48 恩師のフライ・リザードソテー添え
「いいかボーイ、そのブッチャーナイフでコイツの皮を綺麗に剥がせる様になるまで他の食材に触る事を禁止するぜ……だが生活もあるだろうからベーコン作りは例外にしてやる」
とか言いつつ大量のトカゲを押し付けられて、ベーコンを作る時以外はひたすら捌いてはジョニーさんが料理している。
いや、確かに身体の構造なんかは似てるんだろうけど……幾ら何でもサイズが違い過ぎないか?
だがジョニーさんの事だ、この端から見ればイヂメに見えかねない作業はきっと無駄ではないだろう。
それに指導の間はジョニーさんが飯を作ってくれるそうだし。
「ほぅ、ボーイはミンサーやスタッファーも作ったのか……丁度いい、今日の晩飯はコイツを使わせて貰おうか」
使うのは構わんけど何を作る気だ?
「悪いがストロベリー、オレンジでジャムを作ってくれ……シュガーは最小限でレモンを使わず、皮は入れない様にな」
「はーい」
まあ、ジョニーさんの腕は確かだし期待しておこう。
それにしてもこの全長8cm程度のトカゲを20cmの聖剣で捌くのは中々辛い物がある。
ってジョニーさんは同じ聖剣で内臓や骨を綺麗に取ってやがるし!
「ボーイ、筋はいいが貴重な腕の肉が台無しだぜ……それに5匹中1匹は内臓が潰れているな」
「そこまで綺麗に捌かなきゃならんのかよ!」
これ本当に意味があるんだよな!?
なかったら只じゃおかん……って返り討ちにされるのがオチだな、うん。
ジョニーさんは若い頃ボクシングをやってたそうだし、拳骨はマジで痛いんだよなぁ。
「トカゲって食えるんか思うたけど、ホンマ美味いわ……」
「脂のないニワみたいな味、少し固いけど酸味のあるソースに合ってる」
「トカゲ美味しい!」
まさか内臓抜いた腹にトカゲのミンチを詰めるとはなぁ……それにベーコンを巻いてから焼いてオレンジのソースか。
本当にジョニーさんは柑橘類の使い方が上手いよな。
見た目で怖がっていたキャリすらバクバク食ってるぐらいだ。
「そういやボーイのベーコンを勝手に使っちまったが」
「別に構わないよ、そこにあるのはウチで食う為の分だし」
流石に売り物に手を出したらマリアが黙ってないだろうが、家族用なら問題ない。
「因みにこのリザードの肉はレディに効果はないが、男にとっては精力剤になるんだぜ……今夜は眠れないんじゃあないか?」
「何てもん食わせやがんだこらぁ!?」
その一言でタープとマリアの目がギラギラしてしまったじゃないか!
「ハハハ、お嬢ちゃんだってシスターかブラザーが欲しいだろう?」
「「欲しい!」」
おい可愛い妹よ……キャリに便乗するな。
しかもお前が欲しいのは甥っ子だけだろ。
それとタープにマリア、そんな期待した目で俺を見るなよ……
翌朝……朝日が眩しいのに黄色いなぁ。
しかし効き目は抜群だと解った、タープとマリアがへばってまだ寝てるぐらいだ。
……次からタープの相手をする前に予め食っておこう。
「今日はもう少し大きい、このリザードの皮を剥いでみな」
「了解」
大体15cmか、昨日の奴よりは捌き易くなったな。
って何だこの脂の乗りは!
「そいつはこの世界にしか居ない、アブラトカゲって奴でな……触って解っただろうが脂肪が凄い」
「確かに……皮に切れ目を入れただけで手がギトギトだ」
「アリゲーターもこれに負けないぐらい脂が乗っているからな、こいつの脂肪をどうにか出来なきゃ解体なんて出来ないぜ」
ワニってこんなに脂があるのかよ!
まあ、おおよその骨格は昨日のトカゲで解ったし皮を剥ぐぐらいなら……
「因みにそのリザードの身体の半分はその脂肪で、肉は不味い」
「不味いのかよ!」
「だが脂は上質なラードに匹敵する、この脂で揚げたフライは美味いぞ……ビールが欲しくて堪らなくなる」
肉は不味くても脂は美味いのか……
しかもジョニーさんのフライが付くならばやるしかないだろ。
幸い俺の聖剣はパワーアップしたからか脂で切れ味が落ちる事がないからな……小まめに拭き取れば問題ない。
「昨日よりはマシになったが、まだ幾つか内臓が潰れていやがるな」
「ちょっと質問なんだが、内臓を潰したらマズイのか?」
「ああ、アリゲーターの脂肪と内臓には酷い臭みがあってな……ちょっとでも潰れたら全体が臭くなって食えた物じゃなくなる」
マジか……機会があればもつ煮みたいな料理にして食おうと思ってたんだが。
ってワニの脂肪も臭いんだな、それで徹底的に取り除くのか。
「ジャパンにはモツニコミって料理があったがアリゲーターで作るのは止めておけ、臭みを抜くのに大量のガーリックとジンジャーとニッポンシュを消費したって10日は掛かるし、煮込んでる間に腐っちまう」
「そんなに臭い上に足が早いのか……」
まあ仕方ない……もつ煮はワニでバーベキューが終わったらウシかブタで作ろう。
コメ酒には合う筈だからマリアが気に入るだろうし、絶対作る。
それとジョニーさんよ、ニッポンシュじゃなくてニホンシュな。
「今日はフライ尽くしだぜ、チキンとビーフはそこのオレンジを絞って食ってくれ」
揚げたのはジャガイモとニワ肉、ウシ肉にトマトだな。
ジョニーさんのフライは日本のフライと違ってパン粉は使わず、小麦粉とコーンスターチを混ぜた物をまぶして揚げる。
解りやすく言えば某チェーン店のフライドチキンがこれに近いな。
……コーンスターチがモロコシのデンプンなのはマリアには黙っておこう。
「ジョニーさんのフライドチキン、久しぶりだなぁ……美味しい」
「ウシ肉は以前食べたメンチカツより癖がある、けど不快じゃない……オレンジにも合ってる」
「トマトのフライっちゅーのがメッチャ美味いやんか……」
確かに脂に癖があるけど美味いな……物によってはラードやヘットよりこれの方が美味いかもしれん。
ってかフライドポテトは此方のが絶対に美味い。
「因みにあのアブラトカゲの脂肪は60パーセントがオレイン酸って奴でな……幾ら食ったって贅肉にはならないんだぜ」
「贅肉にならない脂!?」
オレイン酸ってオリーブオイルの主成分だったか?
確かイベリコ豚の脂肪もそのオレイン酸とやらで、美肌効果があるとか何とか聞いた覚えがある。
「まあ、こいつはオリーブオイルよりも酸化しやすいからその日の内に使わなきゃならないって欠点があるけどな」
「ってジョニーさん、この世界にはロクな設備がなさそうなのにどうやって調べたんだ?」
「なぁに、紙とペンにルーペと根気がありゃ何とかなるもんさ」
それでよく調べられたな!?
更に翌日……マリアにあのトカゲの入手先を教えたジョニーさんは家に帰るらしい。
まあ、奥さんを待たせてるそうだしな……仕方ない。
「それじゃ来月までに最初のリザードを綺麗に捌ける様になっておけよ、2週間後に様子は見てやる」
「おう」
暫くはあのトカゲとベーコン作りで忙しくなりそうだな……
それにマレスにもベーコン作りを教えなきゃならん。
「それとあのリザードの食い方だが、丸焼きやフライでもいいが必ずオレンジと合わせて使え……さもなきゃ独特の臭みが酷いからな」
「成程な、オレンジがそれを消してくれるのか……解った」
当分は食卓にトカゲとオレンジが絶えないか……
だが捌いた肉を無駄には出来んから仕方ない。
「2日に1度はあのトカゲを食べるなら、更に子供が出来やすくなる」
「せやな……ウチ等も精を付けとかんとアカンな」
……俺、2週間後まで生きていられるかな?
ワニ肉も美味いけどトカゲ肉だって美味いんじゃよ




