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72 ピットマスターの病気・荒療治添え

……ふぅ、ようやくアンチョビを作り終わったな。


まさかミネストローネやイワシハンバーグの影響でイワシも有料になっているとは思わなかったが、5匹で1バランだったのは幸いだった。


可愛い妹は孤児院に入り浸ってたし、マレスが手伝ってくれはしたが鰹節の仕入れを頼んでたからなぁ。


鰹節にも良し悪しがあるとか知らなかったよ……しかも俺が手に取ったのは全てが粗悪品とか何の冗談だ。


でも確かに以前買った鰹節で取った出汁から妙な臭みがすると思っていたんだが、てっきり煮込み過ぎもしくは濾し方を間違ったのかと思ってたわ……味噌汁なら気にならない程度だったし。


今回はマレスのお陰で良質なのが手に入ったから別にいいんだけどな。


何にせよ物々交換まで後4日だから急いで戻らねばならん。


だがその前に……夕飯を作って食わねば。


残ったイワシの背側の身を叩いてイワシハンバーグにして、骨は骨せんべいにしよう。


それと可愛い妹が絶対にねだるからクルエビのエビフライと適当に見繕った野菜でサラダ……後は肉だな。


帰ったら当分は食えないミディアムのステーキを作って食う。


余談だが今回キャリは留守番をしている。


野菜狂信者が以前ベーコンを幻獣だとか言って狙う素振りを見せていたからな、レクタさんの側に居た方が安心だろ。





「という訳で夕飯は出来たぞ」


「うん、やけにステーキが厚いけどまあいいや……エビフライもあるし」


いや、そのぶ厚いステーキは俺の分だから……


可愛い妹とマレスの分はちゃんと薄めにしてあるから安心してくれ。


「薄めと言いつつ5cmはあるけどね」


因みに俺の分のステーキは10cmに、味付けは久しぶりに醤油のみで作ってある。


この世界へ来た時に作って以来だったしたまにはいいだろう。


「ん……やっぱり」


「ん?どうした苺心……まさか焼き加減に不備でもあったか?」


「普通に美味しいよ……美味しいけどこのステーキ、いつものお兄ちゃんらしさが全くない!」


何……だと!


俺も食って確かめたが全く解らん……だがオフクロの料理よりも多く俺が焼いた肉を食って育った可愛い妹が言うならば間違いはあるまい。


そもそもオフクロは料理が下手でいつもデパートの惣菜が並んでいたがそれは置いとく。


バーベキューにおける自分らしさ、それは味の個性ともいう大事な物……ピットマスターに限った話じゃないが余程の惨事を起こさないならあった方がいい。


間違ってもレシピ通りの料理すら出来ない奴には必要ない。


「ダチョウの時のベラバーガーから薄々思ってたけど、最近のお兄ちゃんは社畜時代みたいに時間を気にし過ぎてるんじゃないの!」


え、流石にそこまで気にしてはいないと思うんだが……


だが言われてみれば最近は時間というか期限に追われてはいたな。


ベーコンの納品は領主のお陰で数が増えて、野菜狂信者の襲撃も間隔が短くなっていたし……何よりイベントが多く発生していたからなぁ。


それがステーキにも現れてしまったのか……


「で、でもイチゴちゃん……あのスプリンは凄く美味しかったよ?」


「それは多分お兄ちゃんがお酒を飲んで料理してたからじゃないかな……シラフだったらあんなに美味しくなってなかったと思う」


「普通ならお酒を飲みながら料理をしないと思うんだけど……」


「バーベキューに関して言えば、お酒を飲んだ方がいい結果になる事が多いんだよね……未だに不思議だけど」


ああ、確かにあの時は酒を飲んでいたな。


そういえば時間と言えばダニエルさんは……




『いいかウメオ、ピットマスターはコンロの前に立った時に必ずしなくちゃならない事がある……酒を飲む事と、頭から時間という概念を消し去る事だ』


『ええ、時間を計らなきゃ美味しく焼けないんじゃないの?』


『ハハハ、ハウスやレストランならまだしもバーベキューで美味い肉を焼くのに時計は必要ない、その日の炭の火力や肉の状態が大事なんだ……それは時計なんかじゃ絶対に解らん事だ』


『でも急な予定とか、仕事が来たらどうするの?』


『なぁに、ピットマスターにとってバーベキュー以上に大事な物はないんだ、待たせておけばいい、それだけだ』





あの時に聞いた言葉を可愛い妹に言われるまで忘れてしまうとは、俺もまだまだだな。


これじゃいつまで経ってもジョニーさんにボーイ扱いされたままだ。


「……2人共、胃袋に余裕はあるか?」


「は、はい!」


「……私は正直キツいけど、無理だと言っても焼くんでしょ?」


流石は可愛い妹、解っているじゃないか。


とはいえ肝心の肉がステーキ1枚分しかないからな……一発勝負だ。


余分な脂身を取り除き、フォークで刺し、筋を叩き、醤油を塗って焼く。


焼き目を付けたら再び醤油を塗って、炭火からズラしてコンロに蓋をして待つ。


醤油の香りが立ったら取り出してアルミホイルで包んで肉汁を吸収させる。


……待ってる間に作った分は食っちまうか、焼いた肉を無駄にするのは勿体ないし。





「……よし」


休ませた肉を3等分にカット、ちゃんと可愛い妹好みのミディアムに仕上がったな。


問題は味だが……自分じゃよく解らんから可愛い妹に見てもらうしかない。


「……うん、いつものお兄ちゃんの味だよ」


良かった……これで駄目だったらどうしようかと思った。


「やっぱり師匠の師匠が言った通り、イチゴちゃんなら治せたね」


「ようやく私に任せた意味が解ったよ」


ん?


その口振りから察するにこれはジョニーさんの差し金って事か?


「何でも師匠はピットマスターなら一度は必ず掛かる病気になっていて、それはイチゴちゃんにしか治せないとか……」


「実際に私しか気付けなかったからね……身に覚えがないとは言わないでしょ?」


あー……成程なぁ、言われて気付いた。


予定をみっちりと詰めたスケジュールに振り回されがちな日本人は特に掛かりやすいだろうな。


日本のバーベキューは外で焼肉をする行為と化しているのもその影響らしいし。


ピットマスターが肉を焼く前に酒を飲むのも時間を忘れる為の措置だと聞いた覚えもある。


「もしまた同じ状態になったら二度と口をきかないからね?」


「そいつは嫌だな……気を付けるよ」


本当にそんな事が起こったら1日と持たずに廃人となる可能性があるからな……


明日からはもっと心にゆとりを持たなくては。

別に焼肉を否定する気はないねん……(震

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