43 甘味による胃痛・弟子のマリネ添え
ようやく準備が整ったのでペスカタへ、ベーコンを売りつつ巨大オクトパスとやらをバーベキューする為に向かう時が来た。
今回は可愛い妹とタープ、レクタさんにヒュドラさんが留守番で……
俺とキャリ、マリア……それにセバスさんが現地に行く。
あ、キャリもマリアも少しゆっくり移動してくれ……昨日のスイーツが胃にキてて辛い。
「始めて知りましたが……大量の甘味を一度に摂取すると胃にクるんですね」
可愛い妹のスイーツは俺と同じ様にセバスさんの胃にも絶大なダメージを与えてしまったらしい。
一応ブラックのコーヒーも出したんだが甘味の暴力には抗えなかった様だ。
レクタさんは平気だった様だけど、これは体質って奴だろうな。
いや、本当にスミマセン。
「えっと……今住んでるって世界には甘味やコーヒーがないのか?」
「あの世界では豆汁と呼ばれるコーヒーに似た物はありますが……あれ程の砂糖やハチミツを使った甘味は貴族や王族であろうとあんな大量には食べられませんし、作れませんよ」
その豆汁とやらも気になるけど、やはり砂糖は贅沢品という扱いになるらしい。
そりゃこの世界ですらキロで2000円もするからな……他の世界はどうだか知らんが食い意地の張ったこの世界ですらそんなだし、もっと高い可能性がある。
「余談ではありますが、砂糖やハチミツの値段に関してはハイドラ様の世界以外はほぼ同じですよ……というのもハイドラ様の世界はほぼ海でして陸地が少なく、農産物という物が貴重過ぎますので」
ああ、そういや水の女神とか言ってたからな……ほんの僅かに見えた空間は海ばかりだったし、人間より人魚とか魚人が多いんだろう。
魚介類や海草ばっかり食ってる印象はあるけど、それで長生きは出来るんだろうか?
「それにあの世界で砂糖とハチミツを自由に使うのを許されているのはキュアさんとデスト……勇一さんだけですが、当の本人達は別の甘味料を好んで使っていますね」
あいつも料理は出来たのか……まあ肉屋だった訳だし多少はやると思っていたが。
再会した時にはガーリックライスと……ステーキにローストビーフのどっちかを作らせてやる。
しかし別の甘味料とやらも気になるな、やはり物々交換の申し込みはしてみよう。
「それでしたら打診は自分からしておきましょう……此方からはカボ、アンチョビ、ベーコン辺りが喜ばれるかと」
やはりベーコンは必須か……いや、作るのは構わんけど。
それにカボチャとアンチョビねぇ……タコをバーベキューにしたらアンチョビを仕込んで、帰ったら大量のカボチャを用意しておこう。
「ふぅ、やっと着いたな」
「今回の宿の手配はサーマがやってくれた、だから先にベーコンを売りに行く……ついでにお昼はマレスが作ると言ってた」
お、マレスという事はまた刺身が食える可能性があるな。
ってキャリは試しに作ったタルタルステーキやレアに焼いたステーキが食えなかったんだが刺身は大丈夫だろうか?
タルタルステーキはタープとマリアも難色を示していたけど、最終的に3皿も食っていたぞ。
「ウメオ、何事も経験させなきゃ解らない事がある」
まあ、正論ではある。
親としては好き嫌いをなくさせるべきなんだろうが、俺自身が納豆とグリーンピースが食えんし。
タープはタコが食えずマリアもトウモロコシが苦手ときたから強くは言えん。
その辺はキャリが10歳になってから可愛い妹に任せよう、とはいえ食わず嫌いだけは許さんけど。
「そういやセバスさんやヒュドラさんには苦手な物とかあるのか?」
「自分は酸味が強い物でなければ大体は平気ですよ……ただ、暫くの間はカボとサツマイモを見たくはありませんが」
可愛い妹が大量の甘味を作るのに使っていたからな……気持ちは解らんでもない。
一応マレスに作る土産用に幾つか持って来たが、セバスさんには別の何かを作ろう。
マリアにキャリ、サーマまで居れば余る事はないだろうし。
「因みに妻は苦味のある物以外なら何でも美味しく頂きますので、問題はありません」
可愛い妹が作る料理はほぼ甘味だから、まあ大丈夫だろ。
そういやレクタさんも料理は出来るがどんなのが得意なんだろうか?
帰ったら聞いてみよう。
で、ベーコンを売りマレスの料理を食いながら明後日に現れるという巨大オクトパスをどう料理するかの打ち合わせだ。
「そういや旦那と会わせるのは始めてだったねぇ」
「サーマの夫のペグという、普段は船で漁をしているから会う機会は少ないだろうが宜しく頼む」
「ウメオだ、宜しく」
ペグさんもマットさんと同じくオークで、立派な6パックに大胸筋をお持ちだったよ……本当にマッチョ率が高過ぎる。
そんな中でもサーマの筋肉は異常だと言わざるを得ないが、口には出すまい。
「さて、マレスの料理も出来たみたいだし先に食べようじゃないか」
マレスが作ったのはクルエビとカツオの刺身に以前教えたミネストローネ、イワシのマリネだった。
ってマリネなんて教えた覚えがないんだが?
だってこれバーベキューで作る料理じゃないからな。
「ピクルスを作りながら師匠に習ったフライを食べてたらうっかり酢の中に落としてしまって……勿体ないからって食べたら意外と美味しくて、そこから色々工夫してみたんですけど」
ほう、失敗から着想するとは中々やるじゃないか。
マリネ液は酢とレモン果汁、少量の砂糖にオリーブオイル、ニンニクとショウガの薄切り、風味付けに唐辛子を1欠片か。
少々ニンニクの刺激が強いからキャリには向かないけど美味く出来ているな……完全に俺好みな味になってるからタープも食えないだろうが。
だがまあ、たまには師匠らしい事をしてやるか。
「次にこれを作る時、ニンニクを半分に減らしてタマネギの薄切りも一緒に漬けてみろ……もう少し美味くなる筈だ」
「わ、解りました!」
やはりマリネならタマネギが欠かせないからな。
場合によってはタマネギではなくセロリを使った方が美味い物もあるが、好き嫌いが激しく分かれるし。
尊敬するピットマスターも「セロリなんざチキンかヤギに食わせておけばいい」と言っていた。
俺はまあ食えなくはないが進んで食いたいとは思わんな。
そういやキャリは……カツオは手を付けていないがクルエビの刺身はバクバク食ってる。
「エビフライのオサシミが美味しい!」
可愛い娘よ、エビフライのオサシミって意味不明にも程があるんだが?
いや、これは俺の教え方が悪かったんだろう……反省せねばなるまい。
「キャリ、それはエビフライじゃなくて、クルエビという名前……エビフライはウメオが料理した後の名前」
「はーい!」
うん、その辺りの矯正はタープとマリアに一任しよう。
それにしても久しぶりのカツオのタタキ……やはり美味い。
ってそういやセバスさん、酸味の強い物は苦手って言ってた様な?
「……これぐらいなら食べれなくはないですよ、ただレモンを直接噛ったりとか、キュアさんが作ったウメボシとやらは無理ですが」
あいつ梅干しも作っていたのか……物々交換のリストに加えておいて貰おう。
「それで、此方は例年通りのタコヤキにマレスが変わった物を作る事になってるが……ウメオは例の巨大オクトパスをどう料理するんだい?」
「最初は丸焼きにでもしようかと思ったが、マレスの作ったこの酢漬けで火が付いたからな……俺も変わった物を作る事にする」
その為には大量のニンニクとオリーブオイルを仕入れておかんとな。
後はあればで構わんけどキノコが欲しいぐらいか。
明日は市場巡りをしなければ……
「カツのタタキも美味しい!」
キャリ、食うのは構わんけどそれは俺の分だぞ?
言えば分けてやるから隠れて食うのは止めような?
「キャリちゃん、食べ終わったらデザートもあるからね」
「やったー!」
……まあ、沢山食べるのは良い事だ。
海鮮料理が中心のマレスがどんなデザートを作ったのかは気になるが、俺とセバスさんはコーヒーだけにしておこう。
エビフライのオサシミは甥っ子が実際に言ったのを流用した……許してくれ




