


本当に器用だなジョニーさん……





さて、クラムチャウダーを作るか。


まずは貝を殻から外しておかんと……


「ボーイ、殻を外したら塩水じゃなくてこのボウルの中に入れておけ」


「こいつは……酒か?」


「レモンのワインをバターの絞りカスで割った物だ、これでも臭みを抜くのには使えるしカスでも無駄にしたらワイフに殴られちまうからな」


「成程な、解った」


しかし数が多いな……まあ大人数で食う上にほぼ全員が大食いだから仕方ないんだが。


因みに海鮮に強いマレスはキャリや可愛い妹と一緒に居るので俺とジョニーさんだけで作っている。


今回のバーベキューが終わればまた暫くは会えないからな、沢山遊んでおけよ。


「クラムの処理が終わったら次はオニオンとポテトを頼む、気持ち大きめのサイコロみたいにな」


そしてジョニーさんは下地のソースとベーコンのカットか。


更に用意しているアレは……俺が作ったパスタマシン?


わざわざ持って来たのか?


「前に教えただろう?俺と一緒にクラムチャウダーをやるなら茹でたてのパスタは必ず添えろってな」


「確かにクラムチャウダーを掛けたパスタは美味いけどあれって邪道とか聞いた様な」


「そんな大昔のグルメ気取りが言った戯言は今すぐ忘れちまえ、ピットマスターが食って美味ければそれが正解だ」


それもそうか。


むしろそんな決め付けが美味い物を作る邪魔をする、ってダニエルさんも言ってたしなぁ。


「というかボーイ、お前はあらゆる料理を魔改造しては更に美味くする日本人の癖に大昔のグルメ気取りに媚を売るのか?」


「ジョニーさんの中の日本人がどんななのかは気になるけど、俺に売る様な媚はないから安心してくれ」


多少はある媚は可愛い妹と嫁にしか使わんしな。





「カキがいっぱい入ってるスープ美味しい!」


「ンナー!」


「ヒャー!」


やっぱジョニーさんのクラムチャウダーは美味いな。


今回は得意分野の食材が一切入ってないのに美味いとは……この幅広いパスタにも合うなぁ。


「アメリカ人にとってクラムチャウダーやガンボは日本人のミソスープみたいな物だからな、誰でも美味く作れる」


いわゆる家庭の味って奴か。


聞いたら食いたくなったし帰ったらガンボでも作るかな。


「ボーイ、俺が居ない所であろうとオクラのないガンボを作ったらタダじゃおかないぜ」


「見抜かれたか……」


そういやジョニーさんはオクラを入れたガンボが好きだったな。


一度だけチキンたっぷりのガンボもどきを作ってみた事があるが……オクラがないってだけで喰らった拳骨は滅茶苦茶痛かった。


まあオクラさえ入ってれば他は何でも受け入れるらしいけど。


余談だがガンボには固めに炊いたライスが欠かせないんだが、ジョニーさんはライスが食えないからマカロニに掛けて食っていた。


……うん、シーバスが終わったらトゥール様にオクラの種を頼んでオヤッサンに栽培を頼んでみよう。

手作りバターは滅茶苦茶疲れる……でも美味い

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