40 新居の完成・照り焼きバーガー添え
ベーコン作りが非常に忙しくて大変だが、ようやく家が完成した。
家具も最低限は揃えたし、一部の部屋は防音もバッチリ、教会の空き部屋に設置したのと同じ風呂もある。
建築費用が想定より高くなったのはきっと風呂が原因だろう、だが必要だから仕方ない。
それに各自に寝室とやけに造りがシッカリした厨房……とはいえ俺はバーベキューコンロでないと普通の味にしかならんから、ここは可愛い妹が使う事になるな。
最後にベーコンを保存する為の地下室も完備、これで余分に仕込める。
作れるのは俺1人しか居ないがウチで食う分のストックだけは溜めておけるだろう。
タープに見付かりさえしなければ、だが。
因みに地下室の存在は俺とマリアしか知らない。
マリアもベーコンが好きだし、つまみ食いする可能性があるとも言っていたが食欲より金を稼ぐのを優先するからな……売り物をつまみ食いはしないと信じる。
キャリに教えていないのは中で転んだら大変だからで、可愛い妹の場合は教えた所で意味がないからだ。
「ほう、中々ええ感じの新居やないか……教会の隣っちゅーんも高評価や」
「ってレクタさん!?」
確か温泉で湯治をしていた筈だが……どうやら完治したらしい。
「パパ、この人はだぁれ?」
「ああ、この人はタープの親父で……キャリの爺さんだぞ」
「じいじ?」
「まさかこんなに早よじいじと呼ばれるたぁ思わんかったが……ちっちゃい頃のタープに似た可愛い娘やないか」
やはりレクタさんも種族は気にしない人だったか……キャリを軽々と肩車してるし。
本当にケンタン領の皆さんはいい人過ぎやしないか?
マリアの両親やマットさんもキャリを可愛がってくれていたし、ロリババアも一緒に遊んではいたけど。
「ウメオ、晩飯の後にでも酒に付き合ってや……どういった経緯でハイエルフの娘が出来たんか、聞かせて貰うで」
まあ、説明は必要だよな。
状況だけ見れば俺が浮気していた、とか疑われても仕方ない。
……というかレクタさん、酒はイケるんだな。
タープは全く飲まないし、神父とか言ってたから規律か何かで禁止してるのかと思ってた。
そんな訳でベーコンをツマミにコメ酒を飲みつつ、これまでにあった事を話した。
ついでに野菜狂信者に伝わる伝承なんかも話して意見を聞かせて貰おう。
「成程なぁ……いきなし街にハイエルフの子供が増えたぁ思うたら、そんな事があったんかいな」
「すいません、子供達に関しては事前に話ぐらいはしとくべきだった」
「別にかまへんよ、子供の命を優先するんは当然や……むしろ見捨ててたらどんな手段を使ってでもタープと別れさせとったわ」
良かった……これで疑いは晴れたな。
それにしてもレクタさんが言うと本当に実行しそうで怖いな。
マットさんやサーマもだが、レクタさんも怒らせない様に注意しなければ……
「で、その話に出た水の魔物っちゅーんは解らんが、異界の祭壇とやらな……ウメオの使うとるあのコンロの事やないか?」
「え、あのバーベキューコンロが?」
確かに異界の金属が俺の聖剣としたら、同じく日本から持ってきたコンロも条件には当てはまる。
しかしあのコンロを祭壇と呼んでもいいのだろうか?
「女神はんは美味い物なら何でも食うさかい、見方によっちゃ捧げ物を祀る祭壇に見えなくもないやろ?」
あー、うん……言われてみればそうかもしれない。
あのコンロでソース味の何かを作っていればいつの間にか来ている可能性が高いし。
何より本職である神父のレクタさんが言うと説得力もある。
試しに明日の昼飯はソース味の料理を作るか。
「で、ウメオはその伝承にあるっちゅー物を料理して……その後はどないするつもりなんや?」
「どうもしませんよ、美味いらしいからバーベキューで食ってみたい、それだけです」
実際にあの鹿やイノブタ、カニも美味かった。
タコは水の魔物かどうかは解らんけど、サーマが楽しみにしていたからきっと美味いに違いない。
「ハハハ、おもろい事を言うやないか……ワイも食ってみたいんやが神父としての仕事が溜まっとるさかい、暫くはここを動かれへん」
「その分晩飯に美味い物を作りますよ」
「さよか、ほな先に酒とツマミの追加を頼むわ」
あれだけ用意したベーコンを全部食ったのか!?
しかもコメ酒が3本も空になってる!
うん、やっぱりレクタさんはタープの親父だわ……大食漢にも程がある。
さて、昼飯の時間だ。
レクタさんはあれだけ飲んだにも関わらず二日酔いにはなっていなかったから普通に食えるだろ……色んな意味で強過ぎる。
今回はソースに同量の、ピザを焼いた時にも可愛い妹が作ったトマトソースに少しだけケチャップを混ぜて、と。
薄切りのベーコンは炙って脂を落とし、豚7牛3の割合で捏ねた挽肉をハンバーグにして焼いて、タマネギのみじん切りとレタス、厚めにスライスしたトマトを用意する。
ハンバーグは焼けたらソースに浸して、ベーコンや野菜と一緒にバンズで挟んでやれば……いわゆる照り焼きバーガーの出来上がりだ。
好みでバンズにマヨネーズを塗っても美味いが、可愛い妹が鞭を構えて睨むから自重した。
タープとマリアの分には塗ったけど。
「所でお兄ちゃん、これ半分以上トマトなんだけどソース味って言ってもいいの?」
「ソースはちゃんと使っているから問題はない」
「せやな、それに美味いし」
……うん、やっぱり来たなトゥール様。
とりあえず実験は成功した様だ。
「んで、兄ちゃん……こんな美味そうなもんでウチを呼んで、実際美味かったんやけど何か用でもあるんか?」
「ちょっと頼みたい品物と、聞きたい事がありまして」
またベーコンを作るから大量の茶葉をお願いして、後は……野菜狂信者の伝承について聞いておきたかった。
「あーそれな……確かに酔った勢いでそんな設定を生やした覚えがあるわ」
まさかの酔った勢いかよ!?
トゥール様はもう少しぐらい計画的になった方がいいんじゃ?
「って事はマジでこの聖剣は……」
「安心しぃ、実際は単に切れ味が良くなって多少の臭みを抜く程度や……ちゅーか酔っとる時やからって自殺まがいの真似なんざする訳ないやんか」
それもそうか……
「祭壇に関しても掃除が楽になる程度、それをあのドアホウ共が歪曲しまくった結果がその伝承や」
ある意味可哀想な奴等だな、野菜狂信者共は……
同情はしないし今後も肉を食わせてやるが。
「まあ歪曲されたんも無理はないんやけどなぁ……その2つを揃えた奴は800年前に1人だけ現れた程度やったし」
そんなに前だったのか、って居なかった訳じゃないんだな。
ってかトゥール様、一体今は何歳なんですかね?
「ウメオも知っとるやろ?ダニエルとかいう迷い人の男や」
俺が唯一尊敬するピットマスター!?
カーニズ領での活躍は色々と聞いてたがまさか全てを揃えていたとは……流石過ぎる。
ってか尊敬するピットマスターはタコが苦手だった筈……つまり巨大オクトパスとやらは水の魔物ではない様だ。
まあ美味いらしいから料理はするけど。
「ダニエルもウチの眷属にスカウトしたんやけど、【俺は世界よりマーサを守りたい】とかゆーて断られてもうたんや……まさかその弟子が眷属になるたぁ思わんかったけどな」
いや、俺は世話にはなったけど弟子って訳じゃないんですが……まあいいか。
というかマーサってあのロリババアの婆さんの名前か?
友人の方々からは母国の料理評論家じゃないかと聞いていたんだが……違ったのか。
そりゃ異世界で出会った女性とか言っても信じられないだろうけど。
「……ダニエルは例のドアホウ共に命を狙われて泣く泣く元の世界に戻ったんやけど、兄ちゃんは」
「戻りませんよ」
「決断、早ない?」
「むしろ俺が尊敬するピットマスターの命を狙っていたとか聞いてますますやる気になりましたよ」
野菜狂信者共を全員、肉食主義者にしてやってもいいぐらいだ。
とはいえそのお陰で俺とダニエルさんが出会えた訳だが、感謝する気は全くない。
「さよか、ほんなら……ウチから兄ちゃんに【職人】の称号を贈ったる」
称号……何故に?
まあ貰えるんなら有難く頂くけど。
「光栄に思っとき、ウチがこの称号を贈ったんは兄ちゃんとダニエルだけやで」
え、マジで?
後からレクタさんに聞いたら女神が贈る称号には補正効果とやらがあるらしく、俺が貰った称号は技術力の向上という効果があるらしい。
つまり美味い肉がより美味く焼ける様になったんだろう。
個人的にも嬉しい効果だった。
「凄い……いつもより60塊も余分にベーコンが出来た」
「しかも更に美味くなっとるやんか!」
おいタープ、燻したばかりのベーコンを丸ごと噛ってんじゃねぇ!
そんな贅沢は俺ですら躊躇うってか一晩休ませた方が美味いんだぞ!
照り焼きソースは自己流の為、市販の物とは大きく異なります




