03 ソーセージマルメターノ・ソース焼そば添え
凄い美人な女神様から難題を任された後だが、今すぐやらなきゃならん案件でもない。
という訳で可愛い妹はタープを連れて緑色の水晶を集めに行った。
そして俺は夕飯の準備……それとそこら辺にあった鉄屑を使って【金属加工】って技能を試そうと思う。
女神様の説明によると頭で画いた設計を形にする技能らしいんだが……って、早くも部品が出来上がった。
俺が作ろうとしているのは挽肉を作る為のミンサー、それとソーセージスタッファーという腸に挽肉を詰める為の器具だ。
ミンサーは自宅にもあったからすぐに組み立てられるがスタッファーは人が使ってるのを何度か見た程度だからな……少し不安だが何とか形にしたい。
普通ならミンサーも使う機会がないだろ、だって?
俺の趣味……すなわちバーベキューの為に買った、反省はしてない。
それにちゃんと活用はしていたぞ、月1の給料日に。
……よし、とりあえず完成だ。
まずは慣れてるミンサーから、血抜きした鹿の肉を詰めハンドルを回せば……うん、いい具合の挽肉だ。
折角の鹿肉だし、半分は別の料理に使うとしよう。
残りの半分にみじん切りにしたタマネギとニンニク、塩コショウ、乾燥パセリ、タイム、ナツメグ、パプリカパウダー、それにステーキを焼く為に用意した牛の脂身を加えてよく捏ねて……
ここでスタッファーの出番だが……上手く動いてくれよ。
夜の内に洗って塩漬けした鹿の腸を水洗いして、水に漬けておいた物がいい感じに戻っている……
これをスタッファーの出口に差し込んで、腸の端を縛って、ハンドルをゆっくりと回せば……成功だ!
後は太さが均一になる様に注意しつつ詰めるだけだ。
挽肉を全部詰めたらまた端を縛って、と……大体5mぐらい作れたか。
余った腸は勿体ないけど切り捨てて、基本は10~15cm間隔で捻るが今回はあえて捻らない。
代わりに隙間なく渦を巻く様にして、これに串を刺してそのまま焼く。
いわゆる巨大ソーセージマルメターノという奴だ。
俺が尊敬するピットマスター(故人)がこれの上にチーズやベーコンを乗せて小麦粉を使わないピザにした事があって、1度は自分で作ってみたかった。
……まあ、同じ物を作った所で可愛い妹は絶対食べないだろうな、カロリー的な意味で。
仕方ないので今回はこのまま焼くだけに留めておこう。
ま、いずれは作ってやるけどな……勿論自分で食う為に。
……よし、日が落ち始めたしそろそろ焼くか。
昨日は炭を片側に寄せて燃やしたが今回は均一に、かつ弱火になる様に広げて燃やす。
こうする事でじっくりと火を通しつつ皮が割れるのを防ぐ。
更にコンロに蓋をする事で均一に熱を通せる。
うん、前回はライターも使わず火が付いたのは鎮火してないせいかと思ったが……あれは俺の着火とかいう技能だったんだな。
まあ火力はライター程度しかないみたいだから戦闘には使えないだろう。
炭が燃え始めたばかりじゃ火力が強過ぎるし煙が凄いからな、先に残りの挽肉を料理しよう。
半分に切って種を取り除いた黄色いパプリカを遠火で炙って……
挽肉は塩コショウとガーリックパウダーを加えてよく捏ねて、炙ったパプリカに詰めて、粉チーズを振りかけたらベーコンで蓋をする様に乗せて、火力が落ち着いた所でソーセージマルメターノと一緒にコンロへ乗せて蓋をする。
作ったのはいわゆる肉詰めピーマンだがパプリカで作ると一味違うぞ、緑のピーマンでは出ない野菜特有の甘味が肉と一体になって美味くなるし、肉汁も無駄にする事なく留めてくれる。
今回の場合はベーコンの脂を留めるのが狙いだけどな。
まあサイズが大きくなるから普通の家庭で作るとその分ガス代が掛かるし、中心まで火が通らない可能性があるからな……電子レンジを活用するなら話は別だが、ある意味バーベキュー向けの料理だろう。
炭火なら遠赤外線が何たらかんたらで中までシッカリと火が通るからな……難しい理屈は解らんがそういう物だと思ってくれ。
オカズはこれでよしとして……
主食はあの後教会の中を案内して貰った時に見つけた小麦粉、これを使おう。
塩水を入れて捏ねて、纏まったら寝かせて、伸ばして切って……
うどんにでもしようと思ったが捏ねた感じ強力粉っぽいから細目にして、これは焼そばにするか。
とはいえ生麺から焼いても美味くならんし、打ち粉を落とす意味も込めて固めに茹でておく。
幸い鉄板も持って来ていたから……ってソースがなかった!
仕方ないから塩と醤油で作るか……
「ほんならこのソース使うか?」
「……女神様、帰ったんじゃないのか?」
何で女神がソースを持ち歩いてるんだ?
というかこんな美人がいきなり隣に、しかも息遣いが聞こえるぐらい近くに現れたら心臓に悪いぞ。
「いやな、頼み事しといてアレやけど肝心の兄ちゃんの腕前を知らんかった思うてなぁ」
ああ、そういや女神様は俺の料理を食ってなかったな。
要するに晩飯をタカりに来たのか……こんな美人にタカられるなら本望です。
幸いソーセージもデカいし、肉詰めピーマンも多目に作ったから余裕はある。
それにソースは欲しかったし、好きなだけ食ってくれ。
よし、固めに茹でた麺は湯切りして油をまぶしてくっ付かない様にしたら置いといて……
ざく切りにしたキャベツ、ピーマン、タマネギ、ベーコンを鉄板で炒めて、七割ぐらい火が通ったら麺も一緒にして、ある程度混ざったらソースを絡めつつ香りが立つまで焼けば出来上がりだ。
仕上げにマヨネーズを掛けると美味いんだが、先にそれをやると可愛い妹が嫌がるからな……美味いのに。
なのでマヨはテーブルに置いてお好みで掛けて貰おう。
「兄ちゃん、中々手際がええなぁ……大したもんや」
「まあ、バーベキューが趣味なもんで」
日が完全に落ちた所で可愛い妹とタープが帰って来たな……
余り早くに作ると料理が冷めてしまうがバーベキューならば味を落とす事なく保温が出来る。
焦げない様に動かしたり混ぜたりする必要はあるけどな。
ソーセージは中央に置いて食べる分だけ自前で切って貰うスタイルにして、皿に焼そばと肉詰めピーマンを盛り付けたら準備完了だ。
さあ、食うぞ。
「お兄ちゃん、またお肉にベーコンを……しかも焼そばにまで入ってるし」
「何度も言うがベーコンは調味料だ」
例え可愛い妹が肉と言おうとも、ベーコンは調味料だ。
これだけは譲る訳にはいかん。
「ウチはこのベーコンっちゅー調味料好きやで」
「このヤキソバ美味いわぁ……キュアちゃんが作るんとほぼ同じ味やん」
焼そばの味はほぼソースの味だからなぁ……他と差を出す為に具に色んな工夫をしたり、あえてソースを使わず塩で味付けしたりする場合があるけど……今回はオーソドックスにした。
豚肉がなかったから代わりにベーコンで味付けをしたけど、違いはそれぐらいだな。
というか女神様よ、キュアちゃんって誰だ?
「このソーセージいうんと肉詰めた野菜も美味いやん!」
「ホンマや!特にソーセージ、このパリッとした食感とジュワッと口に広がる汁がイケるわぁ」
タープはベーコンとソーセージが好き……覚えておこう。
また鹿を仕留めたり、家畜を捌く機会があれば作りたいし。
何より長めに切ったソーセージを頬張る様に咥えている女神様とタープがエロ可愛い。
作って良かった、ソーセージ……ありがとう、尊敬する偉大なるピットマスター。
「お兄ちゃん、何で泣いてるの?私が肉詰めのベーコン剥がして食べてるのがそんなにショックだった?」
「いや……それはそれで言いたい事があるけど、そうじゃない」
というか可愛い妹よ……食べ物は粗末にするな。
ベーコンならタープが美味しく頂くだろうけど。
改めて女神様がお帰りになって後は寝るだけ……なんだがなぁ。
「……何で俺だけ車で寝なければならんのだ?」
この世界にガソリンやバッテリーがあるとは思えんから余り使いたくはないんだが……
しかし「ウチがソーセージ食っとる所を見とるウメオの顔がやらしかった」とか言われたら一切の反論が出来ん。
そんな目で見ていたのは事実だからな。
「……待てよ?」
これはある意味チャンスではなかろうか?
ミンサーやスタッファーを作った時に余った鉄屑に、何故か車に容れっぱなしだった使わないステンレス製の工具を混ぜてドラム缶を……よし、作れた。
溶接とか、形成とかどうなってるんだ?と思わなくはないが……まあファンタジーな世界だからな。
魔法があるなら何でもあり、と思う事にしよう。
このドラム缶に足場になる木の板を敷いたら浄水した水を張って、火を興せばいわゆるドラム缶風呂の出来上がりってな。
1度はやってみたかったんだがまさか異世界でその夢が叶うとは……人生は解らん物だ。
ふぅ……広大な星空の下で入るドラム缶風呂とはこんなに気分が良くなる物だったのか。
入浴シーン?男の入浴なんざ実況されて誰が得をするんだ?
そんなもんカットするに決まってる。
これで冷たいビールなんかがあれば最高だったが、生憎酒の類は持って来ていない……運転しなきゃならなかったし。
あるのは可愛い妹が好きな乳酸菌飲料と俺の好きなインスタントコーヒーの粉に紅茶の茶葉、空のペットボトルに詰めておいた浄水した水だけか……せめて炭酸飲料は持って来るべきだった。
仕方ない……コーヒー飲んで寝るか。
翌朝、ドラム缶風呂を見た可愛い妹とタープから「私もお風呂に入りたい!」と言われて仕方なく朝から沸かしてやったよ。
入浴シーンは……可愛い妹に目隠しと猿轡に加えてロープで縛られて、何故か耳栓までされて見れなかった。
いや、タープはまだしも可愛い妹の入浴は覗かんぞ!?
焼そばはソースに限る……




