34 マッチョのお願い・どぶろく添え
別の異世界に転生していた可愛い妹の友人からまさかの事実を聞かされた……
日本に居た頃の名前から出身、在住地、年齢等を聞いて……更に可愛い妹と桃花の間の時間のズレを計算して確信したが間違いなく本人だよ。
まさかあいつが異世界に転生していたとは思わなかったが、次に来る時は連れてくると言ってたし……今は野菜狂信者に肉を食わせる事を考えよう。
だがマットさんからの手紙は来てないから未だに吐いてないんだろうから動き様がない。
「ウメオ、ペスカタのシェラフから手紙やで?」
「シェラフから……またバーベキューの依頼か?」
とはいえ例の如く俺は読めないからな。
代わりに読んで貰った内容は……
「おお!来週は年に一度のクラブ祭りや!」
クラブ祭り……字面だけ見ればパリピがヒャッハーしてる様に聞こえてしまうが、この食いしん坊の集う世界なら多分カニの事だろう。
「んで、シェラフはウメオにクラブを料理して欲しいそうやで」
「クラブ祭りでは、白銀に輝くクラブを最も美味しく料理した者に賞金が出ると聞いた事がある……絶対に参加するべき」
金色に輝くイノブタの次は白銀に輝くカニか……本当に俺は食い物にばかり縁があるな。
多分その賞金で孤児院を建て直すか、雨漏りや風通しを何とかしたいんだろう。
それに前回はイノブタを狙って野菜狂信者が来たし、カニを狙う奴が来る可能性もある。
シェラフ1人ならどうとでもなるだろうが子供達が居たら危ないだろうし……
「可愛い妹も婚約者候補に会いたいだろうし、行ってやるか」
「ちょっ、お兄ちゃん!?」
まあ出発するのはトゥール様にお願いした品物が届いてからだけどな。
主に俺専用のインスタントコーヒーと、イノブタを焼くのに使った木炭、ベーコン作りに欠かせない紅茶の茶葉が必要だ。
そんなこんなでペスカタ領の孤児院に到着、と。
滞在中は前に来た時と同じ風呂付きの宿に泊まるから頑張って稼がねばならんが、キャリは可愛い妹と一緒に入る風呂が大好きだからな。
まあ今回俺は白銀に輝くクラブの料理に集中したいし、屋台はマリアと可愛い妹に一任するけど。
因みに売り物は例のサツマイモのタルトとスイートポテトらしい。
「ようこそ皆さん、今回は急な呼び出しで失礼しました」
シェラフ、挨拶しながらベンチプレスは止めろや。
キャリは喜んでるけど、大胸筋がピクピクしてるのが何とも言えん。
「何でも白銀に輝くクラブを料理して欲しいとか言ってた様だが……実物はあるか?」
「はい、今朝捕まえたのがあります」
買ったんじゃなくて自分で採ったのか……確かにその方が安上がりだろうけど。
「白銀のクラブは1匹で130バランはする高級品、この孤児院の様子からして買える値段じゃないし、私ですら手が出し辛い」
1杯13000円の高級ガニかよ!
流石の俺もそんなの扱った事がないぞ。
で、見せて貰ったが……確かに白銀色に輝いてるけど、これ松葉ガニじゃねぇか。
サイズはかなりデカいけど……足を畳んでも80cm、コンロにピッタリ収まるぐらいにデカい。
だが松葉ガニなら何とかなる。
「一応、これがコンテストのルールです」
……うん、読めん。
「どれどれ……【クラブ以外の副材料の使用禁止】、【調味料は3種類、かつ必ず酒を使って料理する事】、【材料は全てこの街で揃える事】……って何やこれ!?」
つまりベーコンや野菜は使えず、調味料は必ず3種類で酒を含める、かつこの街で買える物に限定されるって訳か。
何だこの一部の金持ちが有利になりそうなルールは……って酒?
「因みにシェラフ、このコンテストの主催者は?」
「確かノースという方でしたが?」
……やられたな。
奴は逆恨みで俺を憎んでいる筈だ……恐らく俺達に酒を売らないだろう。
そして材料は全てこの街で、となれば酒の材料すら買えない可能性がある。
「……幸い審査員は赴任したばかりの領主、ノースとの繋がりはないと思う、問題はお酒だけ」
それが一番の問題か……
「ないなら作ればいいんじゃない?」
可愛い妹よ……簡単に言うが俺は作り方なんて知らんのだが?
「大丈夫、実はこの前モモちゃんから種麹を貰ったから」
種麹?
それって確か醤油や味噌に使う奴だった様な……
「タープさん、ちょっと手伝って」
「ってウチなん?」
「言われた通りに挽いてない麦を蒸したが」
「うん、こっちも丁度終わった」
おお、それは紛れもなく麦麹……
尊敬するピットマスターが魚を焼く時によく使っていたから解る。
「これと蒸した麦に水を入れてよく混ぜて……はいタープさん、もう一回」
「イチゴの人使いが荒いわぁ……【短縮】!」
おっと、だんだん日本酒じみた香りが……それに水が泡立って来た様な?
それをちょくちょくかき混ぜてるのはガス抜きか?
「はい、麦どぶろくが出来たよ」
「どぶろく……清酒の主原料か!」
どぶろくって米から作る物だと思っていたが麦でも作れるんだな……知らなかった。
「というか未成年の苺心が何で酒の作り方を知っているんだ?」
「どぶろくって酒饅頭の材料なんだよ?」
あ、酒饅頭ね……そういや生地はどぶろくを使って作るんだっけか。
道理で知ってる訳だ。
「そのサケマンジュウとやらも気になる、けどこの麦どぶろく……美味しい」
マリア……まだ昼間なのに飲んでんじゃねぇよ。
俺も飲みたくなってきた。
「だがこれなら立派な酒だから条件は満たせる」
「という訳でお兄ちゃん、夕飯はこの街でも採れるらしいあのエビをお願いね」
いつぞやのクルエビが食いたいんだな……
可愛い妹の頼みだ、幾らでも料理してやらあ!?
どぶろくは簡単に作れるけど、勝手に作ったら捕まるので注意




