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63 マッチョ領主の訪問・スモークチキン添え

よし、可愛い妹のお陰でショウガを漬けた甘酢は用意できたしトゥール様に頼んだチリソースもバッチリだ。


チリソースは使ってる材料的にこの世界じゃ作れない物だが例のソテーを作る為だからと特別に許して貰ったぜ。


後は来週の出発までにベーコンを作り溜めて……


「ウメオ、ペスカタから手紙やで」


「ペスカタから……ってシェラフかサーマのどっちだ?」


「キャリ、読めるだけでええから読んでみ」


「えっと、【背景ウメオ殿、突然の手紙を失礼する】……」


キャリが遂に字を読める様になったというのか!?


俺や可愛い妹は未だにこの世界の文字を読めんというのに。


……しかしやたらと丁寧な文章らしいが一体誰なんだ?


「んー……【出来れば手紙ではなく、直接会って話したい事があるので2日後、貴殿の住まいにお邪魔させて頂くが、これは他言無用でお願いする】……なにわ、まんとる?」


ナニワ・マントル……って確かこの地の領主の名前じゃねぇか。


何で領主が面識のない、かつしがないピットマスターでしかない俺に他言無用の話をしに来るんだ?


「【追伸、貴殿の作るベーコンとやらを使った料理を食べてみたいので夕飯は期待している】、だって!」


「ちゃんと間違えずに読めたなぁ……まあウメオのベーコンも有名になったさかい、領主の耳に入るんもしゃあないやろ」


サーマのお陰でかなり手広く売れてるそうだからなぁ。


マットさんやマレスも作れる様にはなっているが作る手が足りないのは確かだ。


だがそれなら立場的にベーコン料理を作りに来いとでも言えば済む話だし、俺もベーコンを食いたいと言う奴を無下にする気はない。


やっぱり本命は先に書いていた他言無用の話とやらだろう。


しかしダチョウでバーベキューしようとしている矢先にこれか……余り時間を掛けたくないが相手は領主でしかもマッチョ、立場的にも実力的にも逆らえん。


だが可愛い妹がダチョウのネック肉のワイン煮込みを楽しみにしている以上、行かないという選択肢は存在しない。


となれば無礼にならない様に注意しつつササッと終わらせて向かうしかないな。


……ちょっと難易度が高過ぎやしないか?





とりあえずコンテストの審査員をするぐらいだし、タープやマリア程ではないにしろ大量に食うのは解っているからな……


ベンネのサラダ、BLTサンド、串焼きベーコン、トルネードステーキ、ベーコンエッグ・フライパンパイ、カリカリベーコンと野菜スティックを用意したが足りるだろうか?


今回ばかりは相手が領主というのもあって卵も買ったが……マリアの視線が怖かった。


「お兄ちゃん、これも並べておいて」


「これはいつものシカゴピザパイか?」


「ウシの挽肉とベーコンを醤油で味付けして、パイで包んで焼いたミートパイ」


おお、まさか可愛い妹が肉を料理するとは……


「だって領主様がお兄ちゃんのベーコンを目当てに来るんでしょ?」


「そうらしい……まあこれで何とか足りるだろう」


もし足りなきゃベーコンステーキでも焼くしかないが、逆に残ってもタープ達が美味しく頂くだろうからな。


本当に、無駄にだけはならないのはウチの強みだよ。


「ンナー……」


「ベーコン、メッ!」


おっと、ベーコンがつまみ食いしようとしているのをキャリが止めたか。


ベーコンがウチに来てまだ1週間も経ってないのにちゃんとお姉ちゃんをしているなぁ。


だがこれ以上狙われても止め切れるか解らんし、ベーコンには先に食わせておこう。


「いつ領主が来るか解らんからマレス、ベーコンの分のベーコンは頼んだ」


「ややこしいですけど解りました!」


ややこしいのは否定しないが可愛い娘が付けた名前だからなぁ。


翡翠さんやロウから聞いた話の通りならもう2匹か3匹ぐらい増える可能性があるとかないとか……


別に増えるのは構わんけど犬だけは止めてくれよ、可愛い妹が大の苦手だから。





お、芦毛の馬が走ってやって来た……乗ってるのは間違いなく領主だな。


「あーっと、ようこそお越し下さいました、領主様」


「君の事はシェラフから聞いている、慣れない敬語は無用だ……普段通りに話すがいい」


うっ、見透かされてやがった。


何せ小学校に入る前から家よりダニエルさんの所に居る時間の方が長かったし、敬語は慣れてないんだよなぁ。


ブラック企業に居た頃も営業には出ずに企画や開発が中心だったし。


接待する時には財布代わりとして呼ばれたりはしたが、クソ上司が酔い潰れ次第回収したぞ。


それにしてもシェラフの奴はどんな説明をしたんだ?


とりあえず馬は教会の横に繋いで、リンゴでもくれておこう。


「じゃあ、まずは冷める前にどうぞ」


「頂こう」





「成程、これが本物のベーコンか……確かに美味い」


どうやらお気に召したらしい。


だが本物の、って所がとてつもなく気になる……


「いや失敬、ここ数日の間にペスカタでは塩抜きをしただけの偽物ベーコンが出回る様になってな……犯人は既に捕らえたから安心するといい」


そりゃ売れるとなれば偽物を作る奴は出てくるだろうが……せめて燻せや。


ウシならまだしもブタは塩を抜いたぐらいじゃ食えんぞ。


「そして他言無用とした理由なのだが、私と君の関係者にしか解らない本物を見分ける為の目印を考えて欲しいのだ」


まあ第二、第三の偽物が出ないとも限らないから対策はした方がいいよな。


確か通販で売ってるベーコンや生ハムには工房の焼き印が押されてたっけ……


よし、鉄屑を金属加工して【苺】の文字を押せる様にしよう。


例え読めなくとも漢字ならそう簡単には真似できまい。


ついでにマットさんに渡す【筋】、マレスには【鮮】の文字で……


この漢字に深い理由はない、単に思い付いた単語を選んだだけだ。


「お兄ちゃん、私の名前を焼き印にするのは止めて」


見抜かれたか……仕方ない、俺の印は【梅】にしておこう。


一応紙にも書いて、この3文字は俺が作り方を教えたベーコンだと説明すれば大丈夫だろ。


「成程、これならすぐに見分けられるな」


「もしこれでまた偽物が出回ったら別の対策を考える……ます」


やはり敬語は慣れん……


「実はもう一つ頼みがある、このベーコンを王に献上したいのだが……ペスカタのサーマやカーニズのインナーは声を揃えて君に頼めと言ってな」


いや、買うと言うなら売りますしそういう理由なら喜んで渡しますけどね?


マリアも王様に献上するなら嫌な顔はしまい。


てかさせんけど。


「だが王に献上する際は必ず3種にせねばならない、という暗黙の決まりがあるのだ」


むぅ、俺が作っているのはウシとブタのバラ肉のベーコンしかないからな。


となれば後1種類……スモークチキンでも作って渡すか。


「マリア、ニワのむね肉を用意してくれ」


「解った」





よし、むね肉は塩コショウとパプリカパウダーをまぶしてからよく揉んで、と。


いつものリンゴの木のチップにスライスしたニンニクとショウガをアルミホイルで包んで幾つか穴を開けて、炭火に乗せて……


煙が昇って来たら網を被せて、むね肉を並べたら蓋をする。


このまま朝まで放置しておけば完成だ。


一応余分に作ってるから皆で味見も出来る。


「えっと、完成は明け方になりますが……」


「構わん、タマと共に過ごし待たせて貰おう」


タマ……ああ、あの馬の名前か。


しかし随分とあの領主なついてるな。


とりあえず寝る前に作ったばかりの焼き印で渡す分だけでも押しておこう。





よし、いい感じに燻せたな。


こいつはこのまま薄切りにして食うか、薄切りにしてチーズを乗せて炙るに限る。


おっと、馬には朝飯として疲労回復になるとかいう砂糖と豆をくれておこう。


「ほぅ、少し口の中が乾くが酒との相性が良さそうだ……それに美味い」


「こいつはコメ酒に合うしチーを乗せて炙ると更に美味くなる……なりますけど手持ちにないので」


「成程、ではカーニズでチーを受け取り次第向かうとしよう……世話になった礼にこの焼き印用の金属はカーニズのマットに渡しておく」


ふぅ、これで俺の役目は終わったな……予想より早く終わって良かった。


今日は休んで、明日から準備して向かうとしよう。


っと、そうだ。


「マレス、手間を増やすが次からお前の作ったベーコンは脂身を上にして、上から見て右端の下側にこれで焼き印を付けてくれ……ただ火傷には注意しろよ」


「わ、解りました!」


これでよし。


さて、まずは一眠り……


「ウメオ、忘れない内に焼き印を押した方がいい」


「数は沢山あるし、早くしないと出発できないよ?」


可愛い妹と嫁の人使いが荒いなぁ……ちくしょう。

スモークチキンとビールの相性は最高

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