51 ナマズのスタッフィング・味噌煮添え
いよいよ明後日、ワニをバーベキューで食ってやる時が来た。
ワニ自体は明日から採れるらしいから今の内に向かって下拵えをせねばならん。
今回はマリアとキャリ、マレスが留守番するから前回よりは気楽に行ける。
前回は主にベーコンの在庫管理的な意味で気苦労が絶えなかったからなぁ……阻止してくれた可愛い妹とレクタさんには感謝しかない。
「マレス、家の食糧庫にある物なら何でも使っていいがくれぐれもベーコンの使いすぎには注意しろよ」
「は、はい!」
まあマリアが居るからその辺は厳しくしてくれると信じる。
だがマレスはキャリに甘いからなぁ……
「大丈夫、その辺りは私が管理する」
「頼むぞマリア……それとキャリ、オヤツは1日1回で食べたらちゃんと歯磨きをするんだぞ」
「はーい!」
歯磨きに関しては甘味命の可愛い妹が徹底していたから余り心配はしていないけどな……
余談だがこの世界の歯磨きは砕いた岩塩と煮詰めた樹液をよく噛んだ後に先端を裂いた爪楊枝みたいな物で擦って口を濯ぐという……かなり面倒だが虫歯は怖いからやるしかない。
歯医者なんて居る訳がないし。
因みに煮詰めた樹液は完全な無味無臭でガムみたいな食感だが、飲み込んだら腹を壊すそうだから噛んだ後は纏めて燃やし処理をする。
「ようボーイ、ストロベリーも来たか」
「ようジョニーさん、来たぜ」
「おっと、ワイフは初めてだったな」
ジョニーさんの奥さん……どんな人だろうと気になっていたが、パッと見た感じだと普通っぽいな?
ただ背が低いけど美人ではある。
「ジョニーの妻、ラビナです……あ、種族はドワーフですよ」
まさかのドワーフレディ……
「娘のベルです、ハーフドワーフですよ」
娘まで居たのかよ……まあジョニーさんの転移と俺達の転移にも時差があったって今更驚かんけど。
「因みにワイフと娘は料理が苦味でな……バーベキューは俺とボーイだけで焼くしかないと覚悟しておけ」
「マジか……まあやれる限りは頑張るよ」
「所で丸焼きって言ってたけど、あの詰め物はあるの?」
「オゥ、そういえばストロベリーはスタッフィングが好きだったな……勿論作るぞ」
ああ、トウモロコシの粉末に色々混ぜた詰め物か。
あの時は確かトウモロコシの粉末に養殖のザリガニとタマネギなんかを混ぜてたけど……
「丁度いい、今からスタッフィングを作るからストロベリーも手伝ってくれ」
折角だし俺も見学させて貰うか。
「ボーイはそこのコーンを石臼でありったけ挽いておけ」
「ああ、このポップコーンにする直前みたいに硬くなってる奴な……解った」
「あの時のスタッフィングはクレイフィッシュをふんだんに使ったが、この世界には居ないらしくてな……」
クレイフィッシュ、様は食用のザリガニの事だな。
個人的に下手なエビより美味いと思うが、日本じゃ中々手に入らないんだよな。
「だから代わりに……このキャットフィッシュをミンチにして使う」
ここでナマズか!
「ボーイ、ミンサーを借りるぜ」
「おう、好きに使ってくれ」
更に賽の目のタマネギとピーマンも用意してるが……
「キャットフィッシュのフィレは脂が多過ぎるからな、ここは俺達のディナー行きだ」
使うのは背側だけか……贅沢だなおい。
「という訳でボーイ、このフィレはミソニって奴にしてくれ……ジンジャーをたっぷり効かせてくれよ」
「解った」
「そしたらこのベジ共をコーンから絞った油で炒めるんだ、オリーブオイルじゃ匂いがキツいしバターじゃアリゲーターの風味が台無しになっちまうからな」
コーン油まで作ってたのかジョニーさん……
色んな意味で多才過ぎやしないか?
「オイルだけじゃないぜボーイ、この世界には酒税法なんてありはしないからバーボンも作ったぞ」
「幾ら何でもトウモロコシが好き過ぎやしないかジョニーさん!」
「ハハハ、だがボーイだってバーボンは嫌いじゃないだろう?」
「むしろ大好きだ!」
うん、この場にマリアが居なかったのは幸いだったかもしれんな。
下手したらありったけ飲まれてしまう所だった。
炒めた野菜にナマズのミンチを入れて、バーボンと塩コショウにおろし生姜の絞り汁を入れて、更に何かのストック……出汁を入れて煮詰めてるな。
一体何の出汁を入れたんだ?
「よしボーイ、挽いた粉をありったけ入れてくれ」
「おう」
お、見た目が段々オカラの煮物っぽくなってきたな……
完全に水分が飛んでパサついてる様にも見えるけど。
「こんな物か、味見してみな」
見た目に反してしっとりしてるな……噛んでる内にトウモロコシの甘さがじんわりと出てきて、意外だったがナマズとも相性がいい。
「あ、もしかして入れたのはトウモロコシの芯から取ったストックかな?」
「正確にはコーンの芯とキャットフィッシュの骨から取ったストックだ、あの時はチキンのストックを使ったがこの世界じゃ捕まえるのも一苦労だからな」
ああ、何故か鶏が空を飛んでるからな……
マリアはいつもどうやって仕入れてるんだろうか?
「後はこいつを冷まして、明日からアリゲーターに詰めるだけだ……それとベジマニア共の襲撃にも備えなきゃならんから早目に寝るぞ」
そういや野菜狂信者共が来るとか言ってたな。
今回はレクタさんが率いるケンタン領の皆さんが阻止するらしいが……
パッと見ただけでもドワーフやオーク、猫耳や犬耳が生えてるのは亜人って奴か?
それに下半身が蛇みたいな女性も居るけど全員が例外なく6パックに割れていやがった。
何でこの世界の人達はマッチョばっかりなんだ?
「お兄ちゃんの腹筋もだいぶ割れてきたけどね」
「6パックまで後少し掛かるだろうけどな……」
「ボーイ、マッスル談義も悪くないがディナーの用意は頼むぞ」
そうだった、ジョニーさんは味噌煮をご所望だったな。
明日ワニを料理する為にも早く寝ないとならんし、急いで作るか。
といっても生姜を針みたいに細い千切りにして、切れ込みを入れて塩を降り臭み抜きしたナマズを煮るだけだけど……
味付けは味噌と1たらしの醤油で済むから、火加減だけ注意してればいい。
「やはりミソニはボーイが作った方が美味いな、だが流石にパンには合わんか」
「まあ日本人だからな……コンロでなければ苺心が作った方が美味いけど」
というかナマズも魚だからなぁ……マレスが作った方が絶対美味い。
「味噌を塗ってトーストすれば合うよ」
「あ、ホンマや」
余談だがジョニーさんは大抵の日本食は食えるが、以前日本の病院に入院した際に出されたお粥のせいで米だけは食えなくなったらしい。
日本酒は普通に飲んでいたが米そのものは食えないと言っていたから相当不味かったんだろう。
気持ちは解らんでもないけどな……酷い病院の食事は残飯の方がマシと言われるぐらいだ。
「そういえばボーイは納豆を克服したか?」
「そういうジョニーさんもライスは克服したのか?」
「「……………」」
……止めよう、この話題は傷口を広げるだけだ。
トウモロコシ粉を作るのはしんどいけど色々使えて便利




