73 念願のお好み焼き・冷奴添え
いよいよ物々交換の日がやって来たな。
ベーコンとキャベツにカボチャとサツマイモ、アンチョビに鰹節……ついでにあいつと飲む為のコメ酒にイチゴのワインとラズベリーのワイン、秘蔵のバーボンも用意した。
夕飯は向こうで用意するだろうが何もなしでは申し訳ないと思いベイクドビーンズは作ってある。
後は念のために愛用のバーベキューコンロと聖剣、可愛い妹が作っていたパイ生地を持って……これでよし。
「一応あのパイを3つ作れるぐらいは用意したけど……足りるかな?」
「まあ、3つも焼くなら足りない事はないだろ……多分」
普通なら1つ焼けば充分なサイズだからな……トゥール様が同僚を連れて来ない限りは大丈夫だろ。
だが念のために小麦粉と小麦粉酵母にバターも持って行くか、それなら後から追加を作れるだろうし。
それとダッチオーブンも必要になるな……いかん、荷物ばかりが増えていく。
「準備は終わったんか?ほな送るで」
さて、どうなる事やら……
「よっしゃ、着いたで」
ほう、パッと見た限り草原と壁に覆われた町……それと少し離れた場所に屋敷があるな。
転移してからはほぼ森や海ばかりだったからなぁ、だが草原だと火事に気を付けなきゃバーベキューが出来ん。
その辺りの注意点はあいつか桃花に聞いてみるか。
「さて、ほなウチは一旦戻るわ……夕飯は食いに来るから用意しとってな」
やはり晩飯は食うのか……多分ハイドラ様を含めた皆さんが来る気満々だろう。
作れと言うなら作るけどな。
「あ、キャリちゃん!」
「ナチャちゃーん!」
この子は確か桃花の所の娘さんだったよな……ってまさかあの屋敷は持ち家なのか?
「持ち家というか、押し付けられたというか……便利なんでそのまま住んでいますけどね」
「あ、モモちゃん」
「やっと来やがったか、酒は用意したんだろうな?」
「安心しろ、たっぷり用意しておいたぜ」
半分以上は桃花が飲んじまうだろうけど。
だがまずは物々交換を先に済ませなきゃならん。
元々それが目的な訳だし。
「ふむ、やはりキャベツは欲しいですね……夕飯にも使いたいので」
「やっぱこのアンチョビは品質がいいな……チーズとベーコンもあるしピザにしてぇ」
「ならキャベツは梅干し、アンチョビはそこで山積みになってる木炭と交換でどうだ?」
ついでにピザなら作ってやるぞ。
キャリはまだピザを食った事がないしいい機会だ。
「それと俺は重曹、後は何故かあるスルメが欲しいな……」
「スルメと干物はあたしの手作りですよ、何ならマレスちゃんに作り方を教えておきましょうか?」
「お願いします!」
「ってモモちゃんはこっちの世界の字は書けないんじゃ?」
「あら、イチゴさんは私の事を忘れちゃったのかしら?」
ああ、そういやセバスさんの奥さんのヒュドラさんは桃花に空手を習ってるんだったな。
おそらく桃花が作ったんだろうBLTサンドを頬張りながら喋るのはどうかと思うが……そんなに気に入ったのか?
「あ、えっと……そういえばあの甘味料はあるかな?」
「露骨に話を逸らしましたね……ちゃんと用意してありますがあの紫芋と交換ですよ」
「とりあえずイチゴさん、今から私と組手をしましょう」
「あ、はい……」
まあ、何だ……頑張れ。
ふぅ、あれだけあった荷物は全て捌けたか。
代わりに色んな品々が詰まれているが、まあ気にするな。
夕飯に出すデザートを可愛い妹が作ると言って譲らなかったからコンロが使えんし、どうした物やら……
「所で夕飯にキャベツを使うとか言ってたが……何を作るんだ?」
「お好み焼きです」
お好み焼き……だと!
大阪を中心とした関西人のソウルフードお好み焼き……無論、兵庫産まれの俺も好きな料理だ。
店や屋台で焼いたのも美味いがバーベキューで作ったって美味いぞ。
「小麦粉、豚肉、天かす、豆腐、ソースは既にありましてね……今回の物々交換でキャベツと鰹節が手に入ったならば作るしかないじゃないですか」
「……何なら青のりもあるが使うか?」
「勿論です!」
因みにこの青のりはキャリのオヤツとしてポテチに振り掛けて食べさせてみた所やけに気に入ってしまったから常備していた物だ。
あの世界じゃたこ焼きに使うぐらいだし2kgで1バランと安く手に入る、しかも栄養が豊富だからな。
特に鉄分が多く含まれているから妊婦の食事にも丁度いい。
「ウメオ、ツマミ用のピザを仕込むから手伝えや」
「おう……ってこれピザ用の竈にしては低いな」
「そいつはこの世界なら何処にでもあるパン用の竈だよ、だが小型ならピザも焼ける」
「マジか、こっちの世界にはコッペパンを焼く竈しかないってのに」
「何でコッペパンなんだ……いや、あれはあれで美味いけど」
俺に聞かれたって知らん、トゥール様の好みとしか言い様がない。
さて材料は……トマトにタマネギ、ベーコンとアンチョビ、それとこの緑の葉っぱは何だ?
「その葉っぱはからし菜のベビーリーフだ、本当ならバジルやほうれん草を使うのがいいんだろうけどないから代用にな」
「からし菜……実物を見せて貰ってもいいか?」
「ん、ああ」
おお、こいつはマスタードの原料になるシロガラシじゃねぇか!
この種を砂糖、塩、酢と一緒に擂り潰すとあの黄色いマスタードが出来る……羊を食うなら欠かせない調味料だ。
「山に行けば幾らでも手に入るし、少し持って行くか?」
「助かる、こっちの世界はほぼ森と海だからこういう食材がなくてなぁ」
「森は森で美味い食材があったりはするが……まあ知識がないと探し様がないか」
とはいえ種からじゃ上手く育つ保証がないからな……帰ったらオヤッサンに相談してみるか。
だがまずはピザの仕込みを済ませよう。
「お好み焼きに冷奴とご飯が付いてるのは違和感があるけど……不思議と美味しい」
「ふんわりしてなくてモチモチしてるのは何故だ?」
「山芋がなかったので代わりに蓮根を使ったんですよ」
成程、蓮根か……しかしこのモチモチ感は悪くない。
可愛い妹は桃花から豆腐の作り方を聞いてたし、蓮根はちょいと高いが買えない訳じゃないし作ろうと思えば出来る。
よし、次に野菜狂信者と遭遇したら肉たっぷりのお好み焼きをおみまいしてやる。
それに……
「このお好み焼きっちゅーの美味いわぁ、最近は食欲がなかったんやけどこれなら幾らでも食えてまう」
「確かに、沢山食べて栄養を付けないと」
嫁達もお好み焼きを気に入ったらしいからな。
「あ、そうだ……あの2人は最近妊娠が解ったんだが何か注意する事があるなら教えてやってくれないか?」
「あたし達の時の話でいいなら請け負いましょう」
助かる……報酬は酒で払うぞ。
「それにしてもこの冷奴も美味い……これをツマミにコメ酒を飲むとさぞ美味いだろうな」
「その豆腐に醤油もあたしの手作りで、ちゃんとオツマミの分も作ってありますよ」
器用だな桃花……まさか醤油まで作るとは。
「パパー、このおとーふっていうのが美味しい!」
キャリはベーコンと同様に豆腐が気に入ったのか……
これは可愛い妹に頑張って作って貰う必要があるな。
「やっぱキュアちゃんのお好み焼きは美味いなぁ、個神的にたこ焼きのが好きやけど」
「美味しいですよね……本当に、あの詠唱さえなければ!」
おっと、そういや夕飯を食いに来るとは言ってたが今回は2神だけなのか。
詠唱というのが気になるが……確かあの赤い髪の女神様は酔い潰れた他の女神様達を介抱していた方だったな。
まあ、詳しくは酒を飲みながら聞かせて貰うか。
バーベキューでお好み焼きを焼いたっていいじゃない




