58 旧友のローストビーフ・新しい家族添え
お次はあいつの番か……確かガーリックライスとローストビーフを作るとか言ってたよな。
だが来たのは人数分の丼に……プリンかこれ?
ご丁寧に生クリームとイチゴのトッピングまでしていやがる……意外と器用な奴だな。
「あ、これ……前にウメオが作ってたガーリックライスに似てる」
成程、ローストビーフ丼か……しかも肉汁に酒と醤油を加えたグレービーソースまで掛けていやがった。
それを意識してかガーリックライスの味付けは最小限にしてある……美味いじゃねぇか。
「お兄ちゃん、このイチゴ……シロップ漬けにしてあって、仕上げに蜂蜜が塗ってある!」
「プルプルで甘くて美味しい!」
甘味にうるさい可愛い妹と娘が満足するとは……あいつ、肉だけじゃなくてデザートも凄い腕をしてやがる。
もし同じ世界に転移してたなら喧嘩しながらも楽しく腕を磨き合っていただろうに……いや、些細な事で喧嘩してる未来しか想像出来んわ。
うん、色々と思う所はあるがこうやってたまに会うぐらいで丁度良いのかもしれん。
「よし、仕上げるぞ」
「はーい」
まずステーキはミディアムが2枚とミディアムレアが2枚、と。
「タープ、それは女神様達の分だからつまみ食いはするなよ?」
「んな事せんわ!」
「それとタープが持ってるのはミディアムレア、マリアのはミディアムだから間違えずに渡してくれ」
「解った」
よし、可愛い妹の作ったスイーツは桃花が運んでくれるそうだから次はあいつの方に……
確かミディアムレアが5枚でレアが1枚だったな。
「マレスの持ってる5枚はミディアムレアで、キャリが持ってるのはレアだ……そしたらキャリはあのマッチョに渡してくれ」
「解りました!」
「はーい!」
よし、次は桃花達の分で……レア1ミディアムレア7だったな。
……あれ?
そこにウチの分であるミディアムレア2ミディアム5を足して……ミディアムが1枚余るぞ?
「どーもー、人手が足りなさそうだから自分で取りに来たよ」
「ウギッ!」
誰だこの青髪青眼の美人は……って、あの髪の色や例の猿を連れてるなら答えは1つしかないな。
「もしかしてあんたがハイドラ様の眷属で、その猿の飼い主か?」
「そ、私はハイドラ様の眷属で翡翠って言うんだよ、近い内にお世話になるかもだしまあ宜しくね」
セバスさんは執事と読んだがこいつはペットって読むのかよ!
まあ、何か気になる事を言ってたが取りに来たんなら丁度いい。
焼けたステーキを皿に乗せ、パエリヤを添えて……
別の皿に可愛い妹が例のシカゴピザ級のパンプキンパイとグリルバナナを乗せれば完成だ。
そして……更に別の皿に俺が焼いたバナナと可愛い妹の作ったリンゴジャムを乗せて、と。
「このバナナはその猿の分だ、中身をそのジャムに着けながら食ってくれ」
「ウギ?」
「へぇ、まさかキュアちゃんやデストくん以外にライコの分を用意する人が居るとは思わなかったよ」
何を言う、俺はちゃんと食うなら相手が何であろうと差別はせんぞ。
ダニエルさんだって肉が焼けるまで見張りをした番猫に分けていたしな。
「……ウギィィッ!」
早速食ったのか……さて反応はって、何で俺の足に手を当てて反省のポーズをしてるんだ?
「まさかあのライコが、力比べもせずに服従を誓うなんて……キミ中々やるねぇ」
いや誓われても困るんだが……
というか猿になつかれて、その後はどうしろと?
「あ、ライコちゃーん!」
「ウギッ!」
相変わらずキャリにベタベタする猿め……一緒に遊ぶのは構わんが嫁にはやらんぞ。
「ふぅん、こっちはこっちで何もなしになついてるし……確かに素質はあるのかも」
娘の素質は気になるが今は聞ける雰囲気でもないか。
話的に後から聞く機会はあるだろうし、今は置いておこう。
「んー、やっぱウメオのステーキがいっちゃん美味いわぁ」
「あれだけ長くコンロに乗せていたのに、ちゃんと全員の好みの焼き加減になっている……流石ウメオ」
その辺はまあ、多少コツは要るが覚えれば誰でも出来る。
俺の場合そのコツを覚えるまでに70枚近いステーキを焼かされたがな。
「イチゴお姉ちゃんのパイも美味しい!」
「確かに美味しいんだけど……私にはちょっと量が」
おっと、マレスの胃袋はそろそろ限界か。
といっても普段なら余裕で完食しているだろうが……今回は他にも色々と食ってるしな。
「師匠、ちょっとコーヒー貰っていいですか?」
「おう、コンロに乗ってる小鍋から好きなだけ飲んでいいぞ」
意外だったがマレスもコーヒーが好きらしい。
ペスカタでしか買えないコーヒーだし飲む機会は多いだろうとは思ってたが……それと個人の好みは別だからな。
かくいう俺も日本人だが納豆を食えないし。
「所でこれ、誰の勝ちなんや?」
「あのな、今回はあくまでも女神様達のお茶会であって勝負でもコンテストでもないんだぞ」
無論、味には自信があるけどな。
というか本当に勝負だとしたらあのトゥール様があんなに大人しい訳がない。
「いやぁ今回は助かったわ、サンキューな」
「これぐらい御安い御用ですよ、野菜狂信者共に肉や魚を食わせるのに比べたら簡単だし」
何より平和に終わるのは素晴らしい。
それにあいつに会うチャンスでもあったしな。
何だかんだで元気そうだし、来て良かった。
「あ、帰りは明日の昼に送るからそれまでは自由にしとってええで」
「あのトゥール様、帰りはそれでいいとして……この岩と土と海しかない孤島でどうやって寝ろと?」
「安心しぃや、夕方辺りにハイドラの眷属が人数分のハンモック作るで」
あの人そんな事が出来るのか……まあ寝床があるなら文句はない。
さて、可愛い妹はマレスを連れて桃花の方に行ってるし俺はあいつの所にでも顔を出すか。
「パパ、この子カワイイ!」
「ンナー!」
……何だこの体毛と瞳が黄色い、しかも白い翼の生えた子猫は?
まあ鶏が空を飛ぶ様な世界を創ったトゥール様の同僚の世界だしな、今さら猫に翼が生えてるぐらいじゃ驚かんぞ。
「珍しいですね、聖霊の中でも特に警戒心の強いケットシー……それも風属性のウィン・ケットシーが人になつくとは」
「やっぱり素質があったんだねぇ……それもロウくんやナチャちゃんと同等の」
「あのハイドラ様、それと翡翠さんでしたっけ?心臓に悪いから唐突に現れるのは止めてくれ」
というかそのロウとナチャって誰だ?
「キャリちゃん、ハイドラ様に貰った指輪はある?」
「うん!」
無視かコラ……だが仮にもトゥール様の同僚の眷属、しかも美人とあっては強く出れん。
おや、あの猫が黄色く光って……いつの間にか首輪が着いてる?
「……で、…………けど、解るかな?」
「んー……うん、解った!」
……良く解らんがまあ害はなさそうだしいいか。
「じゃあ最後に、その子に名前を付けてあげて……呼びやすい名前とか、好きな物の名前とか」
「えっと、キャリが好きなのは……」
って、その猫をウチで飼えと申したか?
ただでさえ大飯喰らいだらけなウチにそんな余裕は……
「パパ、この子を飼っちゃ駄目?」
「いいに決まっているだろう」
俺が頑張ってベーコンを作って売れば済む話だ、何も問題ない。
可愛い妹も猫は好きだからな、翼が生えてる程度で驚きはしまい。
「「親バカにも程がある」」
自覚はしている!
「えへへ、これから宜しくね……ベーコン!」
「ンナー!」
おい猫……名前はそれでいいのか?
まあ、本人……もとい本猫がいいなら構わんか。
この世で最も可愛いのは子猫




