83 風呂上がりのコーヒー牛乳・出発添え
墓参りからずっとベーコンを作り溜めして、いよいよ明日はペスカタへ向かう。
同時にマレスが帰る事になるからか一日中キャリがずっとマレスにくっ付いていた……本当によくなついたなぁ。
まあ今生の別れって訳ではないし、サーマがベーコンを買い取りに来る時は同行するだろう。
それに本人が希望すれば物々交換にも参加させてくれるとトゥール様の許可は貰ってあるから後は俺の頑張り次第だな。
となれば例のシーバスを料理したら本格的に野菜狂信者に肉を食わせる為の行動を開始するべきか。
レクタさんの話によればシーバス以降の祭りは雪が降る頃に現れるアングラーを味噌で炒めて食い、同時にピストルとかいう魚を煮込んで食うだけらしいし。
アングラー……鮟鱇も居たんだな、この世界。
ピストルってのはよく解らんがこの関西に染まった様な世界から推測するに河豚あたりか?
確かフグはテッポウとも呼ばれていた筈だし。
俺は鮟鱇なら捌けるが河豚は無理だ……毒が怖いし免許もないから。
流石にその時は本職を頼るしかないが鮟鱇は是非とも鍋にして食いたいな。
「ンナー……」
「ヒャー……」
「っと、そろそろ上がるか」
相変わらず風呂が好きな猫だなベーコン……それにエビフライも風呂を気に入ったらしい。
生きてる鳩の身体を洗うのは初めてだったが抵抗はされなかったから大丈夫だろ。
食材としてなら何度も扱ったんだがなぁ。
「あー、水とミルクならどっちがいい?」
「ンナッ!」
「ヒャッ!」
2匹ともミルクか……贅沢な奴等め。
俺は予めミルクにインスタントコーヒーの粉を入れて温めた物を冷やして作ったコーヒー牛乳を飲もう。
市販のコーヒー牛乳は無駄に甘ったるくて好きじゃないんだが、自作すれば甘くない物が出来る。
因みに可愛い妹は色んな果物の果汁と砂糖をミルクに加えたフルーツ牛乳を自作して、キャリもそれを好んで飲んでいる。
飲んだら歯磨きは必須だがな。
「おおウメオ、ワイにもその茶色いミルクをくれへんか?」
「あ、どうぞ」
レクタさんはこの世界の豆から煮込むコーヒーは苦味みたいだが、トゥール様に買い出しを頼んでるインスタントコーヒーで作ったコーヒー牛乳は気に入ったらしい。
この世界だとトルコ式だし、必要以上に濃くなるからな……俺は好きだが。
その内コーヒーミルでも作ってみるか、自宅にもあったから構造ならバッチリ知っているし。
「ふぅ、こうやって飲むならコーヒーも美味いもんやなぁ……特に風呂上がりには最高やで」
解る、だがやはり風呂上がりのビールが恋しい。
あいつが可愛い妹に炭酸水の作り方を教えていたからエールとかいう酒と混ぜれば近い味になりそうなんだが、出産が終わらなきゃ酒が飲めん。
まあ、そもそも可愛い妹は酒の為には作ってくれんだろうな。
今回は売り物のベーコンと一緒に以前食ったクラブ……巨体松葉ガニの甲羅を持って行かねばならん。
例のコンテストの後で採れ過ぎたのを同じ甲羅焼きや氷水で締めたあらいにして子供達やタープ、マリアに振る舞った中から状態の良かった甲羅を記念にしようと塩漬けで保存してて助かった。
これがなかったらまた巨大タコが現れる10年後まで待たなきゃならなかったからな。
で、まあ色々と考えてみたがこの甲羅を使うシーバス料理……だが甲羅焼きじゃ芸がない。
なのでこの甲羅を鍋に見立ててバタしゃぶにしようと思う。
その為には可愛い妹の協力が必要不可欠なんだが……やはり甘味で釣るしかないなぁ。
なお今回のメンバーは俺と帰宅するマレス、可愛い妹とキャリにジョニーさんと奥さんのラビナさんに娘のベルだ。
タープとマリアにはシーバスを土産にしないと絶対に恨まれそうだな……まあ塩漬けかオイル漬けかは物を見てから決めるんでいいか。
「……って何でジョニーさん達も同行してるんだ?」
「なぁに、丁度ペスカタから害獣駆除の依頼があってな……ついでだから一緒に行こうぜボーイ」
そういやジョニーさんは害獣駆除も仕事にしてたんだった。
あんこうが現れるまではベーコン作りながら待つしかないし、たまにその害獣を分けて貰おう。
「この時期はトビバス狙いのシャークが来やがるからな、ついでに美味しく頂いてやろうじゃないか」
「え、シャークって食べられるんですか?」
「うん、パパはよく甘辛く煮たシャークを作ってくれてすっごく美味しいよ」
シャーク……鮫も居るのか。
マレスが驚いてる辺りこの世界じゃ鮫は食べたりしないらしいがベルの言う通り割と美味いんだぞ。
鮫といえばスコッチさんが作っていた酒とチリソースとトマトソースで煮込んだアレが美味いんだよな……多分ジョニーさんが作ってるのもそれに近い物だろ。
あの鮫の身とソースを炙ったフランスパンに乗せて食うと最高なんだが……炙ったコッペパンで挟んで食ってもイケそうだ。
しかしマレスとベルはいつの間に仲良くなったんだ?
「お兄ちゃん、鮫のトマト煮を作るんなら辛味を控えめにしてよね」
「……善処する」
どの道チリソースがないから辛くは作れんけどな。
2500バランもするとかいう真っ赤なソースがあれば話は変わるが、あの辛さはおそらくマリアですら無理だろうし。
「所で師匠、トビバスはどう料理するんですか?」
「薄切りにした身を熱したバターで泳がせて食べるバタしゃぶという料理にしようと思っているんだが……」
「ホゥ、ダニエルの奴と全く同じ発想をしやがるか」
まさかのダニエルさんもバタしゃぶを作っていたのか!
だが俺がそれを作るには唯一にして最大の難関が……
「お兄ちゃん、私がそんなカロリーの塊の為にバターを作ると思う?」
だよなぁ……
甘味命にしてカロリーを気にする可愛い妹がこのハイカロリー料理に力を貸してくれる訳がなかった。
美味いんだけどなぁ……バタしゃぶ。
「流石の俺もその量のバターは作れんな、それに仕事もある」
ジョニーさんも無理か。
この巨大な甲羅に入れるには軽く見積もっても4キロのバターが必要になるが……そもそも俺はバターの作り方が解らん。
「大丈夫だよパパ!キャリ、バターなら作れる!」
マジか!?
そういや最近のキャリは可愛い妹と一緒にお菓子を作っていたからな……その間に覚えたのか。
だからって娘に任せっぱなしにする訳にもいかんし……いい機会だ、俺も作り方を覚えてみよう。
美味しいですよ、鮫




